HACCPとISO・FSSC・JFSの違い
HACCPに関わる認証・規格には、以下のようなものがあります。
● ISO22000
● ISO9001-HACCP
● FSSC22000
● JFS(A・B・C)
いずれも食品の安全性向上を目的とした認証・規格ですが、どのような特徴があるのでしょうか。また、そもそもHACCPとの違いはどのような点にあるのでしょうか。今回の記事では、こうした疑問にお答えします。
食品の安全を守るための各認証・規格
HACCPに関わる認証・規格の代表例を以下でご紹介します。
・ISO22000
ISO22000は「食品安全マネジメントシステム−フードチェーンの組織に対する要求事項」と定義されています。HACCPに加え、ISO9001-HACCPを組み合わせることで、食品流通全体を通した安全管理マネジメントを行うのが目的です。より端的に表すなら、製造~出荷に関わる安全を工程ごとに管理するための方法、といえるでしょう。
取得には、登録審査→登録証発行→初回認証といったステップを踏む必要があります。また、3年毎に更新検査を受けることで、新たに3年間の有効期限付き登録証が発行される仕組みです
・ISO9001-HACCP
品質マネジメントシステムの国際規格であるISO9001に、HACCPの考え方を組み込んだ日本品質保証機構独自の規格です。ISO9001自体は、サービス・製品・製造システムにおけるマネジメントの継続的な改善と、品質向上・顧客満足度上昇が目的です。一方、ISO9001-HACCPについては食品安全マネジメントの確立に特化している点がポイントとなります。
なお、ISO9001-HACCPはISO9001を包括する形となるため、取得後にはISO9001の登録証も発行される仕組みです。
・FSSC22000
ISO22000にISO/TS 22002-1または、ISO/TS 22002-4を組み合わせた規格がFSSC22000です。これによって、予期しない食品事故などをカバーできるようになり、食品の安全性をより高められるのが特徴です。
具体的には、製品のリコール(回収)手順や、食品防御・バイオテロリズムなどに関連する項目が追加されています。また取得には、サービス・アレルゲンの管理、製品のラベル付けなど、よりよい管理体制確立のための追加要素が求められます。
・JFS
JFSは、一般財団法人食品安全マネジメント協会策定の国際規格です。A~Cの3種類があり、Aは「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」に相当します。一方、BはHACCP12手順の実施といった内容に区分され、内容としてはISO22000相当です。CはFSSC22000相当の規格であり、国際取引などにも用いられます。
JFS-Aなどは小規模事業者でも比較的取り組みやすいのが特徴です。また、中小規模の事業者の場合には、JFS-Bなどが推奨されます。
HACCPとの違いは?
ここまでいくつかの認証や規格についてご紹介してきました。いずれも衛生管理を行う上で重要となる基準を求められる認証・規格であり、取得することで取引先や消費者から大きな信頼を得られるでしょう。
一方、HACCPはあくまでも衛生管理の手法であり、「取得する」といった性質のものではありません。つまり、手順書で示された内容をきちんと実践できていれば「HACCPを導入している」といえます。
上記を前提とした上で、HACCPと各規格との比較をしてみましょう。
各規格におけるHACCPの立ち位置
ご紹介したISO22000、ISO9001-HACCP、FSSC22000、JFSには、「HACCPに沿った衛生管理」もしくは「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」が包括されています。つまり、いずれかの認証を取得することでHACCPの導入が可能になります。
基準に対する違い
HACCPは衛生管理のガイドラインであり、明確な基準が設けられているわけではありません。そのため、安全性を保つ役割はあるものの、安全の証明にはならないという意見もあります。
一方、FSSC22000やISO22000などは明確な基準が設定された国際規格です。その分取得には手間がかかりますが、認証を受けることで大きな信頼性をアピールできます。
対象の違い
HACCPは食品製造や食品加工など、すべての食品事業者を対象としています。一方、たとえばISO22000の場合は農業や漁業、小売業なども対象に入ります。また、FSSC2000になると範囲はさらに拡大します。ISO9001-HACCPは食品業界に対して適用される規格ですが、ISO-9001については業種・業態問わず、すべての企業・団体が取得可能です。
まとめ
前述のとおり、各認証は必ずしも必要ではない一方、HACCPへの取り組みの証明になるというメリットがあります。取得を目指す場合は、自社にとってどの規格が必要であるかを十分に検討することが大切です。