食品工場における暑さ対策と温度管理
高温多湿な環境では、製造食品の品質劣化や食中毒のリスクが高まります。工場内における作業環境の悪化、従業員の健康被害なども懸念されるため、適切な温度管理が必須です。 そこで今回は、食品工場での暑さ対策に有効な設備、手軽に始められる熱中症対策、さらには事故を防ぐための温度管理のポイントについてご紹介します。
暑さ対策に有効な設備
食品工場では、適切な暑さ対策と温度管理が不可欠。高温多湿な作業環境は、製品品質や従業員の健康に悪影響を及ぼすためです。そこで、工場内の暑さ対策に有効な設備・機器をご紹介します。
スポットクーラー
スポットクーラーは、特定の作業エリアの温度を下げる冷却装置です。キャスター付きの機器であり、必要な場所に随時移動できます。スポットクーラーで熱源となる機器周辺を重点的に冷やすことで、快適な作業環境を実現します。
大型扇風機
強力な風を送って工場内の空気を循環させ、温度を均一に保つための機器。設置が簡単で広範囲をカバーできるため、工場全体の暑さ対策に最適です。スポットクーラーと併用することで、冷気を効率的に拡散させられます。
屋根用スプリンクラー
屋根用スプリンクラーは、屋根に水を散布して日射熱を軽減し、工場内部の温度上昇を抑えるための設備です。水の蒸発冷却効果を利用することで、屋根からの輻射熱を減らし、冷房負荷を軽減します。中〜大規模な食品工場の暑さ対策に有効です。
ミストファン
微細な水粒子を吹き出し、蒸発冷却効果による涼感を得るための設備です。高温環境下でもミストファンを使用すれば体感温度を一気に下げられます。また、ミストファンが作り出す水粒子には、空気中の浮遊粉塵を抑制する効果があります。暑さ対策はもちろん、衛生管理の観点からも有効な設備です。
給排気システム
吸排気システムは、工場内の温度と空気室をコントロールする設備です。その導入メリットは、以下となります。
- 熱の蓄積防止
- 空気質の改善
- 結露の防止
吸排気システムの役割は、工場内の熱気を排出して熱の蓄積を防ぎ、快適な作業環境を維持することです。特に夏季の高温環境下では、給排気システムによる温度管理が欠かせません。
また、工場内で発生する粉塵や化学物質などの汚染物質を排出し、新鮮な外気を取り入れることで空気質を改善します。これは従業員の健康管理おいて有効でしょう。さらに工場内の湿気を排出し、結露の発生を防ぎます。結露はカビの発生や設備の劣化を招くため、高温多湿な食品工場においては導入メリットが大きいといえます。
自動空調システム
自動空調システムは、温度・湿度を自動調整する設備です。センサによって工場内の温湿度を監視し、冷房・暖房・除湿・加湿などを自動で切り替えます。これにより、季節や天候に左右されずに快適な作業環境を維持できます。
また、自社の中央管理システムと連携することで、複数の空調機器を一元的に管理・制御できます。システム運用の最適化、各種設備・機器の省エネ化、コスト削減などを実現する、現代の食品工場に必要不可欠な仕組みです。
より手軽にはじめられる熱中症対策
食品工場では、品質管理や食中毒予防のために適切な温度管理を行っています。あわせて、作業員の熱中症対策も重要です。ここでは、手軽に始められる暑さ対策・熱中症対策をご確認します。
ビニールカーテンの使用
ビニールカーテンで工場内の各エリアを仕切り、冷気の拡散を防いで空間を効率的に冷やしましょう。たとえば、レールに吊るすタイプのビニールカーテンは簡単に開閉でき、作業の妨げになりません。エアコンなどの空調設備と組み合わせることで、さらなる省エネ効果も期待できます。
保冷剤の利用
保冷剤は安価であり、簡単に用意できるアイテムです。首の後ろやタオルで包んで脇の下に挟むなど、直接肌に当てることで身体を冷やします。また、暑さで体調を崩しそうな時の応急処置にも使えるでしょう。保冷材の持続時間は2~3時間程度なので、こまめな交換が必要です。
涼しい作業着の導入
従業員が着用する作業着は、吸湿性や通気性に優れたものが選びます。たとえば、ポリエステルと綿の混紡素材を使った作業着は、汗を素早く吸収・発散するとともに、肌のべたつきを抑えます。体感温度が下がるため、快適に作業に取り組めるでしょう。
事故を防ぐための温度管理
食品工場の温度管理は、食品の品質維持と労働環境の安全確保に欠かせません。ここでは、食品工場内における温度管理の重要性や、事故を防ぐためのポイントをご紹介します。
食品工場における温度管理の重要性
工場内の温度が高すぎると、細菌が繁殖して食品の劣化が早まります。特に食中毒菌は20℃前後の室温を好むため、室内温度の上昇に合わせて急速に増殖。食品の品質劣化と同時に、食中毒のリスクが高まります。食品の種類によりますが、生鮮食品を扱う場合は20℃以下、加熱後の作業エリアでは25℃以下が適切とされます。
また、労働安全衛生規則において事業者は、従業員に対する適切な温湿度調節措置が義務づけられています。たとえば、食品工場特有の熱源、全身を覆うクリーンウェアは、夏場における熱中症の要因です。従業員が安全に働ける作業環境を維持するために、厳格な温度管理が必要不可欠です。
WBGT指標で暑さを「見える化」
「WBGT(湿球黒球温度)」は、熱中症予防のために用いられる暑さ指数の一つです。人体の熱収支に影響を与える「湿度」「輻射熱(放射熱)」「気温」といった3つの要素を取り入れた指標であり、単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されます。
環境庁が運営する「熱中症予防情報サイト」では、WBGTにもとづいた熱中症予防の目安を示しています。具体的には、WBGTが28℃を超えた場合は「厳重警戒」となり、熱中症患者が著しく増加するとしています。
また、職場における熱中症予防のためにも、WBGTを用いた作業環境管理が推奨されており、作業の種類に応じたWBGT基準値が定められています。
弊社ではこのたび、温度管理システム「ACALA」において、室温度センサで計測した数値からWBGTを算出・表示する機能を新たに搭載しました。簡易的な計測値を表示するものですが、工場内の暑さを「見える化」できます。すでに「ACALA」を導入されているお客様、今後温度管理システムを導入・検討されている方は、ぜひご活用ください。
温度モニタリングで快適な環境を実現
食品工場をはじめとする現場では、温度センサやモニタリングシステムを活用することで、リアルタイムかつ継続的な温度管理が可能です。
たとえば、IoTを活用した温度管理システムを導入すれば、温度や湿度、CO2濃度などを自動で計測し、クラウド上で一元管理できます。計測データはパソコンやタブレットで確認でき、温度異常があった場合にアラートで通知。万が一、事故やトラブルが発生した際、迅速な対応に繋げられます。
まとめ
ポットクーラーや大型扇風機、ミストファンなどの設備を活用し、食品工場の暑さ対策を徹底しましょう。また、現場の温度管理を効率化および自動化するなら、温度管理システム「ACALA」の導入をご検討ください。
「ACALA」は、クラウド型の統合温湿度監視記録ソリューションであり、医療施設や食品工場など、幅広い業種における導入事例があります。このシステムでは、センサが1分ごとに湿温度を自動計測し、データをクラウドに保存。24時間遠隔監視が可能で、温度異常時には即座にアラート通知を行います。
さらに、日報や週報などの帳票を自動生成。担当者にメール送信されるため、手間のかかる温度管理業務を効率化できるのが魅力です。自社工場における温度管理にお悩みなら、ぜひ一度当社までご相談ください。