2022.05.05.Thu

HACCPと大量調理施設衛生管理マニュアルの違いは?

1日に300食以上など、大量の調理を行う施設での衛生管理について定めた「大量調理施設衛生管理マニュアル」。運用自体は平成9年の時点から開始されているため、すでに導入している事業者も少なくありません。その一方、近年になって義務化されたHACCPも、食品衛生についてのシステムです。そこで今回は、それぞれの違いや共通点、関係性などについてまとめます。ぜひ参考にしてください。

HACCPはシステムで、マニュアルではない

まずは、HACCPと大量調理施設衛生管理マニュアルの関係性から解説します。

そもそも、HACCPとは食品衛生を管理するためのシステムです。大量調理施設衛生管理マニュアルのようなマニュアルではありません。HACCPは事業者が食品安全マネジメントを行う際のルールづくりを示したものであり、これを基にしてマニュアルが作成されます。その一方で、大量調理施設衛生管理マニュアルにはすでに肉の加熱温度などの調理工程が細かく規定されています。つまり、大量調理施設衛生管理マニュアルは事業者が“守るべきルール”であり、HACCPはそのルールを作るためのシステムである、という立ち位置になるのです。

大量調理施設衛生管理マニュアルはHACCPに基づき策定されている

ただし、大量調理施設衛生管理マニュアル自体は、そもそもHACCPに基づいて策定されたマニュアルです。そのため、大量調理施設衛生管理マニュアルに沿った運用を行うということは、そのままHACCPによる食品安全マネジメントを行っていることと同じです。よって、すでに大量調理施設衛生管理マニュアルによる運用を行っている事業者に関しては、これまで通りのルールを守ればHACCP対応になります。

大量調理施設衛生管理マニュアルの基礎知識

大量調理施設衛生管理マニュアルは、平成9年3月に厚生労働省が策定した食中毒の予防が目的のマニュアルです。以下はマニュアル内における重要管理事項です。

  • 原材料の受入及び、下処理段階における管理徹底
  • 加熱調理食品は中心部まで十分に加熱し、食中毒菌等を死滅させる
  • 加熱調理後の食品及び、非加熱調理食品の二次汚染の防止徹底
  • 食中毒菌付着の増殖防止のため、原材料及び調理後の食品の温度管理徹底

大量調理施設では、衛生管理体制を確立し、重要管理事項について点検・記録を行った上で、必要となる改善措置を講じ、遵守する必要があります。

なお、大量調理施設に該当するのは同一のメニューを1回300食以上、または1日750食以上を提供する調理施設です。

大量調理施設衛生管理マニュアルによる管理

 

次に、大量調理施設衛生管理マニュアルにおける管理方法の具体的な内容を見てみましょう。以下では、代表的な管理方法をご紹介しています。なお、ご覧いただければ分かるとおり、大量調理施設衛生管理マニュアルはHACCPを基に作成されています。そのため、基本的な管理方法は「原材料の受入・調理・喫食までの保管について、すべての工程から危害分析を行い、必要な管理を行う」というHACCPの流れであることを確認してください。

原材料の管理

受け入れた原材料は、調理のタイミングまでに適切な管理と記録(納品業者による試験成績書含む)が求められます。たとえば、保管時に相互汚染されない状態が保たれているか、適切な温度管理がなされているか、などが肝心です。万が一事故が発生した場合、調理工程での問題がないとすれば、原材料の状態が疑われます。その際は、トレーサビリティを持って原因究明ができることが重要です。

加熱による殺菌

調理対象の中心部を、75℃で1分間以上という、決められた適切な温度・時間で加熱します。なお、二枚貝などのノロウイルス汚染が懸念される食品については、85℃で1分間以上の加熱が必要です。この際、中心温度は必ず3点以上から行うようにしましょう。加えて、具材がいくつかあるような場合は、そのなかでもっとも熱が通りにくい食品を選んだ上で測定を行ってください。適切に加熱調理を行えば、ほとんどの菌・ウイルスは死滅できます。ただし、芽胞や毒素については加熱だけでは破壊できないケースも多いため、調理後の長期間保存には十分注意してください。

二次汚染の予防

加熱調理後の食品に汚染物が付着してしまった場合、その後の工程で殺菌が行えないため、食中毒のリスクが大きく高まります。こうした事態を避けるためにも、二次汚染の予防を徹底しましょう。具体的には、調理場の適切なゾーニングやドライシステム、防虫防鼠、調理器具の使い分けなどが挙げられます。さらに、汚染物を扱う物・場所と、非汚染物を扱う物・場所が一目で見分けられるような工夫をすることも大切です。調理スタッフへの定期的な指導や啓蒙を行いつつ、誰もが二次汚染に敏感になれる現場づくりを行いましょう。

温度管理

多くの食中毒菌は、30〜40℃の温度帯を好んで増殖します。たとえば、加熱調理された食品が配膳や保冷をせずに放置をされた状態は、食中毒菌の増殖を待っているようなものです。そのため、調理から喫食まで30℃以上の時間が空くのであれば、10℃以下、もしくは65℃以上で保管することが求められます。

なお、菌の増殖は保管中にも当然起こりえます。たとえば、冷蔵機器に不具合が発生しているような場合は注意が必要です。庫内が適正に冷やされていない状態で食品を保管すると、前述のとおり食中毒菌の増殖を許してしまいます。中心温度だけでなく、冷蔵庫や室内等の温度管理にも気を配りましょう。

大量調理施設衛生管理マニュアルにおける温度管理にもACALAがおすすめ

大量調理施設衛生管理マニュアルでは、中心温度の測定や保管時の温度管理が定められています。この温度記録や管理を行うことは、食品安全を保つために欠かせません。その一方で、温度記録・管理は手間のかかる作業です。より効率を高めるためには、当社が提供するACALAシリーズがおすすめです。

冷蔵庫・冷凍庫の温度管理・記録にはACALA MESHをぜひご活用ください。センサーを庫内に設置するだけで、自動で温度を測定します。取得されたデータは無線でクラウドサーバーに保存され、専用プラットフォームで分析が可能です。

また、食品の中心温度測定にはACALA FTがおすすめです。ハンディタイプの芯温計にNFC通信機能を搭載することで、測定後のデータをワイヤレスで転送。データ読み取り端末を介してクラウドサーバーにデータが送信され、プラットフォーム上で分析することができます。

いずれのシステムも初期費用は0円。月額のトータルサービス利用料金のみです。設置も簡単なため、専門知識は必要ありません。手軽に導入できる温度管理・記録システムとしてぜひご活用ください。

まとめ

大量調理施設衛生管理マニュアルは、食品事故等を防止するのに役立つ内容が記載された有用なマニュアルです。同一メニューを1回300食以上または1日750食以上を提供する調理施設の場合は、このマニュアルに従うことでHACCP導入にもなります。これから大量調理の事業を行う場合には、必ず確認しておきましょう。