2022.06.15.Wed

HACCPにおける内部・外部監査のポイント

HACCPは社内で構築するシステムであり、信用性について現場からの申告などに頼らざるを得ない部分があります。しかし、ここで誤りが発生してしまうと、HACCPの目的が達成できないだけでなく、重大な食品事故に直結する可能性もあるでしょう。そこで今回は、HACCPにおける監査のポイントについてまとめます。前半はHACCP構築時、後半はHACCP構築後の監査についてご紹介します。

HACCP構築時の監査

HACCPでは、構築時にしっかりと自社で監査が行えるかが重要となります。とくにHACCPは順序が決まっており、どこかの工程でズレや認識の違いがあるとさかのぼって対策をしなくてはなりません。こうした事態を防ぐために、以下で、項目ごとのポイントを見ていきましょう。

(手順3)意図する用途の特定

消費者が製品をどのように使用するのか――つまり、どのように食べるのかを考え、確認する工程です。たとえば、「電子レンジで温めてから食べる」といったものも、事業者側の「意図する用途」に当てはまります。一方、「温めずにそのまま食べる」は「意図しない用途」になるでしょう。

ここでの監査のポイントは、想定する消費者を適切にグループ分けできているかどうかです。たとえば幼児と成人とでは、製品の使用時に注意すべきポイントは大きく異なるでしょう。老人の場合も同じです。属性ごとに適切なグルーピングが行われており、それぞれに対応する考慮がなされているかを確認します。

 

(手順6・原則1)危害要因の分析

危害要因分析はその後の工程における根拠となる部分であり、HACCPの肝でもあります。その分、監査にも力が入るポイントと言えるでしょう。

確認時に目を光らせて欲しいのは、区分された工程ごとに危害要因分析が行われているかどうかです。ひとまとめの状態で実施してしまうと、結果としてどの作業に危害が潜んでいるのかが特定できません。また、トラブル発生時の原因究明も難しくなります。加えて、危害要因分析には専門性が求められます。適任者によって分析がなされたのかどうかも、チェックポイントのひとつです。

 

(手順7・原則2)重要管理点(CCP)の設定

危害分析に次いで重要とも考えられる重要管理点の設定。ここでしっかりと危害要因の除去・低減に関わる工程を決定しなくては、その後工程での安全性を確立できます。

ただし、すべての危害が重要管理点によって管理されるとは限りません。たとえば一般的衛生管理プログラムを見直し、対策を強化すれば、重要管理点の設定が不要となる危害も考えられます。基本に立ち返り、不用意に重要管理点を増やさないよう注意しましょう。

 

(手順8・原則3)管理基準(許容限界)の設定

重要管理点を管理するには、適切な基準を設ける必要があります。たとえば温度や時間、速度などの値は、その代表例です。

ただい、ここで求められるのが「科学的根拠」です。単に「火を通せばいい」「冷蔵庫で冷やして保管すればいい」では不十分です。予測される危害の原因となる細菌がどれくらいの温度で死滅するのかなどを正しく調査し、基準として落とし込む必要があります。

(手順9・原則4)モニタリング方法の設定

重要管理点をどのようにモニタリングするかを決定する工程です。ここで重要なのが頻度です。たとえば温度管理の場合は、連続性が重要になります。頻度が少ないと、計測毎の間隔が空きすぎてしまい、トラブル発生時、どの時間・工程に問題があったかを特定できません。また、モニタリングを実行するスタッフに対して、異常時の対応方法が明示され、かつ適切な教育の機会を与えているかなどを監査で確認しましょう。

 

(手順10・原則5)管理基準逸脱時の改善措置の設定

管理基準を逸脱した際にどのような改善措置を講じるかを決める工程です。監査をする際には、「工程の管理状態を元へと戻すための処置」と「逸脱中に製造された製品に対する処置」の両方が適切に設定されているかを確認します。また、是正処置自体の内容についてもしっかりと目を光らせてください。改善措置がうまく機能しないと、同じようなトラブルが今後も発生し続けることになります。

 

(手順11・原則6)HACCPシステムの検証手順の確立

HACCP構築もいよいよ終盤に差し掛かるタイミングです。ここでは、設定したHACCPが正しく現場で実行されているかについて、記録等を用いながら管理者が検証を行います。また、モニタリング機器の校正についてもチェックの対象となります。

監査時には、複数の測定機器などを使い、クロスチェック等を行うのがおすすめです。また加熱工程の検証においては、微生物検査などを通して、微生物の完全な死滅を確認するといった、専門的な検証も行いましょう。

 

(手順12・原則7)文書化及び記録保持

文書の作成と記録・保持の仕組み作りに関わる工程です。チェックポイントとなるのは、細かな項目です。それぞれ抜けや漏れがなく、適切に保管されているか、保存期間が決められているかなどを確認します。

内部監査と外部監査

 

次に、HACCP構築後の監査について見ていきましょう。ここでは、内部監査と外部監査の2種類について見ていきます。後者はともかく、前者の内部監査については自社で取り組む必要があるためポイントを踏まえた実施が望まれます。また、外部監査を合わせて行えばダブルチェックとなり、より確実性の高い監査体制を構築できます。

内部監査のポイント

内部監査を行う前段階として、日常チェックと特別チェックの実施が求められます。前者は日常の作業のなかで、製造記録といったデータを用いて異常を確認します。定期的なチェックとなるため流れ作業的になりがちですが、確認されることが分かっていれば、現場の緊張感を持続できます。合わせて、不定期なタイミングで行うのが特別チェックです。たとえば食品製造の工程に変更があった場合には、都度危害分析の見直しが必要になります。

内部監査は、上記のチェックが行われていることが前提です。その上で、臨時内部監査と定期内部監査が行われる、と覚えておきましょう。

外部監査のポイント

監査を外部に依頼した際には、基本的に事業者側で注意すべき点はありません。強いて挙げるなら、外部調査員がポイントを踏まえた監査を行えているかを確認することです。具体的には、以下のような目線で監査を行っているかをチェックしてみてください。

  • チェックリストを用いた現場確認
  • 日常管理、特別管理の実施確認
  • HACCP管理における作業標準書、フローダイアグラム、配置図が完成しており、かつ改訂されているかの確認
  • 危害分析と重要管理点作業が作業標準通りかの確認
  • 自社の自走改善ができるようなアドバイスをくれるか

まとめ

HACCPが正しく運用されていることは、食品の安全性を高めることにつながります。その確実な実施のためには、やはり別の視点を持った監査が重要です。内部監査はもちろん、外部監査も合わせてチェックをしていきましょう。

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