2024.06.10.Mon

食品製造業の労災対策!注意すべき項目とは?

食品製造業をはじめとする製造業では、労働災害の発生リスクが存在し、企業にはその対策が求められています。今回は、そんな労災の発生状況から対策のポイントに至るまでを解説します。

製造業界における労働災害の発生状況

まずは、製造業における労働災害の発生状況を詳しく見ていきましょう。

労災事故件数

厚生労働省発表の令和4年のデータによると、製造業における死亡災害は140人、休業4日以上の死傷災害は26,694人に上りました。特に輸送用機械等製造業(造船業)、金属製品製造業、食品製造業、化学工業などの業種で死亡災害が多く発生しています。同様に、これらの業種では死傷災害も多く発生しています。

過去4年間における製造業の労災事故の型別トップ10を見ると、「はさまれ・巻き込まれ」が最も多く、これに続いて「転倒」「墜落・転落」「動作の反動・無理な動作」などが上位に挙げられます。特に「はさまれ・巻き込まれ」による事故が、毎年6,000件以上発生しており、最も深刻な問題となっています。

労災事故の起因物

労災事故の起因物としては、仮設物・建築物・構造物や一般動力機械が上位に挙げられます。仮設物等では、滑りやすい床や床の段差による転倒事故が多く発生しています。また、墜落・転落事故は高所作業の安全対策が不十分な場合に多く見られます。

動力機械系の事故では、「はさまれ・巻き込まれ」「切れ・こすれ」が主な原因となっており、これらは機械の操作ミスや管理不良、操作者のスキル不足が要因とされています。はさまれ・巻き込まれによる負傷の内容としては、骨折が4割以上を占め、創傷、打撲、関節の障害が続きます。

労災が多い年代

年代別で見ると、労災事故が最も多いのは40~60代で、全体の6割を占めています。また、経験年数が1年~3年半の労働者における労災事故は全体の半分を占め、経験の浅さが事故に影響していることが伺えます。

このように、製造業における労働災害は深刻であり、特に特定の業種や事故の型、経験年数が少ない労働者において、安全対策の強化が求められます。

食品工場での事例は?

次に、食品製造工場における労働災害の事例を見ていきましょう。

発生場所は大手食品製造工場の製品包装エリアです。時間は午後のシフト中で、被災者は38歳の男性従業員で、工場での勤務経験が2年です。

この事故では、被害者が包装機械の操作を担当していました。機械の調整中に、彼の手袋が動作中の部品に引っかかり、手が機械に巻き込まれるという状況が発生しました。この結果、被害者は右手に重傷を負い、緊急手術が必要となりました。

事故の原因としては、複数の問題点が挙げられます。まず、機械の安全カバーが適切に設置されていなかったことが問題です。さらに、被害者は機械の安全操作に関する十分な訓練を受けていなかったという点も重要です。また、工場内の安全管理体制が不十分で、定期的な機械メンテナンスと安全チェックが欠けていたことも、事故の一因となりました。

この事故による影響は大きく、被害者は長期間の医療ケアとリハビリが必要になるほか、工場の生産ラインが一時的に停止し、生産スケジュールに影響が出ました。

労働事故はなぜ起きる?

製造業における労働災害の発生において、どのような要因が多く見られるのでしょうか。

厚生労働省の2013年の「労働災害原因要素の分析」によると、製造業の労働災害は主に「不安全状態」と「不安全行動」の組み合わせによって引き起こされています。

「不安全状態」には、作業環境や設備の安全性に関する問題が含まれます。報告によると、この中で「作業方法の欠陥」が最も多く、全体の約50.7%を占めています。これは、不適切な作業プロセスや、効率を優先した結果として安全が犠牲になるような作業方法が原因となっていることを示唆しています。例えば、機械の操作方法の不備や、作業スペースの不適切な配置などが含まれます。

一方、「不安全行動」は、従業員の個々の行動によるリスクを指します。この部分で最も多いのが「誤った動作」で、全体の30.5%を占めています。これは、従業員がトレーニングの不足、注意散漫、または過度の自信などの理由で安全な作業手順を逸脱することを意味します。具体的には、機械の安全な操作方法の無視、適切な保護具の使用の怠慢、または危険な状況下での無理な作業の強行などがあります。

