2023.09.12.Tue

食品製造業で活躍するロボットとは?

製造業の分野で採用が進んでいる産業用ロボット。実は食品製造業においても、その波は着実に押し寄せています。そこで今回は、近年注目が集まっているロボットの概要やメリット、考えるべき課題などについて解説します。

ロボットによる自動化・省力化に期待が集まる食品製造業

富士電機が2023年5月に行った「食品工場の人手不足に関する意識調査」において、人材不足の対応策で「ロボット・自動機等の活用による自動化・省力化」が最多の票を得ました。ロボットや自動機の活用に関して、12.1%が「効果があった」という所感を持っていることが示されています。

なお、従業員数が300人~999人の企業では、全体と比べて効果を感じた回答がやや多い傾向にあるともされています。つまり、中~大規模の食品工場において、ロボットの自動化は高い評価を受けているのです。

食品製造業で用いられるロボットの種類

食品工場等で活躍するロボットにはどのような種類があるのでしょうか?以下で、代表的な一部の概要を解説します。

仕分けロボット

製品の仕分け作業(ピッキング)を行うロボットです。ベルトコンベヤーで運ばれる製品を整列し、次の工程のための下準備までを自動で行ってくれます。こうした作業は従来、人力によって行われてきましたが、人手不足が続くこともあり、規模の大きな工場を中心に導入が進んできている傾向にあります。

近年登場しているロボットの場合は、製品の整列に加え、トレーや箱詰めといった作業も可能。技術が進歩したことで、よりレベルの高い作業が行えるようになりました。

荷積みロボット

食品工場における製品出荷前の荷積み作業は、作業者にとって大きな負担とされています。製品が詰まった段ボールや袋は非常に重く、さらに丁寧な取り扱いが求められるからです。

こうした力仕事には、ロボットが役立ちます。主に50kg以上の物を持ち上げられる垂直多関節ロボットなら、作業者に負担をかけることはありません。なお、このような荷積み用のロボットは「パレタイジングロボット」と呼ばれます。高速・精密な動作よりも、持ち上げる力が求められ、動作の自由度は特に高くなく、4-5軸のロボットがよく使用されています。

サポートロボット

食品工場における新たな注目ロボットとして「サポートロボット」が挙げられます。従来のロボットは作業者から安全に隔離されて動作するのが一般的でした。一方、サポートロボットは作業者と隣り合わせで安全に動作できるように設計されています。キャスター等で自由に移動できる設計になっているものも多く、伴走型で作業者の助けとなります。

現在、多くのロボットメーカーがこの種のロボットを開発しており、今後ますます注目度が高まります。

ロボット導入の課題と食品工場の現状

 

多様な展開を見せ、ますます注目が集まる産業用ロボット。しかし、工程や扱う商品次第で導入が困難になるケースも考えられます。以下で、ロボットの課題について簡単に解説します。

少量多品種の食品の取り扱い

ロボットによる自動化では、エンドエフェクタと呼ばれるロボットアームの先端を食品に合わせて変更する必要があります。同一製品のみを扱う場合には高い効率化が望める一方、少量多品種の場合にはこの変更作業が手間になることも。結果として、生産効率が低下してしまう逆効果が発生する可能性もあります。

形状が異なる食品の取り扱い

野菜や魚介類といった食品は、画一的な形状・サイズではありません。ロボットは同じ形・大きさの食材等を扱うのが得意なので、これらの食品については取り扱いが困難になるケースがあります。

無理に利用を進めると、結果としてロボットの調整が煩雑になり、余計に労力がかかることも。そのための人員を補充するなど、人件費が増大してしまうケースも考えられます。

人の作業の方が効率的な場合

人にとっては簡単なことでも、ロボットにとっては難しい作業は数多く存在します。ロボットを導入する際には、こうした点をよく見極めなくてはなりません。

また、ロボットの導入コスト回収には長い時間がかかりますが、作業ごとに高速化を求めようとすると、さらにコストがかさむことも。計算をしてみたら、人を雇ったほうが安かった、というケースも十分にあり得ます。

ロボット導入にはコストの課題も

前述のとおり、食品工場へロボットを導入するには、コスト的な課題も非常に大きいと考えられます。具体的な見積もりを見てみましょう。

産業用ロボットの導入総額は約4,000万円。内訳は以下です。

  • ロボット本体:800万円
  • 関連装置:400万円
  • 周辺設備:1,000万円
  • システムインテグレーション関連費:1,800万円

ロボット導入による効果も考えてみましょう。熟練スタッフの法定福利費等を含む人件費が年間800万円、ロボット導入に寄る売上上昇が年間200万円だとすると、年間の収益は1,000万円増加と見込まれます。つまり、導入から回収までは最低でも4年は必要なのです。

このイニシャルコストを高いと感じるか安いと感じるかは、事業規模などによって異なります。ただ、一般的には決して安い投資ではなく、ハードルは十分に高いと言えるでしょう。

低コストかつスピーディーに導入できるシステムは?

とくに小~中規模の食品工場の場合、ロボットの導入は容易なことではないでしょう。しかし、食品製造業の業務効率化は、ロボット導入だけではありません。細かな部分であったとして、自動化を行うことで大きな成果につながるケースがあります。

たとえば、冷蔵・冷凍庫の自動温度管理システムで考えてみましょう。冷蔵・冷凍庫などの温度記録を人力で行っている場合は、一度のチェックに5~10分程度の人的リソースが割かれます。全体で見れば微々たるものかもしれませんが、温度チェックは一日に何度も行う必要があります。仮に、3時間に1回だとすると、一日あたり40~80分の労力が使われている計算です。

ただし、問題はそれだけに留まりません。万が一、書き間違いなどが発生している場合には、何らかの対処も必要です。その時間帯、正しい温度で食材が保管できていたかどうかが分からないことは、大きなリスクだからです。そのほかにも、紙を使ったデータの管理や、改ざんの可能性なども考える必要があります。

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まとめ

食品製造業におけるロボット導入は、今後さらに進むと考えられています。ただし、アンケートの結果からも分かるとおり、ある程度の事業規模でなくては手が出ない、というのが現状のようです。将来的な導入に向けた情報収集は継続しつつ、まずは導入ハードルが低いシステムからスタートするのも視野に入れてみることをおすすめします。