2024.11.01.Fri

WBGTを活用した食品製造現場での熱中症対策

気温や湿度が高いと心配になるのが熱中症です。食品製造現場は熱中症の発症リスクが非常に高い環境であるため、特に注意しなければなりません。熱中症対策を実施するなら、「WBGT」という指標を活用しましょう。この記事ではWBGTとは何かを解説し、WBGTを活用した熱中症の対策方法を紹介します。

WBGTとは?分かりやすく解説

WBGTとは「Wet Bulb Globe Temperature(湿球黒球温度)」の略であり、暑さを表す指数のことです。WBGTは気温・湿度・輻射熱(ふくしゃねつ、遠赤外線などの熱線により伝わる熱のこと)・風の4つの要素をもとに算出します。WBGT値が高いほど、熱中症のリスクも高くなります。

熱中症とは、体温の異常な上昇により臓器や体の機能に障害が現れる状態のことです。軽度であれば手足のしびれ、立ちくらみやめまいなどの症状が見られ、やがて吐き気や頭痛、倦怠感が生じます。重症の場合、意識を失って命に危険が迫ることも少なくありません。熱中症を引き起こす体温の上昇は、気温のほか湿度も大きく影響します。

汗をかくと体温が下がるのは、汗が蒸発する際の気化熱により体から熱が奪われるためです。空気が乾燥していれば汗の蒸発が促され、体温は下がりやすくなります。反対に、湿度が高い環境では汗が蒸発しにくくなり、体温調整が難しくなるでしょう。さらに、熱を発生するものが近くにある場合や風が弱い場合も、体温が上がりやすくなります。

したがって、熱中症の危険度は気温だけではなく、体温調整に関わる湿度などの要素から総合的に判断する必要があります。WBGTは気温や湿度など複数の要素をもとに指数を求めるため、熱中症のリスク判定に有効です。

なお、熱中症のリスクは衣服にも左右されます。WBGT値を求める際、衣服の素材やフードの有無で補正値を加える場合もあります。

WBGTを測定するには、WBGT計測器などの専用の機器が必要です。WBGTを計測して熱中症の危険度を正しく把握し、リスクに応じた予防策を講じましょう。

食品製造におけるWBGT活用法

WBGTは、食品製造現場での熱中症対策に役立ちます。食品製造現場でWBGTを活用する意義を確認しましょう。

食品製造現場でWBGTを計測する重要性

食品製造現場は熱中症のリスクがかなり高いため、WBGTを活用して熱中症対策に取り組むことは、従業員の健康を守る上で非常に大切です。

食品製造現場の気温(室温)は普段から測定し、記録していることでしょう。しかし前述の通り、気温だけでは熱中症の危険性を判断できません。特に食品製造現場は、食材を加熱する際に周囲の気温が上昇したり、食材を煮込む際に水蒸気が発生したりと、高温多湿になりやすい環境です。

さらに、食品製造現場では食品衛生の観点から、熱がこもりやすい作業着やマスクを着用せざるを得ません。現場によっては激しく動き回り、体に負担がかかることもあるでしょう。したがって、食品製造現場は熱中症の発症リスクが高いといえます。

WBGTを計測し、現場の熱中症リスクを正しく把握して的確な対策を実施すると、従業員の健康を守れます。従業員が熱中症の心配なく働ける環境に改善できれば、製造現場の生産性の向上も期待できるでしょう。

製造現場のWBGTを把握しよう

同じ工場内でも、場所や時間によって熱中症の危険度は異なります。食品を煮込んでいる鍋の近くであれば気温と湿度は高くなります。しかし、鍋から離れるほどに気温と湿度は低下するでしょう。また、始業直後と作業中でもWBGTに差が生じることが予測されます。熱中症対策を効果的に行うなら、値が高くなると考えられる時間帯にWBGTを測定しましょう。

製造現場のWBGTをくまなく計測し、WBGT値が高い場所から優先的に措置を講じると、熱中症対策を効率よく進められます。作業場所ごとにWBGT値を測定する場合は、ハンディタイプのWBGT計測器があると便利です。

食品製造現場での熱中症を予防するには

 

食品製造現場での熱中症対策は、環境・休憩と水分補給・健康管理の3点に着目して進めましょう。

環境の整備

製造現場でWBGTが高い場所があれば、環境を整備して熱中症リスクの低減に努めましょう。

一般的な製造現場では、送風により体を冷やし空気を循環させる設備がよく利用されます。しかし食品製造現場で使用すると、空気が細菌やウイルスで汚染されていた場合に、製造している食品にまで悪影響が及ぶ恐れがあります。送風機などは場所を選んで使用してください。

送風機を利用できない場所では、熱がこもりやすい服装を避け、通気性・透湿性が高い作業着を着用しましょう。また、服の中に冷水を循環させて体を冷やす水冷服や、保冷剤を装着できるアイスベストなどの利用もおすすめです。このような設備はコストがかかるため、WBGTが高い場所から優先的に導入すると効率よく熱中症対策を行えます。

適切な休憩と水分補給

作業中のこまめな休憩と水分補給も、熱中症の予防に欠かせません。製造現場の近くに冷房設備が整った休憩場所を用意し、十分な休憩時間を確保して、熱中症リスクが高い場所での長時間の作業を避けましょう。

作業時間の設定でもWBGTが活用できます。製造現場の中でもWBGTが高い場所は頻繁に人員を交代させるなど、作業時間が長くならないように配慮しましょう。また、入職直後や長期休暇明けの時期は体が暑さに慣れておらず、熱中症にかかりやすくなります。暑さに慣れるまでは休憩時間を長めに設けて、徐々に体を順応させることが大切です。

汗をかくと体から水分と塩分が失われます。これらを十分に補給できなければ、体内の水分と塩分のバランスが崩れて、体が正常に機能しなくなるでしょう。水分と塩分が不足した脱水状態は、本人が気付かないうちに進行している可能性があります。したがって、管理者は従業員に対し、こまめに水分と塩分を補給するように呼びかけましょう。

休憩場所に、従業員が自由に利用できる氷や飲料水、スポーツドリンク、塩あめなどを用意するのも有効です。

健康管理

従業員個人の健康状態も、熱中症のかかりやすさに影響します。

糖尿病や高血圧症、心疾患、腎不全、精神・神経疾患、広範囲の皮膚疾患などを持つ人は、疾患の性質や内服薬の影響により熱中症のリスクが高まります。健康診断の結果に基づき、産業医や主治医の意見を踏まえた上で、必要に応じて仕事内容や人員配置を変更するなどの措置を講じましょう。

また健康な人でも、朝食の欠食、睡眠不足、前日の多量飲酒、風邪や下痢などの体調不良があると熱中症にかかりやすくなります。熱中症を防ぐ日常生活の過ごし方について従業員に周知するとともに、作業前には従業員の健康状態を確認するようにしてください。

作業中は、管理者はもちろん、従業員同士もお互いの健康状態に気を配りましょう。体調に異変を感じた場合は、無理せず周囲の従業員や管理者に申告するよう指導することも大切です。

まとめ

暑さの指数であるWBGTを活用すると、熱中症対策を効率よく進められます。特に食品製造現場は、高温多湿な環境、作業着やマスクの着用などにより、熱中症のリスクが高まりやすい場所といえます。現場のWBGTを把握して熱中症対策を実施し、従業員の健康を守りましょう。

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