2021.03.25.Thu

HACCPを導入しないとどうなる?罰則は?

2021年6月に完全義務化となるHACCP。それに伴い、導入の遅れによるペナルティ等を心配される方も多いでしょう。そこで今回は、HACCPを導入しなかった場合の罰則について解説します

HACCPに罰則はあるの?

結論からお話しますと、HACCP導入違反による罰則は食品衛生法自体では定められていません。ただし、HACCPを導入せず、ずさんな衛生管理を行っていた場合には、食品衛生法の罰則規定に該当する場合があります。
食品衛生法には「3年以下の懲役または300万円以下(法人は1億円以下)の罰金」(食品衛生法第十一章の第七十一条〜第七十九条)という罰則規定が設けられています。なお、具体的な条文の例としては以下が挙げられます。

一 人の健康を損なう可能性がある食品又は添加物を販売などする行為(乳幼児用おもちゃやそれに使う添加物、食品の洗浄に使う薬剤を含む)や疾病が認められる家畜等を使用する行為、承認されていない食品添加物(おもちゃに使う添加物も含む)を使用する行為をした場合
二 新たに販売される食品で安全性が確認できていないものや、一般的に販売されている食品であって問題が発見されたもの等に対して厚生労働省等が判断し販売禁止にすることがあるが、それを破って販売した場合
三 危険性や問題がある食品の廃棄などの命令を守らなかった場合、そして、食品、添加物、器具又は容器包装に関しては、公衆衛生に危害を及ぼすおそれがある虚偽の又は誇大な表示又は広告をしていた場合にそれらの除去のための指示を守らなかった場合、営業禁停止処分を守らずに営業した場合

(食品衛生法 第十一章第七十一条)

また、食品衛生法ではなく、地方自治法によって罰則が設定される可能性があります。この場合は、「2年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」が課せられることがあります。

HACCPはいつ調査される?

調査の有無にかかわらず、すべての食品事業者に対してHACCPは導入が求められます。その前提はありつつも、HACCPについて保健所からの調査がいつされるのか気になる方もいらっしゃるでしょう。タイミングとして考えられるのは以下です。

  • 各都道府県が作成する監視指導計画に記された、食品衛生監視員による定期立入検査
  • 営業許可の更新

上記のタイミングで行われる検査で「HACCPへの対応が十分ではない」と評価されると、必要に応じて衛生計画の内容や、施策実施に関する指導・助言が行われることがあります。

立入検査

食品衛生監視員による定期的な立ち入り検査のスケジュールは、一般的な飲食店の場合だと6〜8月、魚介類を扱う店舗は11〜1月の傾向にあります。ただし、時期は都道府県・市区町村ごとに異なるため、一概には言えません。

また、定期ではなく臨時の立入検査が行われるケースも考えられます。たとえば客や近隣住民が飲食店に対する苦情・クレームを保健所に出した際、もしくは食中毒が発生してしまった後などに実施される傾向にあります。

いずれの場合も、立入検査は保健所から事前連絡が入り、当日に調査が行われます。その後、状況に応じて口頭指導や書面指導、行政処分のいずれかの指導・処分が行われます

営業許可の更新

飲食店の多くは5〜8年程度の頻度で営業許可の更新が必要になります。この際には、開店時にも行われたような実地調査がなされます。もしもHACCPが未導入だった場合は、指導・処分が行われる可能性があります。

どこまで実施できていれば指導にならない?

どこまで実施できていればHACCP導入と見なされるのかは、判断に迷うところです。ここでポイントになるのは、保健所の食品衛生監視員が参考にする資料です。実は監視員も、飲食店が読む業界ごとの手引き書によって、実施判断を行っています。
そのため、基本的には手引き書の内容をそのまま実施していれば問題ありません。ただし、HACCPの実施に伴い記録作業や書類が増えます。たとえば温度管理・記録などは、ヒューマンミスなどが起こりやすいポイントです。HACCPを確実に実施するためにも、自動温度管理・記録システムなどの導入がおすすめです

食品衛生監視員ごとに指導内容が違ったりしない?

手引き書を参考にしていたとしても、食品衛生監視員ごとに判断基準は多少なりとも異なるものです。ただし厚生労働省も、HACCP指導者育成のための研修会を開催するなど、基準の平準化や質の向上、新制度に向けた指導内容の周知・普及を行っています。

HACCPの衛生管理計画に不備があると行政処分になるの?

そもそも、保健所による調査はHACCPのみを対象にしたものではありません。そのため、「HACCPに不備があれば行政処分」ではなく、店舗全体の衛生管理に対する取り組みが判断されます。
もちろん、HACCPへの対応に不備があれば、何らかの指導・処分が下される可能性も考えられます。ただし、食中毒が発生したなどの場合を除き、即処分といったことはありません。多くの場合、以下の順番で指導・処分が行われます。

1.口頭指導

食品衛生監視員による口頭指導です。どのような不備があるのかが伝えられ、その後は自主的な改善や営業自粛が求められる可能性があります。ただし、基本的には指導に従っておけば問題はありません。

2.書面指導

口頭指導が行われたにもかからず、それに事業者が従わない場合には、書面指導が行われます。この際には、各自治体や保健所などのホームページに事業者名や処分内容・指導内容が一定期間に亘って公表されます

3.行政処分

再三の指導に従わなかった場合は、いよいよ行政処分です。法的拘束力を持つ営業許可の取り消しや営業停止・禁止といった処分が行われます。

まとめ

ご紹介したとおり、HACCPの実施確認は即行われるものではありません。しかし、検査が入った場合には必ずチェックされる項目でもあります。いつ見られても問題ないよう、適切な衛生管理計画書や温度管理等を含む記録表などを用意しましょう。

なお、当社の自動温度管理・記録システム「ACALA」は、HACCP導入をお考えの企業様に向けた最適なソリューションです。煩雑かつミスの起こりやすい温度管理をIoTにより自動化。立入検査の際にも、確実なエビデンスとして提出できます。HACCP導入に向けた温度管理・記録でお悩みの方は、ぜひ「ACALA」をご検討ください。