2022.12.21.Wed

温度管理におけるアラーム・通知の重要性

食品工場や厨房などで温度管理を行う際には、アラームや通知などの発報機能が重要です。とくに、遠隔監視システムに付随して動作するアラーム・通知については、さまざまなトラブルの防止や早期発見・対処に役立ちます。こちらでは、アラーム・通知の重要性について解説いたします。

食品製造における管理基準逸脱

食品を扱う事業者には、原則としてHACCPの考え方を取り入れた衛生管理の導入が義務づけられています。そして、この仕組みのなかには管理基準と呼ばれる基準が設けられており、この管理が食品事業者には求められます。万が一基準を逸脱した場合には適切な対応が必要となりますが、前提としてその事態は回避しなくてはなりません。

HACCPの管理基準とは?

HACCPでは、必須管理点・CCPと呼ばれる管理基準を設けます。これは、食の安全性を高め、それを保つために必要となる管理点が何なのかを決める工程です。ここで定められた重要ポイントは許容限界(CL)と呼ばれます。

許容限界を決定するには、基準を守ることで殺菌処理などが正常に行えるポイントを、科学的根拠を基にして設定します。この数値に間違いがあった場合、適切な管理を行っているにもかかわらず、実際には人に危害を加える食品の流通につながりかねません。

なお、食品製造等においては、許容限界(CL)の前段階として運用限界(OL)と呼ばれる基準も設定されます。これは、その名称のとおり運用上の不都合・不具合が起こる可能性のあるボーダーのことです。具体例で見てみましょう。

  • CL:75℃以上1分の加熱を必要とする
  • OL:85℃の達温を確認する

上記は、「85℃まで温度が上がっていれば、食品の中心温度は75℃1分以上の加熱になっている」といった考え方に基づき設定されています。

なお、それぞれの基準に達しているかを確認する工程を「モニタリング」と呼びます。逸脱が発生した場合には、モニタリングの段階で対処が必要になります。

基準を逸脱するとどうなる?

許容限界を逸脱した場合、その製造ラインで作られた食品は、安全性が確保できていないと判断されます。つまり、食品事故などを引き起こす可能性がある、ということです。その後の工程で危害を取り除けない場合は、最悪大きな事件に発展するケースもあるでしょう。多くの場合、逸脱が確認できた時点で他の商品を区別し、廃棄が行われます。

一方、運用限界については運用上の不都合・不具合です。そのため、食品の廃棄などは行われませんが、早急な対応が必要になります。イメージとしては、CLが赤信号、OLが黄色信号と考えておきましょう。

そのほかにも考えられるトラブルとは?

管理基準逸脱以外にも、食品の製造や加工の現場では、さまざまな温度管理トラブルが発生する可能性があります。

  • 機器の不具合・故障(冷蔵庫の故障で庫内温度に異常が発生)
  • 人為的ミスによる温度上昇(冷蔵庫の扉の閉め忘れなど)
  • 温度計測端末の故障・バッテリー切れ(温度記録データの抜け・漏れ)
  • 工場や店舗全体の異変(施設に起こる何らかのトラブル)

上記のトラブルについては「温度管理システムのアラート機能で防げるトラブル」でも詳しく解説しております。ぜひご覧ください。

万が一の逸脱に備えるアラーム・通知

 

原則として、OL(運用基準)の逸脱は避けなくてはなりません。CL(管理基準)に関して言えば、逸脱が起こってしまった場合は不良品が作られた可能性を示すため、大きなトラブルが発生する危険性を孕みます。

とは言え、いずれの基準も逸脱が起こらないとは言い切れないでしょう。こうした事態に備えるのがアラーム・通知です。

温度計に付属のアラーム・警告音の場合

前提として、温度計のなかにはアラームや警告音の発報機能が備わっている商品も存在します。これを使えば、基本的なアラーム・通知は実現可能です。ただし、冷蔵庫内など、音が聞こえにくい場所に温度計を設置した場合には、現場や管理者に音が届かない可能性もあります。また、スタッフが不在となる深夜や休日については、チェック自体が難しいというのが実態です。

温度管理システム付属のアラーム・通知の場合

次に、温度管理システムに付属したアラーム・通知の場合で考えてみましょう。一般的な温度管理システムにおけるアラーム・通知の流れは以下です。

  1. 温度ロガーが温度を測定し、サーバへデータを送信する
  2. データを受け取ったサーバが、内部のプログラムに従って基準逸脱がないかを自動チェックする
  3. サーバ内で逸脱を判明した場合、設定された担当者に対してメール等による連絡が行われる

本来であれば人が確認・判断・発報をする流れが、すべてシステムによって自動化されている点が、もっとも大きなポイントです。

もしも人力で温度逸脱をチェックしていたとすれば、作業員が該当箇所の温度を計測し、異常が見つかったら報告する、という流れになります。しかしこの場合は、計測の頻度によって、いつ・どれくらいの時間逸脱が起こっていたかが分かりません。そのほかにも、人為的ミスによって逸脱に気づけない、といった可能性も考えられます。

システムを利用したアラーム・通知であれば、こうしたトラブルを確実に避けられるのが大きなメリットです。

通知・アラームと併せて活用したい遠隔監視

通知・アラームをシステム化するのであれば、合わせて遠隔監視可能な温度管理・記録システムの導入についても検討をしてみましょう。単に逸脱の監視ができるだけではなく、発報時にリアルタイムで状況を確認できるため、事故の防止につながります。

なお、多くの場合、通知・アラームの機能は温度管理・記録システムに含まれています。そのため、まずは通知・アラーム機能が搭載されている製品を絞り、その中から自社にとって有益となる機能をもったシステムを選定してみましょう。

遠隔監視のメリット

遠隔監視システムには、緊急時のアラーム・通知を受け取れるだけでなく、以下のようなメリットがあります。

  • 24時間365日、どこからでも遠隔で監視できる
  • スマホなどのモバイルデバイスが利用できる
  • 同時アクセスで複数人による監視が行える
  • 施設内・複数拠点の温度状況をまとめて管理できる
  • リアルタイム監視だから異変に気付きやすい
  • 従業員の働き方改革支援につながる

遠隔監視のメリットおよび導入に関わる解説は、「遠隔で温度管理を実現!メリットと導入のハードル」にも掲載しております。こちらもぜひご覧ください。

なお、当社がご提供する温度管理・記録システム「ACALA」は、専用のプラットフォームを用いた遠隔監視に対応しております。1分ごとのデータを測定、サーバへ送信しており、リアルタイムに異常の検知ができるため安心です。また、システム構築に必要となる無線温度ロガーや各種ネットワーク機器などは、すべてパッケージにてご提供可能。専門的な知識がなくても、すぐにシステムをご利用いただける点が強みです。

まとめ

HACCPにおける管理基準の管理と逸脱時の対応については、すべての食品事業者が意識しなくてはならない問題です。しかし、従来のような手作業によるチェックでは、どうしても抜け・漏れが発生しかねません。確実に食の安全を守るのであれば、アラーム・通知機能が搭載されたシステムの導入が重要です。

なお、温度管理システムの導入はアラーム・通知機能だけでなく、HACCPにおける「モニタリング」工程など、さまざまな面でよい効果を生み出します。食の安全性レベルを総合的に向上したいとお考えの場合にも、ぜひご検討ください。