HACCPにおける妥当性確認と狭義の検証
HACCPシステムおよびプランは、状況の変化などによって安全性に影響が出るものです。よって、継続的な改善が必要になり、そのための方法としてPDCAなどが用いられます。この際、必ず必要となるのが「妥当性の確認」と「狭義の検証」です。今回は、それぞれの意味や具体的な内容、実施のタイミングについて解説します。
妥当性確認と検証とは
HACCPの手順11(原則6)「検証方法の設定」のなかには、以下の内容が含まれています。
- 妥当性確認(Validation:バリデーション)
- 狭義の検証(Verification:ベリフィケーション)
それぞれの概要について見ていきましょう。
妥当性の確認における「妥当性」とは、HACCPシステムの有効性を指します。つまり、現状のHACCPプランが有効であるかをチェックするという内容です。
狭義の検証とは、HACCPシステムが効果的に機能しているかの検証です。妥当性(有効性)であるのは前提として、運用によって効果が出ているかどうかをチェックしていきます。
妥当性確認の必要性は?
HACCPシステムによって安全な衛生管理を実現するためには、プラン作成時の適切な危害要因特定およびコントロールが求められます。この設定に誤りがあると、重大な事故につながる可能性があります。さらに言うなら、危害の管理ができていない状態はHACCPシステムが機能不全を起こしているのと同じです。
妥当性の確認を行う理由は、HACCPシステムの機能不全を察知し、必要に応じて改善を加えることにあります。そのため、定期的なPDCA内に組み込むことが大切です。
具体的な狭義の検証とは?
狭義の検証も、HACCPプランのPDCAに組み込むべき要素のひとつです。該当箇所はDoおよびCheckに当たります。
HACCPプランを実行すると、実行記録が残ります。これを検証する際には、正しくプランが実行されているか、効果的に機能しているかのチェックが必要です。そして、その結果に応じて修正等が求められる場面もあるでしょう。
このように、HACCPは一度作って終わりではなく、前提プログラムを踏まえたPDCAを実行し続け、常に改善していくことが大切です。
妥当性確認と検証の内容
続いては、妥当性確認と検証の内容について解説します。
妥当性確認の方法
妥当性確認を行う際には、事前に製品の仕様や、各種検査結果データなどを集めておかなくてはなりません。加えて、製品に寄せられたクレームや回収等の原因も、妥当性確認における大きな材料になりえます。まずはこうした情報収集・整理からはじめてください。
その後は具体的な確認・検証作業が行われます。まずは「管理手段と管理基準(CL)の妥当性の確認」です。とくに管理基準(CL)の妥当性については大きな問題につながる可能性もあるため、十分にチェックを行いましょう。
その後はモニタリング方法や記録方法(記録様式)など、実行時に関わる要素の妥当性について確認を行います。モニタリングと記録はセットで考えるべき項目です。現在の方法が有効であるかを確認し、必要に応じて修正・改善を行いましょう。
狭義の検証の方法
前述のとおり、狭義の検証は前提プログラムを踏まえる必要があります。ここでは、標準作業手順(SOPs)が正しく運用されているか、作業モニター・記録がされているか、さらに、独立した観察・監査の実施、必要に応じたプログラムの改訂がなされているかなど、全体的なチェックが行われます。
前提プログラムの検証の次は、HACCPシステムに関する検証です。先に抑えておきたいのがCCP(重要管理点)。モニタリングや是正記録など各種記録の見直しを、原材料、中間製品のサンプリングや試験検査を独立した視点から検証しましょう。また、モニタリングに用いる測定装置の校正についても忘れてはいけません。
次にシステム全体の検証です。最終製品の試験検査検証や消費者からの苦情・改修原因の解析、HACCPプランにおける最近の変更確認、現場モニタリング作業の適正チェックなど、HACCPシステムを広く見渡しながら、確認と検証を行います。
HACCPの妥当性を確認するタイミング
妥当性の確認は定期的な実施が求められます。具体的なタイミングについて、以下で解説します。
年に1回
まずは定期的な確認作業です。年に1回以上の頻度で妥当性を確認し、必要に応じて改善・改良を加えましょう。
何かしらの変更が加わったとき
食品製造の現場ではさまざまな変更が起こりえます。たとえば、原材料や製造工程・システムなどに変更があった場合は、妥当性に影響する可能性があるため都度の確認が求められます。その他にも、包装最終製品の配送システムや、最終製品を手にする消費者が変わった場合も再度の妥当性確認が必要になります。
HACCPプランの欠陥やその可能性が見つかったとき
HACCPを運用し検証を行った結果、プランに欠陥があると判明した場合には、そもそもの組み立てから改修が必要です。その際には、合わせて妥当性に関する再確認が求められます。なお、欠陥は完全なものだけでなく、その可能性が疑われるような場合でも同様の取り組みが必要です。
同一食品および食品群に新たな危害要因が判明したとき
HACCP構築の際には見つかっていなかった、新たな危害要因が同一食品および食品群で判明した場合には、それぞれの対応と共に、妥当性の確認が必要になります。
妥当性確認と狭義の検証にはモニタリングは欠かせない
妥当性の確認と狭義の検証におけるエビデンスは、モニタリング時の記録です。そのため、適正なモニタリングが行えていないようでは、確認・検証も行えません。
また、そもそもHACCPではモニタリングが非常に重要視されています。確認・検証だけでなく、トラブル時の原因究明など、さまざまな場面でモニタリングの記録は求められます。
一方で、モニタリングおよび記録の作業はHACCP導入による追加業務になるケースも少なくありません。また、作業自体が容易だからとすべてを手作業で行うよう設計されることも多い傾向にあります。しかし、これは作業負担の増加だけでなく、人為的ミスによる記録の精度低下などを招く可能性があることも押さえておきましょう。
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まとめ
妥当性の確認と狭義の検証は、HACCPの有効性を担保し、かつ効果的に機能させるために必要な取り組みです。HACCPシステムおよびプランを構築した後は、今回ご紹介した頻度で適切に実施してください。