HACCP必要書類一覧まとめ
HACCPにはいくつかの必要書類があります。今回は、これからHACCP導入をお考えの方に向けて、それぞれの書類の概要をまとめました。
基本となる書類4つ
HACCPの基本になる書類は、一般衛生管理計画書と重要管理計画書のふたつです。まとめて「衛生管理計画の策定」とも言われます。また、それぞれの実施記録を記載する書類も用意しましょう。
一般衛生管理計画書
重要管理項目としては管理を行わない、従来から実施している一般衛生管理に関する呼応目をまとめた書類です。HACCPは一般衛生管理が適切に行われていてこそ機能するため、事業に合った内容のものを作らなくてはなりません。なお、一般衛生の項目には以下のようなものがあります。
● 原材料の受入の確認
● 冷蔵・冷凍庫の温度の確認
● 調理加工場の温度および湿度の確認
● 交差汚染・二次感染の防止
● 器具等の洗浄・消毒・殺菌
● トイレの洗浄・消毒
● 従業員の健康管理・衛生的作業着の着用など
● 衛生的な手洗いの実施
見ると分かる通り、いずれも食品事業者であれば普段から行っている衛生管理の内容です。こうした実施項目の内容を明文化し、可視化することがHACCPでは重要になります。
一般衛生管理実施記録
衛生管理計画の実施に関する記録を行います。業務日ごとに、対象の項目が実施できていたかどうかを記載します。具体的には、「○×」や「良・否」などの選択肢を設けて、丸で囲うといったやり方があります。
なお、実施ができなかった場合や、二者択一では表せない事情がある場合に備え、備考欄や特記事項欄を用意しておくのも重要です。単に実施ができなかったことよりも、その状況等に関する情報を把握することが、今後の改善に向けては重要です。たとえば、「繁忙によって記録ができなかった」などの状況があるのなら、記録の一部をIoTソリューションなどを使いオートメーション化するなどの対策が考えられます。
重要管理計画書
HACCPは食品製造・調理に関わる一連の流れの工程管理です。なかでも、調理や製造時の管理に関わるのが重要管理計画書です。ポイントとなるのは、取り扱う食材の特性や調理方法に合わせ、適切なチェック項目を設けることにあります。
具体的には、製品をすべて一覧化した後で分類を行います。分類の方法はいくつかありますが、加熱・冷却・保存など、温度帯ごとに分けるのがよくあるケースです。その後、グループごとにチェック方法を決めていきます。なお、実行が困難である、もしくは簡便すぎるといった極端な方法は意味をなしません。あくまで実行可能なチェックの方法を定めることが重要であり、それによって食品衛生レベルが引き上げられることが大切です。
重要管理計画実施記録
一般衛生管理と重要管理計画の実施記録は同様の書類にまとめてしまって構いません。ただし、とくに注意すべき重要管理項目がある場合などは、詳細が記載できる別紙を用意しても大丈夫です。
なお、重要管理の項目については実施したかしていないかだけでなく、食品衛生に関わることであれば些細な内容であっても記載をしましょう。「食品事故にまでは至らなかったが、その手前であった」といった状況は、今後避けなくてはなりません。記録はエビデンスとしてだけでなく、今後の改善に必要な材料集めでもあります。
7原則12手順の実施で作成する文書
HACCPにおける7原則12手順では、いくつかの文書作成が必要になります。以下で、代表的な6つをご紹介します。
製品説明書
製品説明書は、製品に関する情報を整理し、まとめたものです。特定の様式はありませんが、具体的には以下のような項目を記載します。
● 製品の名称、種類
● 原材料の名称、種類
● 添加物の名称、使用量
● 容器包装の材質、形態
● 製品の特性、規格
● 保存方法
● 消費期限、賞味期限
● 喫食や販売対象者
● 喫食や利用の方法
上記が具体的にまとまっていると、その後の危害要因分析も行いやすくなるため、個別にしっかりとまとめあげましょう。なお、原材料や容器包装については、取引先から仕様書などを入手するのがおすすめです。
製造工程一覧図
原材料の受入から食品の保管、製造加工、出荷に至るまで、製造に関わる一連の流れを原材料やグループごとにまとめた表のことを、製造工程一覧図と呼びます。フローダイアグラムと呼ばれることもあります。
