HACCPの考え方を取り入れた衛生管理における「衛生管理計画の策定」
「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」を導入する際には、はじめに「衛生管理計画の策定」が必要です。これは、従来行っていた衛生管理の内容を「見える化」し、食中毒予防のための衛生管理の取り組みを強化するものです。今回は、一般飲食店事業者向けの「衛生管理計画の策定」について解説します。
衛生管理計画の構成
一般飲食店事業者の衛生管理計画は、「一般衛生管理」と「重要管理」の2つで構成されています。
・一般衛生管理のポイント
製造環境の衛生管理、従業員の衛生管理、食品取扱者の教育・訓練、記録の必要性など、HACCPによる食品衛生管理を実施する上で整備しておくべき食品製造の衛生管理プログラムです。以下のような項目について見直しを行います。
● 原材料の受入の確認
● 冷蔵・冷凍庫の温度の確認
● 交差汚染・二次感染の防止
● 器具等の洗浄・消毒・殺菌
● トイレの洗浄・消毒
● 従業員の健康管理・衛生的作業着の着用など
● 衛生的な手洗いの実施
・重要管理のポイント(重要管理点)
食材の調理方法に合わせて、実施すべき事項をまとめた表のことです。メニューをグループに分け、チェック方法を記載していきます。
一般衛生管理への対応
衛生管理計画の見直し、その第一歩目は「一般衛生管理への対応」です。食品事業者であれば当たり前のことばかり、と思われがちですが、 HACCP導入の機会に見直しを行うことで、より高い衛生管理につながります。
一般衛生管理を見直す場合には、「いつ」「どのように」「問題があったときにどうするか」を明確にする必要があります。この視点を持つことで、これまで隠れていた問題が見つかるケースも少なくありません。また、明文化されていなかった手順が明確になる、という効果もあります。以下から、具体例をご紹介します。
・原材料の受入の確認
原材料が納入された際の確認項目を書き出しましょう。例えば、食材の外観やニオイなどに異常がないか? 梱包に不備がないか? そのほか、期限・保存方法などについても確認してください。
もし問題が見つかった場合には、返品や交換などの対応が必要になります。その手順についても明記しましょう。
・冷蔵・冷凍庫の温度の確認
冷蔵・冷凍庫の温度確認に関する項目です。タイミングと方法、温度について明記しましょう。例えば、「始業前に目視で確認し、○℃以下であれば問題なし」といった指標ができると、実施しやすくなります。
また、冷蔵・冷凍庫だけでなく、室内の温湿度なども合わせて確認するのが推奨されます。大規模調理施設衛生管理マニュアルでは、「調理場の湿度は80%以下、温度は25℃以下に保つことが望ましい」とされていますので、こうした基準に沿った内容を明記しましょう。
もし温度が規定値よりも高くなっている場合の対処についても記載してください。冷蔵・冷凍庫の設定変更や調整に加え、必要に応じて修理依頼も必要です。また、保管されていた食材は廃棄するのか、加熱して提供するのかなども決めておきましょう。
・冷蔵庫や冷凍庫の温度、調理場の温湿度測定にはACALA MESHがおすすめ
より確実な衛生管理を行いたいのであれば、間違いや記録忘れが発生してしまう人手による手書き記録は排除してシステム化しましょう。そこでおすすめなのが当社の温湿度の遠隔監視・自動記録システム「ACALA MESH」です。
機器の設置工事や新たに通信回線を契約する必要もなく、月額定額料金のみでご利用頂けるシステムで、簡単に始められます。温度センサは完全防水仕様のため、泡洗浄や次亜塩素酸による消毒も可能でとても衛生的です。また、日報や月報は自動で作成されメール送付されるため大きな労務軽減に繋がります。
・交差汚染・二次感染の防止
交差汚染や二次感染をどのように防止するのかを定めます。例えば、冷蔵庫内で食材が正しく保管されていたかを確認したり、まな板や包丁などは都度洗浄し、消毒を行ったりといった具合です。また、汚染が見つかった場合の対処法についても記載します。
・器具等の洗浄・消毒・殺菌
器具等の洗浄・消毒・殺菌をどのタイミングで行うか、どのような手順で実施するかを定めます。具体的には、作業終了後に包丁を洗浄し、消毒をして所定の位置に戻すなどです。
・トイレの洗浄・消毒
