2021.02.04.Thu

HACCPでも重視されている室温の温度管理

温度管理というと冷蔵庫や冷凍庫にばかり目がいきがちですが、実は室温についても適切な記録・管理がHACCPによって求められています。しかし、なかには室温について厳格に考えていなかったという方も多いでしょう。そこでこちらでは、室温の温度管理の基礎知識をお伝えします。

適切な室温管理が必要となる理由

導入が食品事業者の義務とされているHACCPには、冷蔵庫・冷凍庫の温度管理だけでなく、室温の記録・管理も重要であると定められています。調理や食品加工作業を行う空間の温度が高いことによる「細菌やウイルスの繁殖防止」と「従業員の安全」の2つが主な理由です。

●細菌・ウイルスの繁殖を防止する目的

室温管理は細菌繁殖を防止する役割があります。食中毒の原因となる細菌やウイルスの多くは20℃前後の室温を好むと言われています。そのため、室内の温度が上がると繁殖が活発になります。調理場や食品工場も同様であるため、この時点で食品事故のリスクが高まるのです。
また特に、人間や動物の体温に近い37℃前後はもっとも繁殖スピードが加速する温度帯です。とくに夏場は室温が上がりやすく、厨房内では場所によっては40℃を超える可能性も。実際に、食中毒を引き起こす細菌としてよく知られるO157やO111は、7~8℃から増殖がはじまり、35~40℃でもっとも増殖しやすくなります。いかに手早く調理・加工を進めたとしても、細菌の繁殖スピードがそれを上回れば、食品事故につながってしまうのです。
高温の室内には大きなリスクが存在します。適切な室温管理を行い、細菌やウイルスの繁殖を防止することが食品事業者には求められているのです。

●従業員の熱中症予防の目的

食品・食材・厨房機器を適切な状態に保つことは衛生管理の基本です。しかし、そこで働く従業員の健康管理についても、使用者は留意しなくてはなりません。
まずは使用者に課せられている安全配慮義務の観点です。室温が高すぎて従業員が熱中症を起こした場合、その責任は使用者に課せられます。罰則こそないものの、民法上の規定によって当該従業員による損害賠償が請求される可能性もあります。
しかし、食品事業者にとっての問題はそれだけにとどまりません。熱中症にかかった従業員が調理場や工場にいたこと事態が大きな問題です意識が朦朧(もうろう)とするなかで製造された食品は、品質の面で大きな不安が残ります。もちろん、安全性にも疑問が持たれるでしょう。
従業員が健全な状態で働ける環境の維持は、使用者としての義務であり、食品の安全・安心を守ることにつながります。その意味でも、室温管理の徹底が必要です。

場所別・適正な室温

次に、適切な室温の目安について解説していきます。こちらでは、食品工場と小〜中規模の店舗内調理場(厨房)とを分けて見ていきましょう。

●食品工場の場合

食品工場には空調設備が備えられており、自動で室温・湿度が管理されているケースが多い傾向にあります。一般調理だと15〜20℃程度が目安。体感としては春や秋の気温で、防寒服はいらない程度です。
一方、生鮮食品工場の場合は室温が食品事故に直結する可能性もあるため、より厳格な温度管理が求められます。室温を5℃前後に設定しているようなところも少なくありません。
なお、空調設備による温度管理は非常に便利ですが、機器内の温度計に不具合が発生した場合には、適切な室温が維持できなくなる可能性もあります。設備に任せきるのではなく、定期的に室温をチェックができる仕組み作りが必要です。

●一般的な調理場(厨房)の場合

「大量調理施設衛生管理マニュアル」(厚生労働省)では、施設の温度は25℃以下に保つことが望ましいという記述があります。なお、湿度は80%が目安です。高湿な環境は細菌やウイルスが好むため、湿度が上がりすぎないようにすることも重要です。ちなみに、これはHACCPの概念を基に作られた基準であるため、食品事業者はぜひ参考にしたいところです。
しかし、小〜中規模の店舗内調理場(厨房)の場合、食品工場のような空調設備が設置されていないケースも見られます。この場合は、窓を開けるなどの工夫が必要ですが、夏場だとこれだけで室温を25℃以下まで下げるのは難しいでしょう。冷房設備の導入や送風機の設置を検討するとともに、温度計を用いた記録・管理が求められます。

●注意したいエアコン・加湿器の使用

過度なエアコンの使用は、室内を乾燥させる可能性があります。従業員の健康管理という視点で、適切な湿度を下回らないよう注意しましょう。ただし、一般的な調理場(厨房)では煮炊き調理をしていることも多く、水蒸気が発生しやすい環境といえます。多少のエアコンの使いすぎでは、湿度が大幅に低下することはないでしょう。
なお、湿度の管理を加湿器に任せるという方法は、調理場(厨房)に限って言うとおすすめできません。加湿器の内部はカビが生えやすく、細菌などの温床になるケースもあります。そのため、1週間に1回程度の清掃が必要です

適切な室温管理には自動温度管理・記録が重要

冷蔵庫・冷凍庫は、食品保存というシビアな役割を担います。そのためどうしても温度管理の優先度が高くなるのですが、そのせいで室内の温度管理が疎かになってはいけません。
HACCPの概念でも触れられているとおり、調理場(厨房)は食品が取り扱われる場である以上、安全性を踏まえた管理は必須。そこでおすすめなのが、自動温度管理・記録システムです。
室温の測定は、壁などに温度計を設置し、その数値をスタッフが目視して記録する、といった方法がもっともシンプルです。しかし、手書きである以上漏れや抜け、見誤りなどのヒューマンエラーは避けられません。もしもその状況で食中毒が発生してしまうと、原因の追及に欠かせない室温記録がなかったり間違っていたりする可能性もあります。
自動温度管理・記録システムを導入しておけば、自動で定期的な温度記録が実行されます。調理場(厨房)や食品工場のスタッフの手を煩わせることもありません。
また、記録した情報はデータとして蓄積されるので、作業改善に向けた管理や季節ごとの温度変化と空調設定などの分析にも活用できます。

●自動温度管理・記録システムならACALA MESH

室温の管理・記録には、当社のACALA MESHがおすすめです。温度だけでなく湿度の記録が適切なタイミングで行えるようになるため、衛生環境づくりに役立ちます。なお、センサは取り付けが容易であるため設置も簡単。初期設定も不要なので、自動温度管理・記録システムをはじめて導入される方にも最適です。

まとめ

室温の温度管理の重要性についてご理解いただけたでしょうか。食品が関わる場所については、できる限り温度の計測・記録を行いましょう。なお、この際には自動温度管理・記録システムなどを導入しておくことが必要です。安心・安全な食品調理・加工のために、適切な管理を目指しましょう。