HACCPの種類とは?
改正食品衛生法で制度化されたHACCPには、「HACCPに基づく衛生管理」と「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の2種類があります。導入する場合は、事業規模に合わせてどちらが必要であるかを確認してください。 また、HACCP導入に関わる認証・認定にはより細かな分類があります。そこでこちらでは、HACCPの種類について詳しく解説します。
制度化されたHACCPは大きく分けて2種類
原則として、HACCPは食品衛生管理のための“仕組み”であり、種類は存在しません。業界や扱う食品によってカスタマイズは必要ですが、基本的には同一の指針・システムであることを理解しましょう。
一方で、食品衛生法の改正に基づき、令和3年6月1日に始まった「HACCPに沿った衛生管理の制度化」では、以下の2種類が設けられています。
●HACCPに基づく衛生管理:CodexのHACCP「7原則12手順」に基づく国際標準の衛生管理。HACCPとイコールであり、旧称である「基準A」と呼ばれることもある。主に大規模事業者を対象とする。
●HACCPの考え方を取り入れた衛生管理: 厚生労働省がHACCPの制度化に伴って新設した日本独自のHACCP基準。旧称である「基準B」と呼ばれることもある。HACCPの考え方を踏襲しつつ、一般飲食店や小規模事業者でも取り組みやすい内容。
上記にもある通り、日本で制度化されたHACCPは、事業規模によって内容が異なります。そのため、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」については正式なHACCPではなく、簡易版として考えておきましょう。
HACCP認定の種類
前述のとおり、HACCP自体は同一の仕組みではありますが、認定団体にはいくつかの分類があります。いずれの場合も、「HACCPに基づく衛生管理」もしくは「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」の実施を認定してくれる点は同じです。一方、HACCP以外の管理システム導入が必要であったり、業界・業種が限定されていたりする場合があります。
業界団体のHACCP認定
各業界団体による、業界・業種に合わせた認証制度です。それぞれ内容が最適化されているため、別の業界・業種は適用外となります。そのため、取得を目指す場合は自社の事業に合った団体へ問い合わせてください。
地方自治体のHACCP認定
各地方自治体によるHACCP認証。「東京都食品衛生自主管理認証制度」「北海道HACCP自主衛生管理認証」「大阪版食の安全安心認証制度」などが挙げられます。取得することで、地域からの信頼を得やすいというメリットがありますが、対象や適用範囲が限られている点がデメリットです。「地域HACCP」とも呼ばれています。
民間団体のHACCP認定
民間団体によるHACCP認定です。HACCP単体ではなく、ISO22000など、他のシステムの中にHACCPが組み込まれているケースが多く見られます。具体的な種類は後述します。
【廃止済み】国による認証「総合衛生管理製造過程(マル総)」
政府による衛生管理の認証です。缶詰やレトルト食品などの容器包装詰加圧加熱殺菌食品、はんぺん・かまぼこなどの魚肉練り製品、乳・乳製品、清涼飲料水、食肉製品が対象です。すでに廃止済みのため、現在は取得できません。
民間団体HACCPの代表的な認定・認証
民間団体HACCPにはさまざまな種類があります。以下では、代表的な認定・認証についてご紹介します。
ISO22000
「食品安全マネジメントシステム−フードチェーンの組織に対する要求事項」として定義される国際規格です。食品流通全体を通した安全管理マネジメントの実現を目的としています。HACCPが内包されるほか、ISO9001による品質マネジメントも導入できるため、食品の安全と品質を適切に管理したい場合に最適です。
ISO9001-HACCP
品質マネジメントシステムの国際規格「ISO9001」にHACCPの考え方を取り入れた、日本品質保証機構の独自規格です。ISO9001が持つサービス・製品・製造システムにおけるマネジメントの継続的改善・品質向上・顧客満足度上昇が期待できます。なお、ISO9001-HACCPを取得すると、合わせてISO9001の登録証が発行されます。
FSSC22000
ISO22000にISO/TS 22002-1(もしくはISO/TS 22002-4)を組み合わせた規格です。予期しない食品事故への対応が目的であり、結果として食品の安全性を高められます。ISO22000自体にHACCPが取り入れられているため、FSSC22000を取得することでHACCPの導入につながります。
JFS
一般財団法人食品安全マネジメント協会が策定する国際規格です。3つの種類があり、それぞれ以下のHACCPに相当します。
●JFS-A:HACCPの考え方を取り入れた衛生管理
●JFS-B:ISO22000相当
●JFS-C:FSSC22000相当
HACCP認定に種類がある理由は?
HACCPは認証がなくても導入可能です。そのため、改正された食品衛生法に従うだけであれば、認証を受ける必要はありません。
ただし、自社のみでHACCP導入を目指すのが困難なケースも考えられます。事業規模や流通の範囲、食品の種類によって危険要因はさまざまであり、HACCP導入の手引き書だけでは不十分とも言えるでしょう。
前提として、上記のような事態に対応するために、HACCP認定・認証は存在します。専門的なアドバイスなどを受ければ、適切かつスピーディーにHACCP導入が行えるでしょう。
また、HACCPだけでなく、ほかの衛生管理も含めた対策をと考える場合には、ISO22000等の民間団体HACCP取得も選択肢に入ります。とくに事業規模が大きい場合には、食品衛生以外の管理システムについても合わせて導入したいというケースも少なくありません。
HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(基準B)が取得しやすい認証
HACCP認定・認証は、大規模事業者だけの特権ではありません。なかには、中小企業等が取得しやすいHACCP認定・認証も存在します。
代表的なものは、地方自治体のHACCP認定です。地域に密着した企業であれば、第一候補であると言えるでしょう。まずは自社が扱う食品等を対象とした認証を探してみてください。
次に候補となるのが業界団体のHACCP認定です。多くは「HACCPに基づく衛生管理(基準A)」向けとなりますが、最近では「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(基準B)」向けのものも増えてきています。自社が属する業界に認定があるかを調べてみましょう。
また、民間団体HACCPでも、中小企業向けのものがあります。代表例としては「JFS-A 規格」です。こちらは、「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理(基準B)」相当の内容であるため、そのほかの民間団体HACCPに比べると導入しやすい認定・認証と言えるでしょう。
まとめ
HACCP自体には種類が存在しないものの、改正食品衛生法に合わせて導入する際には、事業規模に合わせて「HACCPに基づく衛生管理」と「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を区別する必要があります。また、認証・認定によって導入を進めたい場合には、自社がどのような食品衛生管理を行いたいのかを考えた上で、適切な種類を選んでください。