2021.12.06.Mon

HACCPの前提事項にもなるSSOPとGMP

HACCPに関連する用語として度々登場する一般衛生管理。それに付随して出てくるのがSSOPやGMPです。今回は、これらの言葉の意味や、HACCPの前提条件について解説します。

HACCP導入前の準備とは?

HACCPは包括的な衛生システムの一部です。つまり、それ単独で機能しているわけではありません。効果的に運用するためには、事前に準備が必要となります。そこで求められるのがHACCPの土台ともなる一般衛生管理です。

なお、一口に一般衛生管理と言っても、そこにはいくつかの種類があります。以下で、代表的なものをご紹介します。

PP・PRP・GMP

PPやPRPはいずれも一般衛生管理を指す言葉です。前述のとおり、HACCPを効果的に機能させる上で必要な前提条件として捉えられています。なお、内容は食品事業者であればお馴染みである7S(清潔・しつけ・整理・整頓・清掃・洗浄・殺菌)の実施です。そのため、ハードルは高くありません。なお、GMP(適正製造規範)についても基本的に同義ですが、一部法的な義務づけがある分野があるといった違いがあります。

OPRPについて

OPRPも、PRPやPPと同様一般衛生管理を指す言葉です。ただし、「CCPに準じた管理が必要」という点が異なるので注意が必要です。つまり、CLはなかったとしても、管理基準については設定をしなくてはなりません。科学的根拠に基づき、その場でモニタリングできる基準を設けることになります。

この目的は、作業環境のハザードを除去することにあります。CCPは食品からハザードを取り除くというものですから、目的が異なります。なお、CCPを設置してもまだ懸念が残るような作業がある場合に、OPRPを設けるというのが一般的です。

SSOPについて

一般衛生管理(PRP)は、目標として掲げるだけでは機能しません。社内で確実に実行されなくては意味がなく、実行が伴わなければHACCPの導入も行えません。そこで重要になるのがSSOPです。

SSOP(衛生標準作業手順書)

SSOP(Sanitation Standard Operating Procedure)とは、衛生標準作業手順書のことです。分かりやすく言うなら、HACCP運用の土台になる一般衛生管理プログラムを適切に管理するための手順書です。衛生管理を行う上で「いつ・どこで・誰が・何を・どうやって」が具体的に決められ、異物混入などの事故を防ぎます。

SSOPの対象項目

  • 施設の保守点検及び衛生管理
    施設設備の衛生状態を良好に維持・管理するための衛生管理で、照明設備や換気扇、網戸などの清掃も含まれる。
  • 設備及び機械器具の保守点検及び衛生管理
    適切な頻度で機械器具類を点検し、良好な状態を保つ。とくに食品に直接接触する機械器具類は、常に衛生が保たれなくてはならない。
  • 食品等の衛生的取り扱い
    原材料納入業者の衛生管理から、検収・製造・保管までの期間、食品を常に衛生的に保つことが求められる。
  • 従事者の衛生教育及び衛生管理
    従事者に衛生管理システムの必要性や意図を理解させるために、衛生教育や訓練を実施し、対象に正しい知識を身に着けてもらう。
  • 従事者の衛生管理
    調理場スタッフの健康管理に留意し、定期検診の受診や日々の健康状態を把握する。
  • そ族・昆虫の防除
    防虫設備の点検や、そ族・昆虫発生時の確実かつ迅速な駆除を実施する。
  • 使用水の衛生管理
    遊離残留塩素濃度の適正維持や、井戸水を利用している場合の定期的な水質調査実施、定期的な受水槽・貯水槽等の点検・清掃を行う。
  • 排水及び廃棄物の衛生管理
    排水が詰まりなくスムーズに流れているかや、排水方向に誤りがないかの確認をする。
  • 製品等の試験検査に用いる機械器具の保守点検
    試験検査の信頼性保証のため、日々点検を行い適切な管理を維持する。
  • 製品の回収方法
    不良品が万が一出荷されてしまった場合に備え、迅速な回収手順を定める。

なお、上記のほかに交差汚染防止や手指の消毒・殺菌、飛沫・ドリップなどの食品汚染防止、トイレの清掃維持といったものも対象項目に挙げられます。

SSOPの文書化

SSOPの手順は文書化が求められます。これは、作業者が内容を現場ですぐに確認し、作業を確実に行えるようにするためです。

また、必ずしも文書だけで示される必要はありません。目的のことを踏まえるのであれば、より理解を促せるように図や表、イラストなどを使うのが推奨されます。なお、この際は「誰であっても同じ解釈になる」という点が重要です。見る人によって捉え方が異なる・誤解が生まれるような表記は避けましょう。

なお、SSOPは手順書ではありますが、その意図や必要性を作業者全員に理解してもらうことも大切です。理解が深まっていない状態でSSOPの内容を実行してもらっても、スタッフに不満が出るかもしれません。こうした状況では、一般衛生管理がうまく運用できなくなります。

理解を深めるためには、作業者全員へ情報共有をするだけでなく、SSOPの作成時点から作業者にも参加してもらい、リーダーがまとめながら内容を詰めていくのがおすすめです。

点検・管理の記録は確実に

SSOPの手順に従い一般的衛生管理プログラムを実施しているものの、意外に忘れられがちなのが点検・管理です。たとえば冷蔵庫の温度点検などはその代表例。正確な記録を残すことはHACCPでも必要になる行動なので、前提条件の時点でしっかりとスタッフ一人ひとりが習慣化できるよう努めましょう。もしくは、自動温度管理システムなどを導入し、オートメーション化するという方法もおすすめです。

GMP(適正製造規範)

GMPとは、適正製造規範を表します。原料入荷から製造・出荷に至るまでの過程で、製品が安全かつ一定の品質に保たれるよう定めたシステムであり、1960年代からアメリカでは食品や医薬品の製造事業者に対し、GMP取り入れを法的に義務付けしている州もあるほどです。なお、日本では医薬品製造においてGMPの義務づけが行われています。一方、食品関しては法的な義務づけはありません。

ただし、現在は食品事業者に対してHACCPが義務化されているため、その普及に従い、GMPが採用されることも増えてきました。

GMPの対象項目

  • 敷地管理
  • 施設・設備の設計、施工、配置及び製造ライン
  • 製造・保管区域の仕様・ユーティリティの管理
  • 装置・器具
  • 保守
  • 従業員用の施設
  • 汚染リスクの特定・管理
  • 物理的、化学的、生物学的製品汚染リスク
  • 交差汚染
  • 隔離と交差汚染
  • 在庫の管理
  • 整理整頓、清掃、衛生
  • 水や氷の管理
  • 廃棄物の管理
  • 有害生物防除
  • 輸送
  • 従業員等の衛生及び健康管理
  • 教育・訓練

まとめ

HACCPの7原則12手順を見てみると、はじめに「HACCPチームの編成」が挙げられています。そこから製品説明書やフローダイアグラムの作成の手順が行われ、原則1~2のハザード分析・CCP設定が行われるのですが、ここからも読み取れるように、一般衛生管理という前提条件については触れられていません。

つまり、HACCPの導入は前段階での準備が確実に行われていることが前提になっています。そのため、まずは一般衛生管理の見直しからスタートするのが大切。なお、今回詳しくお伝えしたSSOPやGMPを採り入れることで、スムーズな前提条件の整備が行えます。ぜひ参考にしてください。