2023.08.07.Mon

食品製造業の食品ロス削減に向けた対策

食品製造業にとって、食品ロスは製品廃棄であり、利益圧迫の原因とも言えます。一方、食品ロスは世界的な課題としても重要度は高く、国内でもその削減が求められています。そこで今回は、食品製造業の食品ロス削減に向けた対策について解説します。

日本における食品ロスの現状

2014年から3年ごとに行われる「食品産業リサイクル状況等調査」によれば、令和2年度(2020年度)には522万トンの食品ロスが発生していたことが報告されています。内訳は食品製造業が121万トン、小売業・卸売業が73万トン、外食産業が81万トン、家庭排出が247万トン。前年と比べて、すべてのセクターで食品ロスが減少している状況です。

全体として好調にも見えますが、この背景には新型コロナ感染症の影響により、外食の機会が減少し、家庭での料理が増えたこと考えられます。新型コロナ感染症の感染拡大が落ち着き、人々の外食が増えた場合には、増加することも考えなくてはなりません。

2030年に向けた食品ロス削減の流れ

地球規模の食品ロス問題への認識が高まるなか、国際連合は2015年に持続可能な開発目標(SDGs)を策定しました。そのうちのひとつは、2030年までに一人当たりの食品廃棄を半減し、食品の生産やサプライチェーンの損失を減らすことです。これは全世界共通の目標とされています。一方、日本はSDGsの目標を基に、食品事業者や家庭による食品ロスを2000年度比で2030年度までに半減することを目指しています。

上記を踏まえると、全体の食品ロスの23%、事業系の食品ロスの44%を占める食品製造業でのロス削減は、2030年度までの目標達成にとって欠かせない要素です。そのため、具体的な要因と対策の検討が求められている状況が続いています。

食品ロスが発生する原因とは?

 

なぜここまで多く食品ロスが発生しているのかの原因についても考えていきましょう。

パッケージの印字ミス

食品パッケージには賞味期限など重要な情報が印字されている。消費者はこの情報を確認することで、安全な食品を口へと運べるのです。

しかし、万が一この印字作業にミスが発生した場合には大きな問題が起こります。本来の賞味期限よりも後の日付が記載されていた場合には、最悪の場合食品事故も起こりえるでしょう。

一方で、賞味期限が短く記載されるケースも考えられます。この場合、販売には何ら問題がないように感じられますが、事はそう単純ではありません。さまざまな危害要因を踏まえると、中身が完全に安全であってもパッケージ全体が販売不可となり、袋ごと廃棄になります。

規格外品の発生

製品は定められた重量や容量、パッケージングなどの規格に従って製造されています。買い手としては、事前に決められた規格品を購入したいと考えているため、ここから外れるものを納品されても意味がありません。

一方で、食品製造の過程ではどうしても規格に合わない製品が出来てしまうこともあります。これらの品は流通ができないため、廃棄の対象となってしまいます。

商品の過剰生産

食品製造業者は、商品の欠品を防ぐために発注量より多くの食品を生産することが多々あります。「欠品ペナルティ」を避け、取引先との信頼関係構築のために致し方ないことと考える方も多いですが、過剰生産は消費されずに廃棄される食品を増やす要因になっています。
ただし、実際には製造量をおおよその予測で決めている事業者も少なくありません。廃棄前提ではなく、安全性を保ちつつも最小限の生産に抑える工夫が求められています。

材料の管理不足

食材の保管時に、温度管理などが不十分となり、廃棄が必要になるケースです。危害が発生した食材を製品に使うことはもちろんできません。万が一製造後に発覚した場合には、どの時点で危害が発生していたかの原因究明が行われ、その下流の工程で作られた製品がすべて廃棄になります。

食品ロス削減によるメリット

次に、企業が食品ロスを削減することについてのメリットもご紹介します。代表的なものとして、以下3点が挙げられます。

食品の廃棄コスト削減

食品ロスの廃棄には少なくないコストが発生します。したがって、食品ロスを削減することは、廃棄費用という経費を削減することにもつながるのです。

コスト削減は企業の財務状態を改善し、利益向上にも寄与します。生産性向上などの改善以外にも、こうした直接的な施策を行うことが財務改善には大切です。

企業イメージの向上

食品を取り扱う企業が食品ロス削減に取り組むことは「社会的な責任を果たしている」という印象を消費者や取引先に与えます。結果として、企業のブランド価値や評価を高め、消費者や取引先との良好な関係を構築するために有効です。

日本の食料自給率向上と世界全体の食料確保への貢献

現在の日本は、多くの食品の供給を輸入に頼っています。

それを踏まえると、食品ロスを削減することは、食品の過剰な輸入を抑えることにもつながります。この取り組みは、国内の食料自給率を高め、また世界全体の食糧供給に対する圧力を減らすことにつながるでしょう。

日本の食品廃棄量は、飢餓で苦しむ国への食料援助量の約1.7倍と言われています。企業の食品ロス削減は、これらの問題の解決にも貢献するのです。

食品ロス削減に向けた目標

続いて、食品ロスの削減を行うにあたって目指すべき目標についても解説します。以下は、農林水産省 食品廃棄物等の発生抑制の取組にて示された食品廃棄物等の単位当たりの発生量の努力目標です。

業種区分 発生原単位の分母の名称 目標値
肉加工品製造業 売上高 113kg/百万円
牛乳・乳製品製造業 売上高 108kg/百万円
その他の畜産食料品製造業 製造数量 501kg/t
水産缶詰・瓶詰製造業 売上高 480kg/百万円
水産練製品製造業 売上高 227kg/百万円
野菜漬物製造業 売上高 668kg/百万円
味そ製造業 売上高 126kg/百万円
しょうゆ製造業 売上高 895kg/百万円
ソース製造業 製造数量 29.7kg/t
食酢製造業 売上高 252kg/百万円
パン製造業 売上高 166kg/百万円
菓子製造業 売上高 249kg/百万円
食用油脂加工業 製造数量 44.7kg/t
麺類製造業 売上高 192kg/百万円
豆腐・油揚製造業 売上高 2005kg/百万円
冷凍調理食品製造業 売上高 317kg/百万円
そう菜製造業 売上高 211kg/百万円
すし・弁当・調理パン製造業 売上高 177kg/百万円
清涼飲料製造業
(茶、コーヒー、果汁など残さが出るものに限る。)
製造数量 429kg/t
製造数量 421kg/kl

食品ロス削減の方法

ここまで食品ロス削減に向けた基礎知識をご紹介しました。しかし、具体的な取り組み方法は事業者ごとに異なります。すでに触れたとおり、賞味期限延長・年月表示化、過剰生産について着目するのはもちろん、食材の管理についても改善点がないかの見直しを行いましょう。

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まとめ

食品ロス削減は世界的な重要課題です。事業者にとっても、利益圧迫に関わる問題となるため、この機会にぜひ対策を検討してください。