トイレの洗浄・消毒は大切な一般衛生管理のひとつです。始業前や業務終了後など、適切なタイミングを決め、どの部分を念入りに洗浄・消毒すべきかなどを定めます。一般的には、便座や水栓レバー、手すり、ドアノブなどが挙げられます。また、タイミングにかかわらず、汚れが目立った場合は都度洗浄するなどの取り決めも明記しましょう。
・従業員の健康管理・衛生的作業着の着用など
従業員の体調や手の傷、着衣の確認に関する項目です。どのタイミングで確認するかに加えて、問題があった場合の対処について明記します。例えば、手に傷がある場合は絆創膏を貼り付けた上で手袋を着用するなどです。
・衛生的な手洗いの実施
手洗いはタイミングが重要です。トイレに行った後や作業開始前、盛り付けの直前など、具体的な内容を記載してください。
重要管理への対応
重要管理は、手順に従ってそれぞれの項目を決めていくことが大切です。
・STEP1. 提供しているメニューを一覧にする
まずは提供メニューをすべて洗い出してください。この際、消費者に向けて提示しているメニュー表ではなく、個別の調理品を書き出すのが大切です。たとえばハンバーグに添えられているサラダなども、ひとつのメニューとして扱いましょう。
・STEP2. 加熱・冷却・保存などの温度帯ごとにメニューを分類する
加熱の有無や、加熱後の冷却・保存などでメニューを分けていきます。たとえば刺身やサラダなどは、冷蔵品を加熱せずに提供するグループです。一方、焼き魚や唐揚げなどは、冷蔵品を加熱調理し、温かい状態で提供するグループになります。以下の図に従い、全メニューの分類を行いましょう。
・STEP3. それぞれのグループごとにチェック方法を決める
メニューの分類が完了したら、次にそれぞれのチェック方法を決めています。また、各メニューでチェック方法が異なる場合には、それぞれの方法を明記しましょう。以下は、一般的なレストランを想定した具体例です。
非加熱 | 冷蔵庫から取り出した後はできる限り速やかに提供する。 | ||
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加熱 | 提供 | 焼き物の場合は火力・加熱時間・見た目を確認。揚げ物の場合は油の温度や同時調理の数量なども影響あり。 | |
高温保管 | 感触や見た目で確認する。 | ||
冷却保管 | 提供 | 加熱後、速やかに冷蔵し、取り出した後はできる限り速やかに提供する。 | |
再加熱 | 加熱後、速やかに冷蔵し、再加熱時は気泡や見た目などを確認する。 |
・中心温度の測定にはACALA FTがおすすめ
より確実な衛生管理を行いたいのであれば、加熱後の中心温度計を用いた測定は必須です。ただし、その記録を手作業で行うのは手間がかかります。そこでおすすめなのが当社の中心温度測定記録システム「ACALA FT」です。
NFC通信機能を組み込んだハンディタイプの芯温計であり、取り扱いが容易です。わざわざデータを手入力する必要がありません。また、測定データはクラウドサーバーへと累積され、記録・管理が簡単な点も特徴です。なお、加熱後食品の中心温度だけでなく、ソースやカレーの冷却後温度測定にもご活用いただけます。
衛生管理計画テンプレートの入手方法
衛生管理計画を策定する場合は、厚生労働省が公開している「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書」のダウンロードをおすすめします。小規模一般飲食店だけでなく、食品添加物製造や納豆製造、漬物製造など、業界ごとに細かく分類された手引き書が掲載されているので、自分の業種のものを選んでください。
手引き書の中には、衛生管理計画に関わるテンプレートが掲載されています。参考にして自作しても良いですし、掲載された表をそのまま印刷して利用しても構いません。
衛生管理計画策定の次は「実施」と「確認・記録」
衛生管理計画が策定できた後は、「計画に基づく実施」と「確認・記録」です。これまで準備してきた衛生管理計画に従って、正しく運用を行いましょう。
なお、どれだけ正しく実施・確認・記録ができていたとしても、衛生管理計画書に不備があれば意味がありません。この場合は、衛生管理計画策定へと立ち戻り、修正・改善を加えていきましょう。
まとめ
衛生管理計画の策定は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」に踏み出す第一歩です。策定自体には手間もかかりますが、事業所での衛生管理を振り返る良いきっかけにもなるでしょう。確実な準備と実施が行えれば、衛生管理の大きなレベルアップにつながります。