2021.10.20.Wed

HACCP前に確認したい一般衛生管理(PRP/前提条件プログラム)

HACCP導入の第一歩は「一般衛生管理」の徹底です。これを前提条件プログラム(PRP)と呼んだりもします。この整備ができていない状態では、先に進めないといっても過言ではありません。そこでこちらでは、HACCP導入に向けて取り組みたい一般衛生管理の内容について解説します。

一般衛生管理はHACCPの基盤

HACCPを導入する際には、はじめに「衛生管理計画の策定」が必要になります。この際に求められるのが「一般衛生管理」です。2019年11月以降は、以下の14項目が一般衛生管理として挙げられます。

1. 食品衛生責任者の選任
2. 施設の衛生管理
3. 設備等の衛生管理
4. 使用水等の衛生管理
5. ねずみ及び昆虫対策
6. 廃棄物及び排水の取り扱い
7. 食品または添加物を取り扱う者の衛生管理
8. 検食の実施
9. 情報の提供
10. 回収・廃棄
11. 運搬
12. 販売
13. 教育訓練
14. その他

一般衛生管理の内容

一般衛生管理の内容は多岐にわたりますが、いずれも食品の衛生を守る上では欠かせないものばかりです。以下から、それぞれの具体的な内容について解説します。

 

・食品衛生責任者の選任

調理師や栄養士等の資格を持ち、都道府県知事が実施する(もしくは認定を受けた)講習会を受講した食品衛生責任者を、営業者(経営者)が選任する必要があります。
任命された責任者は、営業者(経営者)の指示に従い、現場での衛生管理を行うほか、今後自治体の講習会等へ参加しながら、食品衛生に関する情報を収集しなくてはなりません。また、営業者(経営者)は食品衛生責任者から出された意見について尊重し、適切な対策等を講じる必要があります。

・施設の衛生管理

食品の衛生を保つためには、施設内の衛生状態が良好に維持・管理されている必要があります。そのためには、施設内外の清掃および点検が求められます。
該当箇所は多岐に亘ります。床や天井、排水溝などは定期的な清掃を行いましょう。また、破損などがあれば、速やかな補修も必要です。特にトイレについては汚染源になりやすいスポットのひとつ。確実な清掃および消毒を徹底してください。
また、温度・湿度の管理も重要です。適切な温度・湿度が保たれるように、定期的な計測・記録・確認を行いましょう。なお、厚生労働省発行の大規模調理施設衛生管理マニュアルでは、調理場の湿度は80%以下、温度は25℃以下に保つことが望ましいとされています。
その他にも、施設内では衛生管理がしやすいよう十分な照度を確保する、施設内で動物を飼育しない、といった取り組みも大切です。

・設備等の衛生管理

施設内の機械器具類に関する点検は、食品の安全に直結する重要なポイントです。確実に衛生を保持できるよう洗浄・消毒を行い、故障や破損があれば速やかな補修を行います。特に、直接食品に触れる器具については、作業ごとの熱湯・蒸気・消毒剤での消毒と乾燥を徹底してください。
また、冷蔵庫・冷凍庫の温度記録・管理も大切なポイントです。食品・食材が正しい温度で保管できているか? できていたか? を含め、確実に実施しておかなくてはならない取り組みと言えるでしょう。
その他、定期的な計器類の点検や校正、装置の点検を行ったり、洗浄ツールを正しく取り扱えるよう努めましょう。もちろん、手洗い設備の設置といった取り組みも必要です。

・使用水等の衛生管理

食品製造には、水道法で規定された水道水および、「飲用に適する水」のみを用いる必要があります。加えて、食品に触れる氷についても、これらの水から製造しなくてはなりません。
なお、「飲用に適する水」については、1年に1回以上の水質検査と、その成績表の保存(1年間)が求められます。また、災害などによって水源等が汚染された場合は、都度の水質検査の実施が求められます。
その他、貯水槽や殺菌装置、浄水装置といった設備・装置については、定期的な清掃と点検が必要であり、その結果も記録しましょう。

