食品産業の景気は回復傾向?2つの調査から見る課題
新型コロナウイルスの流行がはじまった2020年。この頃から、食品産業全体の大幅な景気不調がはじまったと考えられます。その後、さまざまな状況変化が起こるなか、2023年における食品産業はどのような兆しを見せているのでしょうか。ここでは、日本政策金融公庫とM&Aキャピタルパートナーズ株式会社が行った調査結果から、その動向を見ていきます。
日本政策金融公庫「食品産業動向調査」が発表
日本政策金融公庫の「食品産業動向調査(令和5年7月調査)」によれば、食品産業の設備投資DIは19.2となり、1997年の調査開始以来、史上最高の数値を記録しています。
全体の景況DIは7.4、とくに食品製造業では8.7と、2016年下期以降で最も高い数字を示しました。糖類、油脂、菓子などの製造業の見通しもとくに明るく、食品産業全体の景況感は好調であると言えるでしょう。
人手不足問題が浮上
好調を見せる景気感の一方、雇用に関する指標は厳しい状況と言わざるをえません。
全体の雇用判断DIは37.2、食品製造業では35.5という高い数値を示しています。これは、コロナ禍での人手過剰が逆に人手不足という問題に変わりつつあることを表していると考えられます。食品産業の多くの企業が、経営課題として人手確保や人材育成の重要性を感じていることが伺えます。
設備投資への強い意欲
人手不足の影響を受けて、企業の設備投資への意欲は高まっています。
設備投資DIの19.2という数字は前年から12ポイント、1月の当初見通しから5.7ポイントの増加を示しており、3年連続での増加となっています。食品製造業の経営者たちの間で、省力化・省人化の取り組みや設備の合理化・増強が盛んに議論されていることが明らかとなりました。
「食品製造業の経営者意識調査」では先行きの不安も
日本政策金融公庫とは別の調査結果についても見てみましょう。
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社が行った食品製造業の経営者意識調査では、食品製造業が持つ先行きについて不安が示される結果となりました。物価やコストの高騰に対処するための施策として、新製品の開発や他社との協業などの選択肢を模索している様子が伺えます。以下で、ポイントごとに解説を行います。
業績の現状
まずは業績に関して。物価・原材料費の高騰を背景に、半数以上の企業が、今年度の業績が下がったと回答しています。実際に、45%の企業は物価・原材料費高騰の影響を製品の価格に転嫁できていない状況のようです。つまり、販売価格据え置きで、原価の値上がり分を、利益を下げて補いながら事業を続けています。
経営課題
もっとも多くの票を集めたのは「燃料費/電気代の高騰」です。実に75.0%の企業がこの問題に直面しているようです。先にも記載した物価・原材料費の高騰と合わせて考えると、食品製造業にとって死活問題とも言える要素と捉えられます。
また、日本政策金融公庫の調査でも出てきた人材不足問題も重複しています。「従業員の賃金」を経営課題と感じる企業が53.0%。人材の採用や賃金設定に関しての悩みが強まっていることが示されました。
業績改善の施策
回答を見ると、半数の企業が新製品開発に注力していることが分かります。食品製造業において、新製品開発は未来に向けて継続すべき取り組みであり、事業発展には欠かせません。
しかし、生産ラインへの設備投資に対して消極的なこともアンケートの結果から読み取れます。理由としては、業界の未来に対する不透明感や懸念が考えられます。つまり、新たな商品の開発には力を入れているが、これは既存の設備内でできる範疇に留まっている、というのが現状のようです。
パートナーシップの検討
「販路の拡充」、「事業承継」、「既存商品の値上げ」のために、他社とのパートナーシップを検討している企業が4割以上という結果も、大きなポイントになるでしょう。人材不足問題も踏まえると、自社のみで課題を解決するのではなく、パートナー企業と一緒になって事業を推進・拡大したいと考える経営者が多いと読み取れます。
多岐にわたる問題への対策とは?
前述のとおり、食品業界では設備投資や人手不足対応、コスト上昇の問題など、多岐にわたる課題が浮上しています。これらの課題に対応するための施策として、新製品の開発や他社との協業などが模索されていることが明らかになりました。
以下から、こうした多岐にわたる問題への対策例をいくつかご紹介します。
人手不足の対応
食品製造業における人材不足に対応するためには、働き方改革が重要です。
柔軟な労働時間の導入やリモートワークの促進により、多様な人材が働きやすい環境を整えることができます。また、非正規雇用の正社員化を進めることで、より安定した雇用を提供し、従業員の満足度と企業への忠誠心を高めることも期待できるでしょう。
これらの改革は、働きがいのある職場づくりに貢献し、結果として人材の確保と定着につながります。食品製造業の持続可能な発展には、従業員が長く働ける環境を整えることが不可欠です。
設備投資の検討
食品製造業界の人手不足は深刻化しています。その解決策のひとつとして期待されるのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)です。
このアプローチでは、ロボット技術等を用いて作業の自動化を推進し、人的資源の必要性を減少させます。さらに、データ分析を活用して生産効率を高め、需給管理を最適化することも可能です。
これにより、限られた人材でも高い生産性を維持でき、従業員の作業環境改善にも寄与するでしょう。デジタル化は、質の高い食品供給を持続可能な形で確保するための鍵となります。
>>食品製造業のDX(デジタルトランスフォーメーション)とは?
コスト上昇の対応
前述のとおり、物価や原材料費の高騰が続いており、45%の企業がこの高騰の影響を製品価格に転嫁できていない状況です。燃料費や電気代の高騰は食品製造業にとって大きな課題となっており、75%の企業がこれを経営の死活問題と認識しています。こうした問題への対応は、生産性の向上はもちろん、こまかな経費の見直しなどが重要です。
食品製造業の課題解決の第一歩は「ACALA」
さまざまな課題への対応が求められる食品製造業。そこでおすすめしたいのが、当社がご提供する自動温度管理システム「ACALA」です。
前述のとおり、人材不足への対応には働き方改革などの取り組みが求められます。ここで必要となるのが業務の“自動化”です。
ACALAは、冷蔵・冷凍庫や室内などの温度記録・管理を自動化できるため、人による手間の削減につながります。さらに、初期費用はゼロなので、設備投資へのハードルも高くありません。
何より、原料等の価格が上がる近年においては、食材のロスを削減することはもっとも重要な要素です。加えて、冷蔵・冷凍庫のメンテナンス最適化が実現することで、修理コストも削減。効率的な稼働による節電などにもつながります。
まとめ
調査の結果を見ると、景気動向については回復傾向にあるものの、一方で原価コストの上昇などによってまだまだ楽観はできない状況が続いています。将来的なことを考えた場合、課題を解決できる設備投資などが重要な取り組みであると言えるでしょう。