ISO9001-HACCPとは?
HACCPは規格や認定・認証ではありません。ガイドライン等に従い、正しく導入を行えば、HACCPに沿った衛生管理の実施ができていると見なされます。一方で、民間団体等による「HACCPの導入につながる規格や認定・認証」というのはいくつも見受けられます。HACCPを含む食品衛生管理のスペシャリストによる審査やアドバイスが受けられるという点が、こうした制度のメリットといえます。 今回は、そうした規格や認定・認証のなかから、ISO9001-HACCPについて詳しく取り上げてご紹介します。HACCPの導入と合わせて、組織の品質マネジメントのレベルアップを図りたいという企業様は、ぜひ参考にご覧ください。
ISO9001-HACCPの概要
まずは、ISO9001-HACCPの概要から見ていきましょう。
ISO9001-HACCPとは、品質マネジメントシステムであるISO9001とHACCPを組み合わせた、JQA(一般財団法人日本品質保証機構)独自の規格のことです。食品に関連する幅広い業種で適用が可能となっており、具体的には以下のような業種での採用が推奨されています。
- 農業・水産業・畜産業
- 食品製造・加工業
- 容器・包装資材の製造業
- レストランなどの外食産業 など
ISO9001-HACCPの取得は、さまざまな効果をもたらします。HACCPの導入効果でもある「食品の安全提供に関するリスク低減」はもちろん、組織の効率的なマネジメントの強化にもつながります。たとえば「業務効率の改善や組織体制の強化」や「仕事の見える化による業務継承の円滑化」などの実現が期待できます。
同時に、継続的な改善を行うことによる企業価値の向上や、コンプライアンスの推進にもつながるでしょう。また、ISO9001と同等の規格となるため、海外企業との取引要件達成も大いに期待できるでしょう。
ISO規格の基礎知識
ISOとは、International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称であり、この団体によって策定された規格のことをISOと呼びます。ただしその内容は、世界中で同一の品質・レベルのものであることが約束となっているため、国際的な基準として広まっているのです。
ISO9001-HACCP だけではなく、ISOには実にさまざまな種類があることをご存じでしょうか?たとえば、階段などで見かける非常口のマークが挙げられます。これはISO7010という規格で定められています。そのため、世界のどこに行ったとしても、非常口にはお馴染みのあのマークが掲示されているのです。
その他にも、カードのサイズはISO/IEC7810で決まっています。海外製の財布やカードケースであってもカードがぴったりと収まるのは、この規格が定められているおかげといえるでしょう。
そして、このようなモノに対する規格以外にも、組織の品質活動・環境活動の管理システムに対するISO規格が存在しています。今回ご紹介しているISO 9001(品質マネジメントシステム)も、そのうちのひとつなのです。
マネジメント規格における要求事項
ISOマネジメントシステム規格には、「要求事項」という基準が定められています。要求事項は各規格によって異なります。今回ご紹介しているISO9001-HACCPの場合は「消費者に安全な食品を提供することを目的とした食品安全マネジメントシステムの確立」です。この事項を満たすことで、認証証明書(登録証)が発行されます。
また、審査を行えるのはISOによって定められた認証機関のみとなっています。日本には、約50社の認証機関が存在しています。なお、これらの機関は日本適合性認定協会(JAB)と情報マネジメントシステム認定センター(ISMS-AC)から認定を得て、認証を行う仕組みとなっています。
ISO9001-HACCPを策定したJQAも、これらの機関から認定を得たことで、認証が行えるようになっているのです。
ISO9001-HACCPの構成
ISOの基礎が分かったところで、次にISO9001-HACCPの詳しい内容を見ていきましょう。ISO9001-HACCPは名称のとおり、ISO9001とHACCPによって構成されています。そのため、認証を受けるためには、両規格への対応が必要となります。
ISO9001
ISO9001の主な目的は、『よりよい製品やサービスを提供するための仕組みを評価するガイドライン』の制定です。製品・サービスの品質を継続的に改善していくために、PDCAサイクルに沿った継続的な改善が行われます。こうした取り組みを続けていくことで、顧客のニーズに応え、顧客満足度を高めることが最終目標として置かれます。
HACCP
HACCPの要求事項については、さまざまな場所で公表されている「7原則12手順」がそのまま当てはまります。
- 手順1 HACCPチームの編成
- 手順2 製品の記述
- 手順3 意図する用途の明確化
- 手順4 工程図の作成
- 手順5 工程図の現場確認
- 手順6=原則1 危害要因分析の実施
- 手順7=原則2 CCP(重要管理点)の決定
- 手順8=原則3 各CCPに対する管理基準の決定
- 手順9=原則4 モニタリング手法の確立
- 手順10=原則5 是正措置の確立
- 手順11=原則6 検証手順の確立
- 手順12=原則7 証拠書類や記録保管体制の確立
ISO9001-HACCP認証取得の流れ
続いて、ISO9001-HACCPの認証取得の流れについて見ていきましょう。まずは、システム構成・運用に関するPDCAの作成・実施からスタートします。
PLAN | 認証取得の決定・推進体制の確立後、認証取得までの計画をつくり、適用範囲や方針を決定します。さらに、方針に基づく目標を設定したり、手順・規定類を作成したりといった作業を実施します。併せて、組織の要員への教育も行います。 | ||
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DO | 手順・規定に基づき、マネジメントシステムを実際に運用開始します。 | ||
CHECK | 活動内容の記録を基にした分析や評価を行います。また、内部監査と是正処置も合わせて実施します。 | ||
ACTION | マネジメントレビューを実施し、マネジメントシステムの見直しを行います。 |
上記の準備が完了したら、その後ファーストステージ審査が行われます。この時点では、マネジメントシステムの構築状況が確認されたり、後のセカンドステージ審査のための情報収集が行われたりします。
その後、約1ヵ月程度(最長6ヵ月)の機関を設けて、担当審査員が次に進めると判断した場合は、セカンドステージ審査が行われます。なお、この段階までには必ず「内部審査」と「マネジメントレビュー」を終えていなくてはなりません。
セカンドステージ審査では、適用範囲すべてを対象にしたマネジメントシステムの実施状況評価が行われ、規格への適合性が審査されます。この審査をクリアすることによって、登録証が発行されるというのが一連の流れとなっています。
なお、取得した1年後には第1回定期審査が、その1年後には第2回定期審査が、そのさらに1年後には更新審査が行われます。一度構築して終わりではなく、長期にわたって運用がなされているかがチェックされるため、システムの維持が重要になります。
まとめ
HACCPを導入するだけであれば、ISO9001-HACCPの取得は不要です。しかし、より高い水準の品質管理を行っていくのであれば、ISO9001取得は大きなプラスになります。ISO9001-HACCPであれば、HACCPも併せて導入できるのがメリットです。組織として、より高度なマネジメントを実現しようとお考えの方は、ぜひISO9001-HACCPの取得を検討してみましょう。