2021.10.20.Wed

HACCPにおける管理基準(許容限界/運用限界)の設定からモニタリング方法・改善措置の設定まで

危害分析と重要管理点(CCP)の決定が済んだ後は、管理基準(許容限界や運用限界)の設置、モニタリング方法・改善措置の設定といった手順(8〜10)がHACCPには用意されています。

● HACCPにおける危害分析(危害要因分析)とは?
● HACCPにおける重要管理点(CCP)とは?

HACCPの許容限界(CL)とは?

許容限界(CL:Critical Limit)とは、HACCPの運営手順における手順8にあたる項目です。製品の安全性確保におけるボーダーラインとしての役割があります。
もしもこの基準から外れてしまった場合は、食品の安全性が確保できていない、と判断される状況とも言えるでしょう。このように、管理基準(CL)を設けることで、どこまでを食品安全の限界にするかを明確化することが、この手順の目的です。

・OL(運用限界)との違い

重要管理店(CCP)を管理する値として用いられる言葉に、「OL(Operation Limit)」があります。日本語にすると「運用限界」を意味し、「OLの値を超えた場合、運用上の不都合が起こる可能性があるので、機械の調節などを行いましょう」といった使われ方をします。
一方、先述の通りCL(許容限界)とは「安全性確保におけるボーダーライン」ですから、この値を超えてしまうと不良品が作られている可能性が生まれます。
信号機に例えるのなら、CLは赤信号で、OLは黄色信号。実際の現場では、赤信号になる前にブレーキを踏めるような対策や取り組みが求められることを覚えておきましょう。

・管理基準の設定方法

管理基準は、重要管理点(CCP)ごとに定められます。そのため、一定の基準というものはありません。また、温度だけや時間だけでなく、色や匂いなどの複数の条件を組み合わせながら許容限界(CL)が設けられるケースもあります。いずれの場合も、ポイントは以下の条件が満たされることにあります。

● 危害要因の予防・除去の確実性を確認できること
● 可能な限りリアルタイムに判断が行えること

・管理基準を定めるポイントは定量化

上記の条件を満たすためには、許容限界(CL)の定量化が重要となってきます。
「危害要因の予防・除去の確実性を確認」についてのポイントは「明確化」です。“なんとなく”の基準ではなく、あくまで科学的根拠に基づいた危害要因の除去を確認できるようにしましょう。例えば食中毒菌を危害要因として定めるのであれば、エビデンスに基づき「○℃で○分間加熱する」といった基準を定めてください。
「リアルタイムな判断」については、温度や時間間隔が重要です。例えば計測のインターバルが長いと、異変発覚のタイミングが遅れます。また、どの時点で異変が起こっていたのかも明確になりません。こうした状況で製品が製造されてしまうと、食品事故はもちろん、回収など事が大きくなる可能性が高いです。

・具体的な管理基準の設定方法

ここはから、より具体的な管理基準の設定方法について考えていきます。例えばO-157をはじめとする腸管出血性大腸菌を見てみましょう。
これらの菌は熱に弱いという特性があり、75℃以上1分間の加熱で死滅するとされています。この科学的根拠に基づいて管理基準を定めるのであれば、中心温度が75℃以上の状態を1分間作れば問題ありません。
ただし、食品の中心温度を都度確認するのには手間がかかり、実業務では困難です。そこで考えるのが、「食品の中心温度75℃以上になる製造条件」です。

1.食品の表面温度と中心温度の関係性について実験し、調査結果を得る
2.食品の中心温度が75℃を維持する際の表面温度を確立する
3.食品の表面温度が90℃になるよう調理器具を設定し検証する

例えばオーブンの設定温度を180℃に設定し、10分以上加熱すると表面温度が90℃以上になるという結果が得られたなら、それを許容限界(CL)に設定します。さらに安全のため運用限界(OL)としての管理基準として、200℃に設定して10分以上加熱する、などと決めることも可能です。管理基準の策定では、どうすれば現場で実践できる基準を作れるかを考えることが大切です。

モニタリング方法の設定


HACCPの手順9では「モニタリング方法の設定」が挙げられています。この目的は、必須管理点(CCP)が管理基準(許容限界/運用限界)内で、コントロールできているかの監視・確認(観察・測定)です。また、管理基準(許容限界/運用限界)における「できる限りリアルタイムに判断ができること」にも関わるポイントとなります。

・モニタリングの方法

モニタリングでは、「何を」「いつ」「誰が」監視するのかを定めることが大切です。
まずは具体的な監視対象について決定していきます。データであれば温度や時間、pH値などが挙げられます。一方、物であれば表面や中心、色、粘度などが監視対象になり得ます。
次に、モニタリング実施のタイミングです。ここでのポイントは連続的、もしくは適切な頻度(1時間ごとなど)による監視がなされているかどうかです。あまりにインターバルが空いてしまうと、リアルタイム性が損なわれてしまいます。
最後に「誰が」の部分です。原則として、モニタリングの重要性を理解し、管理基準(許容限界/運用限界)とモニタリング方法を確認した者が対応することが求められます。

・モニタリングは記録することが大切

モニタリング実施後は、記録の保持が義務付けられます。事業者側としても、正しい記録が残っていれば、自社が正しくHACCPに沿った運営を行っていることの証明になるため、非常に大切と言えるでしょう。以下は、モニタリング記録に必要な項目の例です。

● 作業者名
● 品名
● 工程
● 観測項目
● 管理基準
● 測定、観察、検査値
● 製品特定のための名称およびロット名・番号等
● 測定、観察、検査者のサイン
● 記録点検者(責任者)のサイン
● 管理基準を逸脱した場合の措置

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先述の通り、正確なモニタリングは自社の適切な運用を証明する材料となり得ます。また、トラブル発生時の原因究明にも役立ちます。
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管理基準逸脱時の是正措置の設定

HACCPの手順10は「管理基準逸脱時の是正措置の設定」です。モニタリングの結果、管理基準(CL)が達成できていない場合に、問題の修正・解決、そして記録をどのように行うかを決めるのが目的です。
実際に管理基準(許容限界/運用限界)からの逸脱があった際、どのような措置を行うかを決めておかないと、トラブル発生時の対応に遅れが生じる恐れがあります。そのため、対処法についてはあらかじめしっかりと規定しておきましょう。

・是正措置記録の項目

是正措置を行う際には、その内容を記録する必要があります。以下は、具体的な記録項目の例です。
● 製品名
● 管理基準(許容限界/運用限界)からの逸脱が発生した工程
● 逸脱した日時
● 逸脱の内容
● 調査結果
● 工程に対する措置内容
● 逸脱した製品に対する措置内容
● 是正措置の実施担当者
● 確認者

まとめ

管理基準(許容限界/運用限界)の設定から管理基準逸脱時の是正措置の設定までは、HACCPの運営における「実行」の部分であり、個別具体的な対応が求められます。この後で登場する手順である「検証方法の設定」にもつながる重要な部分となるため、確実に実施してきましょう。