2023.09.19.Tue

食品製造業におけるDX人材の重要性

DXに付随して語られることも多くなった「DX人材」。しかし、具体的にどのような人物を指しているか、なぜ必要なのかは理解しにくいかもしれません。そこで今回は、食品製造業を含む、製造業におけるDX人材の重要性について解説します。

DX人材とは?

DX人材とは、デジタルトランスフォーメーション(DX)の実行と推進に必要なスキルとマインドを兼ね備えた人材のことを指す言葉です。

DXは単に技術のデジタル化を意味するものではなく、企業のビジネス変革の核心を成す取り組みです。このため、DX人材はデジタル技術やデータ活用の知識だけでなく、自社のビジネスと市場を熟知し、それをどのように改革するかの構想力やビジョンが求められます。

DX人材が求められる背景

DXの波は21世紀に入り、世界中の多くの産業を変革してきました。このデジタル変革は、テクノロジーの急速な進化と、新しいビジネスモデルの登場、そして消費者の行動や期待の変化といった複数の要因によって推進されています。

日本において、DXが急募される背景にはいくつかの要因が考えられます。

2025年の崖

この言葉は、既存のレガシーシステムの技術的・経済的な制約を示しています。古くからのITインフラが持つ限界が、経済的損失や競争力低下の原因となりうることを示唆しています。

新型コロナウイルスの影響

世界中のビジネス環境が一変したことで、非接触型コミュニケーションやリモートワークの重要性が増しています。これにより、デジタル化のスピードが一段と加速しました。

国際的な競争の激化

世界各地でのDXの進展は止まることなく、日本の企業が国際競争力を維持・向上させるためには、DXの取り組みが欠かせません。

消費者の期待

今や消費者は、スピーディで柔軟な対応やカスタマイズされたサービスを求めています。これに応えるためには、デジタル技術の活用が不可欠です。

これらの背景から、DXを実行・推進できる人材、すなわちDX人材が極めて重要となってきています。彼らは、技術的な知識だけでなく、変化するビジネス環境を熟知し、その中で企業がどのような方針や戦略をとるべきかを示唆・実行する役割を持っています。

食品製造業のDX推進の課題は人材不足

富士電機による食品製造業におけるDXに関する意識調査で、DXを推進する上での問題・課題についてもっとも回答が多かったのは「推進できる人材不足」(37.4%)でした。つまり、多くの企業では社内にDX人材がいないことが見て取れます。また、「知識・ノウハウの不足」(34.3%)にも多くの票が寄せられました。

なお、従業員規模別では、100人~499人で「知識・ノウハウの不足」が全体と比べやや高くなっています。大企業ではDX人材の確保や育成を前向きに捉えているが、中小企業の場合はより困難であることが伺えます。

それでは、なぜDX人材不足が起こっているのでしょうか?その原因をいくつか見ていきましょう。

DX人材確保の主要手段

DX人材の確保には「採用」と「育成」の2つの方法があります。しかし、多くの企業では育成方法に悩んでいる現状があると考えられます。

社内育成の長所は、既存の社員が持つ企業の文化や業務知識を生かしつつ、新しいDXに関するスキルを学べる点にあります。一方で、十分な教育体制やカリキュラムが整っていない場合、育成に時間がかかるというデメリットは大きいとされています。

 

人事評価制度の問題点

多くの企業において、DXの推進に関わる人材の評価制度が十分に整備されていない点は大きな課題です。とくに、DXの成果や進行状況をどのように評価するかが課題となっています。

DXの取り組みは、新しい技術や方法論の導入が伴うため、その成果を評価するための基準が従来のものとは異なります。そのため、DXに関連する業務の成果を正確に評価するための明確な基準が不足しているからです。

また、DXは中長期的な視点での変革を目的としているため、短期的な成果だけを重視する従来の評価制度では適切に評価できません。DXの本質的な価値は、長期的な視野での効果や変革にあります。

その他、過度な量的評価の依存やスキルセットの更新・フィードバックの遅れといった問題も考えられます。

 

