2022.01.24.Mon

HACCPの製品説明書を作成する手順について

HACCPの手順2「製品説明書の作成」と手順3「使用用途・対象者の確認」では、製品説明書の作成に関する内容が書かれています。かなり初期の段階で登場する手順となるため、HACCPに取り組む際には早めに内容を理解しておかなくてはなりません。そこでこちらでは、HACCPの製品説明書がどのようなものなのか、その必要性、具体的な作成の手順や項目の概要を解説します。

HACCPの製品説明書とは?

HACCPの手順として登場する製品説明書。これはその名称から分かるとおり、製品に関する説明を記した書類です。対象となるのは自社で製造する製品全般となり、確認するのは製造元だけでなく、消費者や流通業者なども含まれます。

HACCPの製品説明書が必要な理由は?

そもそも、製品説明書はHACCPの手順2〜3に関わるものであり、HACCPを構築する際には欠かせない要素です。また、その後の危害分析を行う際にも、製品説明書の情報は役立ちます。それを前提に、書類の必要性について考えてみましょう。

製品説明書があれば、消費者が製品をどのように取り扱えば良いかを把握できるようになります。そのまま食べても問題ない製品の場合は、必要性を感じないかもしれませんが、たとえばカップ麺などはお湯を入れて何分後に食べられるのかなど、記載がなくては分かりません。また、硬い種が含まれているといった情報があると、歯の弱い方に対しての注意喚起にもつながります。

さらに重要なのは原材料表示です。アレルギー疾患を持つ方にとって、アレルゲンの有無は重要な情報です。知らずに口にしてしまうと、重篤な健康被害を引き起こす可能性もあります。その他、消費者の年齢や免疫力の違いといった観点からも、製品説明書は必要であると言えるでしょう。

HACCPの製品説明書作成の手順

HACCPの製品説明書を作成する際の手順は大きく分けて2つです。

1つ目は、衛生管理を行うにあたり、製品の仕様や特性といった情報を明らかにしておくことです。最終製品について、いくつかの項目を設け分類し、使用・特性を記していきます。

2つ目は製品を食べる消費者が誰で、どのように食べられるか(利用されるか)を明らかにしておくことです。たとえば電子レンジでの加熱や、ドレッシングをかける前提の製品であることなどを記載します。

以下から、それぞれのポイントについて解説します。

HACCPの危害要因的視点に立ち注意点を洗い出す

製品の仕様・特性を明確にする際には、HACCPにおける危害要因的視点に立つことが重要です。どのような危害が考えられるのか、どうするとその危害が発生するのかなどを踏まえて、関連する仕様・特性について洗い出しを行いましょう。

例えば、製品説明書の流通条件に冷凍と書かれている場合には、保管時にも冷凍が必要になると分かります。また、アレルゲン物質を含んでいるのであれば、製造ラインを分けるといった対策も必要になるでしょう。

このように、商品の危害要因が判明すれば、流通条件に関する注意点およびアレルゲンのコンタミネーションについても対策ができるようになります。結果として、製造から流通、小売、喫食・使用に至るまでの安全性を高めることにつながります。

喫食、使用用途を明確にする

一般消費者を対象にしているものであれば通常の運用でも問題ありませんが、たとえば入院患者向けの商品の場合などは、より厳しい安全確保が必要となるケースも考えられます。そのため、当たり前のことでも漏れなく記載することが求められます。

製品説明書の具体的な項目

次に、製品説明書に記載する具体的な項目を見ていきましょう。以下で、各項目について簡単に解説します。

 

名称

製品名(商品名)をそのまま記載します。審査時などに分かりやすいよう、ファイル名なども同一にして管理しましょう。

種類

商品の種類分けにはいくつかの方法があります。CODEX規格に準拠する動きもありますが、実際には自治体や組合などによって分類方法が異なることは少なくありません。必ずCODEX規格に合わせる、といったルールはないので、自社の立ち位置などで判断しましょう。なお、一般的な分け方としては商品カテゴリーごとの分類が挙げられます。たとえば調理麺、サラダといった形です。

原材料の名称

製品に使用されている原材料名を記載します。書式によって異なりますが、アレルゲン情報を原材料の項目に含めるケースもあります。もしくは、アレルゲンのみを独立させて記載する方法もあります。重要なのは、作成の根拠が明確になっており、一貫性があることです。

添加物の名称

製品に使用されている添加物を記載します。商品ラベル記載の内容を転記しても構いません。

包装の形態および材質

商品の包装に使用されている材質と、パックやテトラパック、ピローなど、包装形態を記載します。

性状及び特性

安全性や保存性に影響する性状や特性がある場合には、その内容を製品説明書に記載します。合わせて、pHや糖度、水分活性といった情報も書き加えておきましょう。

流通条件

温度や照度など、商品流通時の条件を記載してください。流通過程で商品を保管する際の適切な取り扱い方法を伝えられます。また、荷受工程においても原材料の保管条件および流通条件が明確化されているのが望ましいと言えます。

加工処理法

喫食時の調理条件を記載します。たとえば電子レンジで温めて食べる食品などの場合は、温度や加熱時間などが挙げられます。それ以下の温度・時間だと、想定した製品として喫食できないというような条件を書きましょう。

製品の規格

重要や衛生条件について記載します。とくに衛生条件については消費期限などにも関わる重要な箇所です。一般生菌数や大腸菌群規格を測定し、結果を漏れずに記載しましょう。なお、他者から購入した製品を同梱する場合(たとえば小袋のスープなど)などは、取引先から原材料や容器包装の原材料企画書を取り寄せ、チェックをすることが大切です。

消費期限または賞味期限

消費期限および賞味期限や食品の安全性において重要な項目です。根拠のある正確な日数を記載してください。

喫食または利用方法

消費者が製品をどのように喫食、もしくは利用するのかを記載します。端的に言うなら、「商品の食べ方」を記すということです。物によっては加工処理法とも重複しますが、製品の説明には欠かせない要素となるので忘れずに記入してください。

表示上の指示

製品開封後の保存期限および保存条件を記載します。商品の開封後、どのように製品を取り扱えば良いか消費者に伝えることが目的です。この欄に正しい記載がないと、未開封時の消費期限・賞味期限との違いが把握できなくなり、食中毒などを引き起こす可能性も高まります。

販売等の対象とする消費者層

製品を食べるのが主に誰なのかを記載します。たとえば一般消費者や乳幼児など、特性や年代を分かる範囲で構わないので記載しましょう。

まとめ

製品説明書の作成は、HACCPの手順に書かれた必須項目です。そうでないとしても、消費者や取引先に対して、必要となる情報を届けるのに不可欠な書類と言えるでしょう。

なお、その後の危害分析をスムーズに進めるという意味でも、製品説明書の内容を充実させることは大切です。各部門に在籍しているHACCPチームのメンバーがそれぞれ情報を集め、漏れのない製品説明書を準備するようにしましょう。