この分析では、「不安全状態」の中で「作業方法の欠陥」が約50.7%を占めることが示されており、「不安全行動」においては「誤った動作」が30.5%と最も多いことが明らかにされています。

労働災害を防ぐためのポイント

 

これらの対策は、製造業での労働災害を減少させるために非常に重要です。特に、危険な作業の廃止や変更、管理的な対策、個人用保護具の使用などが、リスク低減に役立ちます。常に安全意識を高く持ち、これらの対策を実践することが、労働災害を防ぐ鍵です。

転倒災害を防ぐための4S活動

  • 整理: 職場の必要なものと不要なものを区別し、必要なものを常に使える状態に保つ。
  • 整頓: 物事を定位置に保ち、作業効率と安全性を高める。
  • 清掃: ゴミ、ほこり、油汚れなどを除去し、床や機械、用具を常に清潔に保つ。
  • 清潔: 職場環境だけでなく、労働者自身も清潔に保つことが重要。

 

これらの活動は、床の滑りや散らかりによる転倒や転落を防ぎ、快適で安全な作業環境を維持するのに役立ちます。

動力機械の労災防止対策

たとえば、危険箇所に囲いや覆いを設置することで、はさまれや巻き込まれの事故を防ぐことにつながります。そのほか、インターロックなどを設けて、囲いがない場合でも機械を自動的に停止させることも効果的です。また、機械の正常な作業手順を視覚的に示すことで正しい操作を促進し、機械の清掃や調整時には電源を切るよう徹底することが求められます。

ヒューマンエラー防止対策

ヒューマンエラーの原因は多岐にわたり、危険軽視、不注意、無知・未経験、近道・省略行動などが含まれます。こうしたエラーを防ぐためには、KY活動(危険予知活動)、ヒヤリ・ハット活動(危険予兆の共有)、パトロール活動(定期的な安全巡回)などが効果的です。

リスクアセスメントの実施

リスクアセスメントとは、職場の危険性や有害性を特定し、それらのリスクを見積もる方法です。リスク低減のための優先度を設定し、適切な対策を講じます。また、実施した対策を記録し、災害防止のノウハウを蓄積し、継続的な改善に活用することも重要です。

快適な労働環境の整備は企業側の役割

労働環境を整えることは企業側が担うべき責任です。前述のような労働事故が起こる状況を作らないよう、環境整備を行いましょう。

なお、環境のなかには室温の管理なども含まれます。労働安全衛生法の規定では、事務所内の室温温度は以下になるように努めるべきとされています。

 

  • 室温:17℃~28℃
  • 湿度:40%~70%

 

なお、食品製造業の場合には、さらに食品の衛生についても気を配らなくてはなりません。例として、「大量調理施設衛生管理マニュアル」(厚生労働省)では、施設の温度は25℃以下に保つことが望ましいという記述があります。なお、湿度は80%が目安です。

上記を踏まえ、労働者のストレスにならず、かつ食品を衛生的に製造できる温度・湿度を保てるよう努めましょう。

工場内の室温管理ならACALA

これまで解説してきたとおり、食品製造業の事業者にとっても、労災対策は避けて通れない問題です。にもかかわらず、HACCPの義務化や慢性的な人不足などによって食品製造業に従事する人々の業務負荷は増えていく一方。こうした状況は、精神的にも物理的にも事故等を誘発する原因になりえます。

その解決策のひとつとしてご提案したいのが、弊社がご提供する自動温度管理システム「ACALA」です。第一に、食品製造業にとって温度管理・記録は欠かせない業務のひとつです。冷蔵・冷凍庫だけでなく、室温も例外ではありません。従業員にとって働きやすい温度の維持も求められます。

ACALAは、設置された温度ロガーから発信されたデータが専用のクラウド型プラットフォームに蓄積され、リアルタイムによる監視を実現します。室温はもちろん、冷蔵・冷凍庫といった機器の温度管理にも最適。食品製造業に求められる温度記録・管理に最適なソリューションです。

まとめ

製造業には、労働災害が起こりうるリスクが多く存在します。企業としては、この発生を最小限にできるよう務めなくてはなりません。今回ご紹介したポイントを踏まえ、ぜひ対策を実践してください。