

温度管理表の重要性とは?HACCPに基づいたポイントを解説

食品事業者にとって、HACCPに基づく衛生管理は、食の安全を守るための重要な取り組みです。その中でも、温度管理は品質維持と食中毒予防の根幹を担う要素と言えるでしょう。 特にHACCPにおいては、温度管理表を用いた適切な記録と管理が求められます。 温度管理表は、食品製造の各工程における温度を可視化し、異常を早期に発見し是正に役立つツールです。 本記事では、HACCPにおける温度管理表の重要性や、温度管理におけるポイントを解説します。温度管理表の重要性を理解し、活用ポイントを把握しましょう。
温度管理表の重要性
温度管理表は、食品の安全性を確保するための最も重要な記録のひとつです。なぜなら、温度は微生物の繁殖や酵素反応に直接影響し、食品の品質を大きく左右するためです。温度管理表を適切に運用することで、危害発生の可能性を未然に防ぎ、安全な食品の提供が可能になります。
細菌の増殖を抑制し食中毒を防止する
食中毒を防止するためには、適切な温度管理が必須です。温度管理を怠ってしまえば、微生物が増殖し、食中毒のリスクが一気に高まります。
農林水産省によれば、中心温度85~90℃で90秒以上の加熱で、ノロウイルスは感染力を失います。適切な温度管理下では、食中毒の原因である細菌やウイルス増殖の抑制が可能だということです。
食品の品質を保持する
温度は、食品の品質に影響を与える因子のひとつです。適切な温度管理により、食品の風味や色、食感などを損なうことなく、良好な状態を維持できます。
厚生労働省によりガイドラインで発表されている「ヨーグルト」の事例は、スーパー購入品のヨーグルトの液状化していると苦情が寄せられたというものです。
調査の結果、販売店が誤って一時凍結した結果、品質に異常が生じたと考えられます。不適切な温度管理下では、製品の品質に悪影響を与える恐れがあるため、適切な温度管理を行うことが重要です。
適切な温度を可視化できる
食品の製造や加工における各工程の温度を記録し、視覚的に把握する上で、温度記録表は重要です。定められた温度基準からの逸脱を早期に発見し、迅速な対応を可能にします。
また、温度管理表によって担当者は日々の温度変化をモニタリングし、異常値や傾向を容易に把握することが可能です。
これにより、潜在的な問題点を早期に特定し、製品の安全性と品質を維持するための対策を講じることができます。記録されたデータは、問題発生時の原因究明や改善策の検討にも役立つでしょう。
因みに、当社の自動温度管理システムACALAを利用すると、1分ごとに計測記録された詳細データをグラフで確認することができるため、日々の温度変化が一目瞭然です。また予め設定した基準値を逸脱すると、メールや電話などにアラート発報をすることが可能なので、安心です。
食品事故発生時の証明になる
万が一、食品事故が発生した場合、温度管理表は製造工程における温度管理が適切に行われていたかを証明する重要な証拠となります。
詳細な温度記録は、事故原因の特定を助け、責任の所在を明確にする上で不可欠です。適切な温度管理が実施されていたことを示す温度管理表は、企業の信頼性を守り、訴訟リスクを軽減する効果も期待できます。
食品の温度管理や温度記録は、令和3年6月1日より、全ての食品事業者で義務化された「HACCP対応」の重要管理点のひとつです。
HACCPにおける温度管理表のチェックポイント
HACCPにおいて温度管理表は、単なる記録ではなく、食品安全を確保する必要があります。効果的に運用するためには、チェックすべきポイントを押さえることが大切です。ここでは、食品工場での温度管理で重視すべき5つのチェックポイントを解説します。
①原材料の搬入
原材料が適温で配送されていたか、搬入時の温度をチェックする必要があります。原材料を受け入れた時点で、保存温度が適切かを確認しましょう。温度だけでなく、材料のニオイや色など、五感による検収も重要な要素です。