・ねずみ及び昆虫対策

衛生環境を、そ族・昆虫等から守るための対策を講じましょう。侵入防止や、食材・資材の汚染防止といった取り組みが必要です。
また、1年に2回以上の駆除作業が求められますが、外部の専門業者へ委託し、適切な対策(発生場所・生息場所・侵入経路・被害の状況の調査)が講じられるのであれば、代わりとすることができます。なお、いずれに場合にも、1年間の実施記録の保存が必要です。

・廃棄物及び排水の取り扱い

廃棄物の保管・廃棄方法の手順を定めます。また、排水についても詰まりがなく、スムーズに流れているかなどを確認してください。

・食品または添加物を取り扱う者の衛生管理

調理場のスタッフの健康管理も一般衛生管理の範疇です。スタッフ自身が健康管理に留意するのはもちろん、定期健康診断などによる把握も大切です。また、食品取扱者として、適切な身だしなみにも気を付けましょう。

・検食の実施

弁当や仕出屋といった大量調理施設においては、検食の実施が求められます。また、検食については専用冷蔵庫での2週間以上の保存等も必要です。もちろん保存時の温度記録は必須です。なお、小規模事業者であっても、可能であれば実施が望ましいとされています。

・情報の提供

消費者と自治体に対しての情報提供を行いましょう。特に、トラブルが発生した際の自治体への情報提供は重要です。食中毒はもちろん、異味や異臭の発生、異物の混入といった健康被害につながる可能性がある情報を得た際でも同様です。

・回収・廃棄

不良製品の出荷発生といった事態を想定し、迅速な回収手順を定めておきましょう。また、回収した製品をどのように廃棄するかの方法についても明記しておく必要があります。

・運搬

運搬に使用する車両やコンテナなどは、洗浄・消毒、必要に応じた補修作業を行います。また、運搬中の汚染を防ぐための対策(容器に入れるなど)や、温度・湿度の管理なども重要です。

・販売

予測される販売量に合わせた適切な量の仕入れが大切です。かつ、販売中の製品を適切な環境におき、温度記録・管理の徹底も行います。

・教育訓練

従業員への教育訓練を定期的に行い、効果検証を行います。

・その他

記録の後追いができるよう、仕入元や販売先等を記録します。このさい、製品の自主検査も記録しておきましょう。

一般衛生管理の注意点


一般衛生管理自体はごく基本的な内容であり、そこまで難しいものではありません。しかし、ポイントを抑えた形で取り組まないと失敗に終わるケースも考えられます。以下から、知っておきたい注意点をご紹介します。

・現場に即さない手順書の作成

一般衛生管理を進める際には、事前に標準作業手順書(SOP)および衛生標準作業手順書(SSOP)を作成します。この際、上長が自分ひとりの裁量と判断で作成を進めると、出来上がった内容と現場での実作業に大きな差が開く可能性があります。
手順書を作成する場合は、はじめに現場のスタッフへのヒアリングを行いましょう。その上で、自社の状況に合わせた衛生管理の仕組みを整えることが大切です。

・PDCAサイクルの重要性

マニュアルが作成されたからと言っても、内容が伴っていなければ衛生管理が実施できているとは限りません。実際に手順通り行ってみたところ、予期せぬ問題点や改善点が見つかるというケースは多いものです。

重要なのは、課題が見つかった際にどう改善へ生かしていくか。一度作って終わりではなく、継続的にPDCAを回していくことこそが大切です。

・点検の正確な記録・管理

一般衛生管理には多くの点検・管理業務が求められます。なかでも、冷蔵庫・冷凍庫の温度記録・管理はその代表例でしょう。しかし、手作業による記録で正確性が保たれないまま、惰性で記録が付けられてしまうケースも少なくありません。

トラブルが発生した際には、正確な記録が振り返りの重要な材料となります。いかに正しい記録を行い、適切な管理ができるかが大切です。

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一般衛生管理はもちろん、HACCPにおいても記録・管理は重要項目です。温度記録・管理については、ACALA MESHにお任せください。

まとめ

HACCPの導入には、事前に一般衛生管理の徹底が求められます。つまり、一般衛生管理を蔑ろにしては、HACCPの導入は困難とも言えるでしょう。とはいえ、ご紹介した通り、一般衛生管理自体は食品事業者にとってごく当たり前のものばかりです。振り返りの意味で確認をしつつ、不足部分があれば改善を実施していきましょう。