2020.05.13.Wed

微生物目線から見る「危険温度帯と3分類」とは?

微生物は特定の状況下で爆発的に増殖し、食品事故などの原因を作ります。これを避けるためには、調理工程の特徴ごとにメニューを分け、適切に取り扱うことがHACCPでは推奨されています。もちろん、この取り扱いの中で重要なのが温度管理です。

危険温度帯とは?

微生物が発生すると、食品事故のリスクが高くなります。そのため、まずは微生物がどのような状況下で発生しやすくなるのかを考えてみましょう。

多くの微生物の発生場所は、家畜動物などの腸の中です。言うなれば、そこは微生物の生まれ故郷。繁殖をするのに適した環境なのです。

その視点で考えると、微生物が発生しやすくなる温度というのは家畜動物の体内温度に近いと推測されます。実際に、10〜60℃は食品衛生管理において「危険温度帯」とも呼ばれています。

すべてのメニューを3分類するのが大切

危険温度帯を避ければ、微生物の発生を抑えられるのは間違いありません。その考えを厨房で活用すれば、食品事故のリスクを大幅に減らせます。そこでポイントになるのがメニューの分類です。加熱をするか、しないか、繰り返すか。この3つに分けて、適切に取り扱いましょう。

● 1.加熱しない食品(食材)

たとえばお刺身やサラダは加熱のできないメニューです。つまり、加熱殺菌しないままお客様に提供する必要があるのです。この場合の衛生管理は非常に重要です。微生物がついたままお客様の口に入ってしまうと、食品事故のリスクが一気に高まります。まずは10℃以下での保存を徹底しましょう。また、微生物がつかないよう、手洗いや素手を使った調理の禁止などを徹底してください。

■食品例

  • お刺身
  • サラダ
  • 生肉
  • 薬味 など

●2.加熱してすぐ食べる食品(食材)

微生物は加熱によって殺菌できます。そのため、加熱後にすぐ提供されるメニューについては、食品事故のリスクは比較的少ないと考えられています。しかし実際には、加熱が不十分で微生物が生き残ってしまい、それが原因で起こる食品事故も決して少なくはありません。

そのため、加熱調理を行う際には、事前に必要となる加熱時間と温度を決めておきましょう。加えて、中心温度(芯温)の測定・記録を徹底することも求められます。

また、せっかく加熱によって食品が殺菌できているのですから、その状態を保つことが大切です。間違っても素手や汚れた手袋で触ってはいけません。加えて、すぐに提供できない場合には、微生物が増殖しないよう少なくとも60℃以上で温蔵しておきましょう。

  • トンカツ
  • ハンバーグ
  • 焼き魚 など

● 3.加熱と冷却をくりかえす食品(食材)

たとえばカレーやシチューといったメニューは、加熱によって微生物の殺菌が行えます。しかし、作り置きをすることも多いため、再加熱と冷却を繰り返すという点が「加熱してすぐ食べる食品」と大きく異なります。

ここでポイントになるのが急速冷却です。これは、加熱しても死なない細菌の存在があるからです。時間をかけて冷却すると、危険温度帯に晒される時間が長くなるため、細菌が爆発的に増加してしまう可能性があります。その結果、再加熱後の提供時に、食品事故を引き起こしてしまうリスクを大幅に増加させてしまうのです。

こうした状況を避けるためには、加熱と冷却を繰り返す食品については、可能な限り早く冷却することが重要です。例えば、深い鍋に入っているものは浅いバットに移し替え、氷水などで急冷しましょう。

  • カレー
  • シチュー
  • お味噌汁 など

すべてのグループで共通する温度管理・記録の重要性

上記の3分類にはそれぞれ必要とされる作業工程があり、内容には多少の違いがあります。しかし、冷蔵・冷凍庫での保管が必要なことは変わりありません。加えて、加熱が必要な食品は、加熱調理後の芯温測定も求められます。つまり、前項でご紹介したすべてのグループで、温度管理・記録が重要となるのです。

また、2021年6月1日から義務化されるHACCPにおいても、温度管理・記録は必須項目のひとつです。この期間までに、効率的な温度管理・記録の方法を検討しておきましょう。

● 冷蔵・冷凍庫の自動温度管理システムなら『ACALA MESH』

当社がご提供する温度管理システムの「ACALA MESH」は、これらの記録や管理作業の自動化を実現するクラウド型の統合監視記録ソリューションです。堅牢なネットワークにより、信頼性の高いデータの取得・蓄積が可能。専用のプラットフォームを用いることで、分析や出力なども簡単に行えます。完全ワイヤレス仕様なので設置も簡単。かつ、24時間いつでもどこでも現在の状況が確認できる点もメリットです。

●加熱食材の芯温測定・自動記録システムなら『ACALA FT』

芯温の測定と自動記録システムなら、当社の「ACALA FT」がおすすめです。ハンディタイプなので取り回しが良く、さらにNFC通信機能が組み込まれているためBluetoothやWiFiなどで起こりがちな干渉・混線もありません。なお、加熱後食材の中心温度の測定はもちろん、ソースやカレーの冷却後温度測定も可能です。

●まとめ

今回は、微生物の増殖を防ぐための方法についてご紹介してきました。HACCPの制度化などによって、より食品衛生に対する目は厳しくなってきています。しかし、食品事業者にとっても、食品事故などは決してあってはならないこと。今回ご紹介した内容を踏まえ、温度管理システムなどを上手く活用して適切な衛生管理に努めましょう。