SQFとは?HACCPとの違いや関係性
HACCPの導入はすでに日本の食品事業者にとって義務であり、対応は必須です。しかし、せっかくマネジメントシステムを構築するのであれば、別の認証を合わせて取得したいと考える事業者の方も多いでしょう。こうした際の候補のひとつとしておすすめしたいのが「SQF」です。HACCP導入と同時に、自社の品質管理レベル向上にもつながります。こちらでは、そんなSQFの概要や特徴、HACCPとの違いについてまとめます。
SQFの概要と特徴
SQF(Safe Quality Food)は、米FMI(Food Marketing Institute)が管理するHACCPの手法と、GMPを組み合わせて作られた食品安全マネジメント規格です。オーストラリアで開発され、現在世界各国に広がっています。
特徴はISO9001と同等の品質管理システムと、HACCPによる安全管理マネジメントシステムが組み合わさったような内容であること。つまり、SQF認証を取得することで、食品の安全のみならず、食品の品質についてもマネジメント可能になります。以下からは、そのほかのSQFの特徴をご紹介します。
産業分野ごとに要求事項が区分される
SQF規定にはパートA、Bおよび添付資料があります。このうち、パートAについてはSQF規定の実施・維持に関する内容が記載されています。一方、パートBには適正製造規範(GMP)・適正農業規範(GAP)がモジュール形式で規定されています。このモジュールには共通のもののほかに、産業分野ごとの要求事項が区分されて記載されています。
認証レベルが分かれている
SQFは3段階のレベル分けがされています。
- 基本的な食品安全
- HACCPに基づいた食品安全プラン
- 包括的な食品安全・品質管理システム
それぞれのレベルで認証の要件や審査日数が異なり、事業者ははじめに目指すレベルを選択します。
審査スコアを用いた格付け
審査は減点方式によって算出されます。減点となるのは、不適合の数と種類(リティカル・メジャー・マイナー)です。70点以上が合格となりますが、そのなかにも優・良・合格といった格付けがあり、審査頻度へ影響します。
SQF取得のメリット
SQFの取得は、食品安全のコミットメントを実証するのに最適です。かつ、食品事故の予防およびコントロールにつながります。合わせて、品質面に関する管理システムの構築にもつながり、より良い食品事業の運営に役立つでしょう。
また、統一された管理基準ができあがることで、不要・ロス・ムダの削減にも貢献。さらに、小売業や大手ブランドメーカからの食品安全要求を満たせるため、複数の監査にかかっていたコストや労力の低減にもつながります。
加えて、レベル3の認証を取得した場合には製品等にSQFシールド(認証証明のマーク)を貼り付けでき、消費者へのアピールも可能です。同時に、食品安全要求の高い製造業・小売業からの取引条件が満たせることで、売上げ機会の拡大にもつながります。
SQF取得の流れ
SQFの取得は前提条件の整備からはじまり、SQFシステムに準じた品質マニュアルの構築を行います。その後、PDCAを実施することで、継続的な改善を行います。
- 前定条件の整備
まずはHACCPの前提条件となるGMP、SSOPを整備し、文書化を行います。 - HACCPを構築
CODEX ガイドラインに従い文書化します。 - 品質マニュアルの構築
SQFシステム要求事項を充たした品質マニュアルを構築・文書化します。 - PDCAの実施
P→D→C→Aサイクルの活動全体を繰り返し反復し、食品安全・安心への取り組みを継続的に改善します。
GMPとは?
GMPとは、適正製造規範を表す言葉です。衛生的な食品製造に求められる設備や製造方法など、ハード・ソフトの両面に関する基準が対象項目ごとに設けられます。
アメリカでは1960年代から一部の製造業者へGMPの取り入れを義務化する法律も作られました。日本においても、医薬品製造において法的にGMPの義務づけが行われています。HACCPの義務化により、今後GMPを採用する企業の数は増える見込みであると考えられています。
SSOPとは?
SSOP(Sanitation Standard Operating Procedure)とは、一般管理プロフラムの管理について記された衛生標準作業手順書のことです。食品の接触面の清潔や殺菌施設など、幅広い衛生に関する項目を「いつ・どこで・誰が・何を・どうやって」といった視点から記します。なお、文書化の際には図や表、イラストなどを用いて、誰が見ても同じように理解できるような形にすることが重要です。
HACCPとの違い〜CCPとCCQ〜
SQFとHACCPを比較する場合は、それぞれに求められている基準点を見比べると理解しやすくなります。
SQFではCQP(Critical Quality Point)が求められます。これは、食品の品質維持のために必要とされる重要管理点とされています。一方、HACCPの定めるCCP(Critical Control Point)は、食品リスクの低減に向けた管理のために重要となる製造工程を指します。
例を出して考えてみましょう。たとえばCCPに従い食品加工の段階でノロウイルスを除去しようとすると「90℃以上の温度で90秒間加熱する」といった管理点を置くことになります。一方、CQPは品質の管理基準となりますので、「このポイントが管理できないと、食品品質が著しく低下する」という点を指しています。
このように、CCPは食品の安全のフォーカスしている一方、CPQは品質(たとえば味など)を管理する基準と考えれば分かりやすいでしょう。
HACCPは
HACCPはあくまでも食品安全のためのマネジメントシステムであり、規格でありません。そのため、審査等を受けて取得するものではなく、手順書などを読み込み、自社で導入するものです。一方、SQFは取得のために審査等が発生します。
ISO9001のマネジメントシステム
SQFはHACCPの衛生管理手法とISO9001のような品質管理システムを組み合わせたマネジメントシステムです。つまり、SQFにはHACCPが含まれていると考えて問題ありません。
また、SQFにはHACCPにない要素が含まれます。前述したとおり、SQFは食品の安全性だけでなく、同じレベルで品質維持が求められるようになります。そのため、HACCPに加えてより食品の品質も担保していきたいという場合に適した規格と言えるでしょう。
なお、ISO9001とHACCPを組み合わせた企画としては、ISO9001-HACCPなども存在します。ただし内容は異なるため、自社にとって必要な規格の選定・取得を行いましょう。
まとめ
HACCPの導入は日本で食品に関わる事業を行うのであれば必須となります。しかし、食品製造の場面においては、安全性の担保と同時に品質管理も行わなくてはありません。SQFを導入すれば、一度の審査でその両方に関する認証が取得できます。世界的な規格にもなるため、自社の安全・品質を社外にアピールするには最適です。かつ、社内におけるコストやトラブルの削減にもつながるため、この点に課題感を抱く企業様はぜひ取得をご検討ください。