原材料の受け入れ後は、常温、冷蔵、冷凍など、材料に応じて適切な温度管理ができるよう保管します。
②原材料の保管時
入荷時に問題がなければ、保管の確認をします。適切な温度の基準は異なるため、材料に応じた適温を維持することが大切です。
厚生労働省の「大量調理施設衛星マニュアル」によれば、以下のように細かな規定があります(一部のみ抜粋)。
- 小麦粉やでんぷんなどの穀類加工品:室温
- 冷凍食肉製品や冷凍食品:-15℃以下
- 食肉:10℃以下
原材料は適温で保管し、食品の劣化を防ぎ鮮度を維持すること、食中毒の原因となる菌の増殖を抑制することが大切です。
③加熱調理時
加熱調理は加熱して提供する料理で、HACCPの需要管理点となる工程です。調理の際は、有害な微生物の多くを死滅させるため、中心温度75℃で1分以上の加熱を行います。
特に食肉は十分加熱して、細菌を死滅させ食中毒を予防することが大切です。加熱時は、食材の中心温度を測定する温度計で確認します。
④冷却・包装時
HACCPにおいて、急速冷却・冷凍や包装時も、温度管理で考慮すべきポイントです。食中毒細菌が増殖しやすい危険温度帯を通り抜ける時間を測定します。
加熱後、室温に長期間おくのは、微生物が増殖しやすい状態のため危険です。
できるだけ危険温度帯で保管せず、いかに危険温度帯の通過時間を早くするかを考慮し、冷却や冷凍、包装を行います。
⑤出荷・配送時
出荷場での一時保管場所の温度管理を徹底し、製品の温度変化を最小限に抑える必要があります。トラックなどの輸送手段も適切な温度管理が可能なものを選定し、輸送中の温度変化を記録できる体制を整えましょう。
出荷時の製品温度を記録し、配送業者に伝達。配送業者には、輸送中の温度記録を義務付け、受領時に記録を確認することで、温度逸脱がないかを確認します。
温度管理表のデータの扱い
HACCPに基づいた温度管理表のデータは、単なる記録以上の価値を持つ、食品安全を支える情報源です。そのため、適切なデータ管理が必要になります。
HACCPに準じた衛生管理では、各工程におけるリスクを洗い出す危害要因分析(HA)をもとに、「重要管理点(CCP)」として温度管理を設定し、食品の安全性の確保を徹底することが重要です。
記録の保存期間
HACCPの温度管理記録の保管期間の目安は、紙による記録は1年間程度です。ただし、見直す可能性のあるクレーム対応や従業員の教育記録などは、2~5年程度の保管期間を設けると良いでしょう。
記録に関する注意事項は下記の通りです。
- 鉛筆による手書きは修正が容易なため、推奨されていない
- ボールペンなどの記載が推奨されている
- 第三者によるチェックできちんと記録されているかを確認する
温度管理は義務なのか
食品衛生管理の法改正により、2020年頃よりスーパーマーケットや飲食店などの店舗環境や店舗設備の一般的な衛生管理、および温度管理記録・その保存が義務化されました。
2021年6月からはHACCPに準じた衛生管理の義務化により、より精度の高い温度管理が求められています。
まとめ
HACCPに準拠した温度管理表は、食品の安全性を揺るぎないものにするための重要なツールです。このツールを最大限に活用することで、温度逸脱から起こりうる食中毒のリスクを最小限に抑え、消費者からの信頼を強固なものとすることができます。日々の記録とチェックを怠らず、定期的な見直しを実施することで、常に最適な状態を維持し、より安全で高品質な食品提供へと繋げられます。HACCPの原則をしっかりと踏まえ、効果的な運用を心掛けることが重要です。
温度管理表は、食品事業者の信頼度向上、そして顧客の安全と安心を守るための不可欠なツールであることを深く認識し、継続的な改善に取り組んでいきましょう。