記載する内容は工程だけでなく、それぞれのタイミングにおける区域についても書き出します。具体的には、「汚染区域(検収場、原材料の保管場、下処理場)」「準清浄区域(調理場)」「清浄区域(放冷・調製場、製品の保管場)」の3つが挙げられます。
そのほか、備考欄を用意して温度や時間なども書き出しておくと、その後の危害要因分析が行いやすくなります。
危害要因リスト
製造工程一覧図や製品説明書を基に、「食品の安全を脅かす可能性がある」と考えられる要因を洗い出し、まとめたものが危害要因リストです。食肉や魚を例にしてみましょう。これらの食品は、流通や搬入の段階ですでに食中毒菌に汚染されている可能性もあります。保管時には、野菜との交差汚染も考えられるでしょう。そのほか、不十分な加熱だと食中毒菌を取り除けない場合があります。
このように、各工程で起こり得る危害要因についてチェックを行い、すべてを洗い出します。その後、各危害要因を除去する方法として、特に重要な工程を重要管理点として定め記載しましょう。
管理基準とモニタリング方法
重要管理点を適切に管理するために設ける基準のことを「管理基準」と呼びます。たとえば、加熱処理は食中毒菌を取り除くのに有効な手段ではありますが、完全な滅菌のためには適切な温度・時間による加熱処理が求められます。この温度・時間について明記したものが、管理基準になります。
また、管理基準を定めたとしても、それが現場で正しく運用されているかどうかモニタリングしなくてはなりません。この手法をまとめたものがモニタリング方法です。以上を一つの文書にまとめましょう。
検証プラン実施結果対策書
危害要因は施設の要件変更や気候変動などにより都度変わります。また、人員が変更になれば現場の状況も大きく変わるでしょう。このように、衛生管理の状況は常に変化と共にあり、適宜アジャストすることが大切です。そこで求められるのが検証です。継続的な衛生管理水準向上のために、適切な検証プランを作成・実施しましょう。また、実施の結果や具体的な対策については、検証プラン実施結果対策書にまとめてください。
モニタリング記録
モニタリング記録は、現場のオペレーションが管理基準を逸脱していないかを確認・記録した書類です。継続的な衛生管理の改善を行うために作られます。また、HACCPではこの記録の保管方法についても設ける必要があるため、記録方法と保管方法の設定を行います。
温度記録の自動化ならACALA
前述したとおり、HACCPには多くの記録が必要になります。しかし、その分だけ従業員の手間が増えてしまう可能性も考えられます。こうした際には、当社が提供する温度記録自動化を実現するACALAシリーズがおすすめです。
自動温度管理・記録システムはACALA MESH
調理加工場や冷蔵・冷凍庫の管理・記録には、当社のACALA MESHをご活用ください。温度・湿度を定期的かつ適切なタイミングで自動測定し記録します。計測されたデータは専用のプラットフォームで管理が可能。設置も簡単で、初期費用もかからないため、IoTソリューションに詳しくないという方でもすぐにお使いいただけます。また、重要管理点(CCP)に設定されることが多い、チラー水の水温、ボイル煮沸槽の湯温、フライヤーの油温などの連続モニタリングも可能です。
食材の中心温度(芯温)計測はACALA FT
危害要因除去の観点からすると、食材の中心温度測定・記録は非常に重要です。しかし、作業中の記録はペンの持ち替えなどがあり、非効率的といわざるを得ません。そこでご活用いただきたいのが芯温測定・自動記録システム「ACALA FT」です。ハンディタイプの芯温計にNFC通信機能を搭載し、無線での芯温測定が行えます。温度データはクラウドサーバーに蓄積され、管理も容易です。また、原材料の受入時における温度チェックにも利用することも可能です。
まとめ
HACCPに関する書類は種類や分量が多く見えるものの、いずれも様式としてはシンプルなものばかりです。はじめは手間がかかりますが、しっかりと取り組むことで自社の食品衛生レベルを向上させてくれます。
なお、業界ごとに発行されている一部の手引書には、各書類のテンプレートが付録されています。そのほか、自治体などがテンプレートを配布しているケースも少なくありません。これらを基に、自社に合わせた様式を完成させていくこともおすすめです。
また、一度作成した書類は今後もアップデートが必要になります。定期的に見直しを行いながら、適切な状態を保ちましょう。