2021.12.20.Mon

FSSC22000の概要とHACCPとの違い

国際的な食品安全マネジメントシステムとして知られる「FSSC22000」。導入ができれば、自社が取り扱う食品の安全性向上・担保ができるだけでなく、国際的な取引の際にも有利となります。また、自社の管理体制が可視化され、業務効率化といった副次的効果も期待できます。 そこでこちらでは、FSSC22000の概要や、同じく食品安全マネジメントシステムであるHACCPとの違いについて解説します。

FSSC22000とは

FSSC22000は、Food Safety System Certification 22000の略であり、FSSC22000財団(Foundation FSSC22000)が開発した食品安全のためのシステム企画です。食品小売業界を中心とする非営利団体GFSI(Global Food Safety Initiative:国際食品安全イニシアチブ)によって、食品安全のための認証スキームに承認されました。

2020年12月の時点では、全世界で訳24,000件の登録があり、国際的な認証として知られています。以下から、FSSC22000のより詳しい特徴についてご紹介します。

GFSI承認による認証規格のひとつ

承認に高い要求を求められるGFSI。FSSC22000は、その条件をクリアした認証スキームのひとつです。大手食品小売業はもちろんのこと、現在はさまざまな業界へと取得の動きが波及しており、たとえば食品製造行や食品包材製造業、飼料等製造業などの分野でも、FSSC22000取得が行われています。これは、食品の安全はフードサプライチェーン全体で実現すべきという考え方が広まってきているためと考えられています。

FSSC22000の構成

FSSC22000は大きく3つの構成によって成り立っています。基本となるのは、食品安全マネジメントシステムとして国際的な評価を得ているISO22000です。ここに、衛生管理の仕様書となるTS22002シリーズとFSSC22000独自の追加要求事項が組み合わさることで、FSSC22000として成立します。

ISO22000自体はHACCPシステムを含めた食品安全マネジメントシステムです。しかし、衛生管理に関するあいまいな部分がありました。そこで、ISO/TS22002シリーズを組み合わせ、これを具体化。さらに、GFSIの要求を含めるといった流れでFSSC22000は生まれました。

3年に1度の非通知審査

FSSC22000を含むGFSI承認スキームは、原則として3年に1度の審査を受けることになっています。そのため、取得後も取り組みを続けなくては認証が取り消されてしまいます。

また、審査は非通知で行われるのが特徴。日程を決め、被審査側の同意を得て行われる通常審査とは大きく異なります。これは、食品安全の取り組みは定常的に行われるべき、という考えによるものです。突然の審査であっても、しっかりとした食品安全マネジメントに取り組む必要があります。

なお、審査は規模の大小を問わず、日本国内だけに絞っても約2,400社に実施されています。こう聞くと不安に思われるかもしれませんが、基本的にははじめに決めた取り組みを継続してさえいれば、大きな問題にはなりません。むしろ、自社がしっかりと食品安全マネジメントに取り組めているかのチェックに活用すべきでしょう。

1~2年で行われるアップデート

FSSC22000を含むGFSI承認スキームは、アップデートの頻度が高いという特徴を持ちます。

たとえば、同じく食品安全マネジメントシステムであるISO規格は、10年単位での規格改訂が行われています。一方、FSSC22000の更新頻度は1~2年程度。また、世界的に問題となる食品事故が起きた場合には、それに対応するための新たな要求事項がスピーディーに追加されます。

食品安全のために、アップデートへの対応は必須です。しかし頻度が多いため、その都度自社が対応すべき内容について確認・実施するのは大変、という見方もあります。

FSSC22000取得のメリット

まずは対外的なメリットから。FSSC22000は国際標準に基づいた前提条件プログラムの確立・運用につながり、顧客による二者監査をスムーズに進められるというメリットを持ちます。また、組織の信頼性向上により、GFSI認証スキームを基とする包括的なサプライヤー管理を行う食品メーカーや流通チェーンに向け自社を売り込みやすくなり、新規市場参入の可能性も高めてくれるでしょう。そのほか、対外に向けて自社の食品安全への取り組みを論理的に説明できるようになるといった利点もあります。

対内的な部分に目を向けてみます。食品安全ハザードが明確になるため、工程トラブルへの予防処置や製品回収リスクが低減でき、食品防御への対応強化にもつながります。さらに、一般衛生管理の仕組みを構築・運用できれば製造工程が可視化され、作業効率改善などにも寄与するでしょう。

FSSC22000は今後、海外輸出でますます求められるようになる規格と考えられます。輸出を含む海外企業との取引を検討している場合は、早めの取得がおすすめです。

HACCPとの違いは?

HACCPは食品を安全に製造することを目的としたシステムであり、規格ではありません。そのため、認証を取得していなかったとしても、導入自体は可能です。

一方、HACCPの内容を盛り込み、規格として定めたものが自治体HACCPや業界HACCP、ISO22000、FSSC22000などです。ただし、これらの規格はすべて内容が異なります。たとえばISO22000については、一般衛生管理があいまいな表現になっているという指摘があります。

そのため、HACCPを導入するだけでなく、自社が目指す食品安全管理を実現するためにはどの認証を取得するのが良いのか、という視点を持つことが大切です。

FSSC22000取得の流れ

最後に、FSSC22000を取得する流れについて簡単にまとめます。行程は大きく分けて「システム構築・運用」「認証取得」「システム運用・認証維持」です。

システム構築・運用

もっとも重要となる行程です。以下のような取り組みを行います。

  1. 現状分析・ギャップ診断スケジュール確認
  2. キックオフ・教育訓練
  3. 食品安全システムの構築
  4. 運用・教育

認証取得

システム構築・運用を進め、受審期を過ぎた後、内部監査とマネジメントレビューが行われます。その後行われるファーストステージ・セカンドステージ審査をクリアした約1カ月後に、登録証が発行されます。

システム運用・認証維持

登録証発行の約1年後には、第1回定期審査が行われます。さらにその約1年後には第2回定期審査、その約1年後には更新審査が行われます。

まとめ

FSSC22000は食品衛生管理をより厳格に行う際に取得しておきたい認証規格です。HACCP取得後、より安心・安全な食品の取り扱いを目指したい場合はもちろん、今後国際的な取引を行っていきたいと考えるのであれば、取得を検討してみましょう。

なお、現在HACCP導入に取り組んでいる場合は、はじめからFSSC22000の取得を目指すという選択肢もあります。FSSC22000にはHACCPの内容が含まれているため、手間が減ります。かつ、厳格な食品安全マネジメントシステムの導入にもつながるためおすすめです。