組織改革の必要性

多くの日本企業は長い歴史の中で築き上げられた伝統的な組織構造を有しています。この組織構造は、過去の成功体験を基に形成されてきたものであり、多くの場合、安定したビジネス運営を可能にしてきました。しかし、デジタル時代の到来により、その構造がDXの足かせとなっているケースが見受けられます。

成功している企業では、DX専門の部署設置などの取り組みを行っています。こうした部署を設けることで、デジタル技術の導入や新しいビジネスモデルの実験に対する組織的な障壁を低減することが可能となります。これにより、組織全体のDXへの取り組みが加速します。

 

研修の実効性とその課題

DX研修は社員のスキル向上には貢献するものの、それが実際の業務のDX化に直結するわけではありません。

また、研修を受けた後、その知識やスキルを実際の業務に生かせるかどうかは、継続的なフォローアップによって大きく左右されます。メンタリングや研修内容を実務に生かすためのワークショップなど、研修後のサポート体制の構築が求められます。

デジタル化の範囲の限定性

DXの取り組みには資金や人材といったリソースが必要ですが、これらの制約からDXの導入が一部のプロジェクトや部署に限定されることがあります。その結果、DXの取り組みが一部の社員や部署に限られてしまうことがあり、全社的なデジタル化の推進が難しいという状況もよく見られます。

そのため、全社的なデジタル化を一度に達成しようとするのではなく、段階的に取り組むようにしたり、定期的な研修やワークショップを通じて、社員のITリテラシーを継続的に向上させたりといった取り組みが必要です。

DX人材確保のための対策

 

前述のとおり、DX人材の不足は、食品製造業において深刻な課題となっています。この人材不足を解消するためのアプローチをいくつかご紹介します。

全社一丸となったDX化への取り組み

ITスペシャリストやDX専門のチームに注目するだけでなく、現場の社員全員がDX化の知識や技能を持つことが重要です。これにより、デジタル変革の意識や手法が企業全体に浸透し、DX推進チームと現場との連携も強化されます。

 

現状に対する危機感の共有

DXは業界を問わず重要な概念であり、社員全員がDXの意味や必要性を理解することが大切です。研修等を活用して、DXに関する基本的な知識を共有することが推奨されます。

 

外部コンサルタントの利用

外部の専門家やコンサルティング企業にDXの取り組みを委託する方法です。専門的な知識や経験を持つプロフェッショナルの知見を短期間で取り入れられる点がメリットです。具体的には、プロジェクトごとの協力、アドバイザリーロールとしての活用などが挙げられます。

中途採用

DXの専門知識を持つ人材の中途採用は、企業のデジタル化を迅速に進めるための有効な手段です。他企業や業界でのDXの実務経験を持つ人材を獲得できます。業界経験者やIT専門職の採用、ヘッドハンティングといった施策が考えられます。

 

資格取得支援制度

DXやITに関連する資格の取得を促進するための支援や補助を実施します。社員のスキルアップとモチベーションの維持が期待できます。

取り組みやすい自動化からはじめるのもおすすめ

DX人材の確保・育成は将来に向けた必要不可欠な対策です。しかし、目標達成にはある程度の時間がかかると予想されるでしょう。

一方、DXではなく、既存作業の自動化のなかには、専門知識が不要なものも少なくありません。当社がご提供する自動温度管理システム「ACALA」シリーズはその代表例です。

パッケージ化されたセットは、到着後すぐに利用可能。面倒なセッティングやカスタマイズも不要です。温度管理・記録に特化したクラウド型プラットフォームは優れたユーザーインターフェースを持ち、IT知識がなくても容易にご活用いただけます。

DX人材は不要。それでいて、DXの第一歩が踏み出せ、成果も得られやすいのが「ACALA」の特徴です。

まとめ

DXに向けては人材の確保が大切です。できるだけ早めに着手しつつも、現状でも導入できるシステムについては前向きに検討を進めていきましょう。