2021.12.02.Thu

OL(運用限界)とCL(許容限界)の違い

食品衛生管理を行う上では、適切なOL(運用限界)とCL(許容限界)の設定が求められます。HACCPに取り組む場合にも必要となるポイントなので、必ず抑えておきましょう。こちらでは、OLとCLの概要や、その違いについて解説します。

食品衛生管理におけるOLとCL

まずは基本的な知識からおさらいをしていきます。

HACCPの文字のなかでも表されているCCP。これは、Critical Control Pointの略であり、日本語では「重要管理点」と訳されます。CCPは食品からリスクを取り除く上で特に重要となるチェックポイントであり、食品衛生管理を行う上で避けては通れません。

このCCPをいかに管理していくかという点において、OLとCLは非常に重要です。両者の値を意識しながら運用を進めることが、適切なCCP管理につながります。

まずはCLについて。これは、「この値を超えた場合、製品の安全性が担保されず、リスクが高い」というラインを意味します。たとえば、「冷凍庫の温度は-15℃以下」というCLを設けていたとします。しかしある日、故障によって冷凍庫の温度が3℃まで上昇し、その状況が12時間続いていたとしましょう。冷凍保存されていた食材は解凍されてしまうほか、安全性も損なわれた状態です。その食材を使って食品を製造すると、何らかの事故につながる可能性もあります。そのため、この状態は明らかに「CLを超えている」といえるでしょう。

一方、OLは「この値を超えたら運用上問題があるため、機械の調整を行い正常に戻すべき」といった意味になります。先ほどの冷凍庫の例で考えてみましょう。CLの値は「-15℃以下」ですが、OLの値については「-18℃以下」と設定がされていたとします。この場合、測定時に-17℃などの値が見られれば、冷凍庫の温度を調節したり、故障を疑ったりという対応が行えます。ただし、CLの値は超えていないため、食品の安全性は保たれている、と考えられます。

HACCPにおけるCL

上記でも解説したとおり、CLとOLはHACCPを踏まえ食品衛生管理を行う際にも重要です。実際に、HACCPの手順8(原則3)には、「基準管理(CL)の設定」(※)が設けられています。

ただし、HACCPの手順書などにはCLについての記載は多いものの、OLについての解説が薄いものも少なくありません。実際にCLは食品衛生管理において最重要な値です。しかし、OLの設定も同様に重要といえるでしょう。CLとOL、それぞれについて正しく知ることが大切です。

※HACCPでのCLは基準管理と訳されていますが、これは総合衛生管理製造過程で定められた名称の名残であると考えられています。今回の記事では語弊を避けるために、より原文に即した「許容限界」として表記を行います。

OLとCLの違いが重要な理由

CLの値を決めるためには、以下のような条件が必要とされています。

  1. 危害要因を確実に予防・除去できると確認していること
  2. 可能な限りリアルタイムで判断がつく値であること

これはつまり、CL以下の値であれば、確実に危害要因が許容範囲内に収まると確認できる必要を示しています。また、その値はリアルタイムに確認できることが前提です。

具体的な例で見ていきましょう。たとえば加熱調理の場合は、規定に従って加熱を行い、調理直後に芯温等を測るといったプロセスが取られます。ここでCLの値を超えていなければ、安全な食品として出荷や提供が行えます。

しかしここで注意しなくてはいけないのが、上記で書かれる「規定」の値、つまりCLの値です。CLで温度等の数値を定める際には、必ず化学的根拠による立証が求められます。すでに検証が済んでおり、結果が公表されているようなものについては、そこを拠り所とすることも可能です。ただし場合によっては、専門家への相談や、専門機関での実験も必要になるでしょう。

加熱調理の例に戻します。はじめて扱う食材の場合には、CLの値が未確定な状態です。そのため、まずは食材の安全性に関する資料を集めなくてはなりません。加熱温度・時間によって危害要因がどう低減するのかを明確に示す文献等がない場合は、実験も必要になります。その上で、「この値であれば確実に安全」というラインを見つけ、CLをHACCP記録として保存する必要があります。

なお、資料を参照する際、政府が定めた基準数値を見かけることもあるでしょう。しかしこれは「規制限界」と呼ばれるものであり、必ずしも食品の安全性を確率するわけではありません。もちろん、制度の遵守は求められますが、それに従えばCLの値が決まるという性格のものではないので注意しましょう。

このように、CLの数値決定というのは決して簡単なものではありません。確実性については担保すべきではありますが、常に数値を疑いながら定期的に見直すといった必要があります。とくに、製造過程の上流・下流に何らかの変更があった場合には、再度の検証が必要になることもあります。

CLより厳しいOLの設定で安全性を担保

前述のとおり、CLを確定するのは容易ではありません。かつ、決定した値は非常にシビアなものです。もしもCLを超えてしまった製品については、出荷や販売自体ができない状況になります。また、出荷後にCLを超えたことが判明すると、回収対応なども必要になります。事業者にとって、これは大きな打撃となるでしょう。

OLは、こうした状況を回避するのにも役立つ指標です。CLの逸脱が起こる手前にOLを設けられれば、より安全性を担保できます。実際に多くの食品事業者は、OLを設定して運営を行っています。

具体例で見ていきましょう。たとえばCLで「75℃で1分以上の加熱」が求められている食材があったとします。この場合、「74℃で59秒の加熱」では安全性が確保できません。たった1℃・1秒の違いであったとしても、大きな問題になり得るのです。

一方、上記の食材に「80℃で1分15秒以上の加熱」というOLを設けたとしましょう。そこでもしも「79℃で1分14秒の加熱」が行われたとしても、食品衛生上の問題にはなりません。このように、OLの設定は、余裕を持った管理につながるのです。

モニタリングにおいてもOLは重要

モニタリングの目的は、CCPがCLの範囲であるかを管理することにあります。この際にも、OLの設置は重要です。

まずはOLの値でモニタリングを行い、逸脱があった場合にはCLの逸脱がないかを確認します。もしも問題がなければ出荷を行っても構いません。併せて、OLを逸脱しないよう改善を行います。ただし、CLを逸脱しているようなら、規定に沿った対処が求められます。

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まとめ

HACCPを正しく運用するためには、CLとOLの違いを明確に認識することが大切です。それぞれの値を適切に定められれば、より安全性の高い食品衛生管理が実現できるでしょう。