2022.04.28.Thu

HACCPにおけるモニタリングとは

「HACCPにおける管理基準(許容限界/運用限界)の設定からモニタリング方法・改善措置の設定まで」にて、HACCPのモニタリング方法について簡単に解説を行いました。今回は、この内容をより深掘りし、モニタリングの必要性や手順などについてより詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。

HACCPにおけるモニタリングとは?

HACCPでは、記録と保存が重要です。そのためには、事前にモニタリング環境を整えなくてはなりません。これが「原則4(手順9):モニタリング方法の設定」です。

モニタリングでは、必須管理点(CCP)が管理基準(CL)内で、正しくコントロールされているかどうかを監視・確認(観察、測定)します。モニタリングが正しくできていないと、異常があった際に正しい措置が講じられず、大きなトラブルに発展する可能性もあります。そのため、適切なモニタリングを行うためには「なにを」「いつ」「だれが」という観点について明確に定めることが大切です。

なにを?

まずは監視対象が何かを明確にします。これは製品が何か?といった基本的なことではなく、たとえば温度や時間、pH値、水分活性といったデータ、もしくは、表面や中心、色、粘度といった物理的な情報を指します。モニタリングすべき対象は製品毎に異なります。製品説明書やフローダイアグラムなどを参考に作成された危害要因に応じて、適切な監視対象を定めましょう。

なお、製造中に異常が発見された場合は、すぐに製品の出荷を止め、市場へは流通させないような措置を取る必要があります。そのため、検査結果が出るまでに時間がかかる微生物検査などは、監視対象としてふさわしくありません。

いつ?

適切なモニタリングをするためには、タイミングも重要です。ポイントとなるのは連続性、もしくは頻度です。モニタリングはリアルタイム性が求められるため、できる限り短い間隔で実施するのが理想です。ただし、それによって現場の生産性が落ちることは避けたいところです。たとえば1時間ごとの計測であったとしても、その都度人手が取られてしまうという懸念があります。そのため、連続性を高めつつも労働負荷を高めない、IoT等を用いたモニタリングシステムなどが推奨されます。

だれが?

モニタリング担当を決定する場合は、その担当者が正しくHACCPについて理解ができているかなどの条件が重要です。しっかりと教育訓練を受けた担当者をアサインしましょう。とくに、モニタリングの必要性については必ず把握しておくべきです。

モニタリングは監視と管理・記録がセット

すでに述べたとおり、HACCPにおいて管理・記録は非常に大切です。そして、モニタリングはその手順に付随する活動だと知っておきましょう。

加えて、モニタリングした数値をただ記録しているだけでは、危害要因のコントロールにはなりません。担当者がデータに目を通し、適切な分析を行うことではじめてリスクマネジメントが成り立つといえます。

管理基準とモニタリング方法が確立されていれば、必須管理点(CCP)が不適切な管理状況に陥ったとしても、管理基準逸脱であると認識することができ、速やかな改善措置へと進めます。また、モニタリングの記録が残ることは、「HACCPプランに従い、安全に製造された製品である」という証明にもなるでしょう。

HACCPは、継続的な改善が求められるシステムです。一度完成したから終わりではなく、定期的にHACCPプランを検証し、必要なアップデートを続けなくてはなりません。モニタリングの記録は、こうした検証時にも役立ちます。

モニタリングと検証との違い

ISO22000においては、検証という語句が登場します。一見すると、モニタリングと検証は近しい意味に感じますが、それぞれ意義は異なります。モニタリングはCLが正しく管理されているかどうかについて、一定の頻度でチェックを行うことです。一方、検証は客観的証拠を提示し、要求事項を満たしているかを確認することです。いずれも重要な項目ではありますが、その違いについては正しく把握しておきましょう。

モニタリング記録の項目

上記を踏まえ、モニタリング結果として記録すべき項目についてまとめます。

  • 作業者氏名
  • 品名
  • 工程
  • 測定項目
  • 管理基準
  • 測定、観察、検査値
  • 製品を特定できる名称及びロットを特定できる記号(ロット名)
  • 測定、観察、検査者のサイン
  • 記録点検者(責任者)のサイン
  • 管理基準逸脱時の措置

モニタリング方法の決め方例

 

次に、より具体的なモニタリング方法の決め方について見ていきましょう。

食中毒菌の多くは30〜40℃の温度帯を好んで増殖するという特徴があります。食品の保管時にこの温度帯を避けるためには、冷蔵・冷凍する必要がありますが、このときの冷蔵・冷凍庫の温度設定は重要なポイントです。

温度決定の方法には自社での実験を行う方法と、参考になる資料を基にする方法があります。今回は、厚生労働省が発行している大量調理施設衛生管理マニュアルを参考にしてみましょう。資料では、冷蔵10℃以下、冷凍-15℃以下(生鮮魚介は-18℃)と定められているため、それに従います。※リステリアなどは低温でも増殖するという特徴があります。

ただし、冷蔵庫・冷凍庫は開閉がされるため、その都度温度に変化が生じます。また、庫内の奥と手前で温度の差も起こりえます。そのため、モニタリング方法を決定する際には、もっとも扉の開閉が行われる時間帯を想定してモニタリング間隔を決め、かつ庫内でもっとも温度が高くなる場所に計器を設置しましょう。

自動温度管理・記録はACALAシリーズがおすすめ

適切なモニタリングを行う上で、IoTは非常に有用です。当社がご提供するACALAシリーズをご活用いただくことで、作業員の負荷を減らし、かつ高精度の温度管理・記録が実現できます。

冷蔵庫・冷凍庫の温度管理・記録にはACALA MESHが最適です。庫内に設置されたセンサーが連続的に温度を自動計測し、取得データをクラウドサーバーへと送信します。他にも加熱殺菌槽や冷却チラー槽の水温を遠隔監視することが可能で、測定されたデータはクラウドサーバーに保存され、パソコンやタブレット、スマホなどのインターネット環境があれば、どこからでも確認、分析ができます。

また食品の中心温度を測定する場合は、ACALA FTをぜひご活用ください。NFC通信機能が搭載されたハンディタイプの芯温計は、取得データをワイヤレスで転送可能。読み取り専用端末を介してクラウドサーバーにデータが送られ、ACALA MESH同様にパソコンなどから確認、分析が可能です。

ACALA MESHおよびFTは、いずれも初期費用不要で、設置も簡単です。月額料金のみで利用でき、手軽に自動温度管理・記録システムを導入できます。

まとめ

HACCPの正しい運用・改善は、正しいモニタリングが必須です。記録が正しく残ることは、自社のHACCP遵守の証明にもなります。適切なモニタリング方法についてしっかりと考慮し、確実な実施を目指しましょう。