工場で適正な温度・湿度管理を行う重要性とメリットとは？
工場は、設備や設置機器の特性上、温度や湿度の管理が難しい環境にあります。しかし、従業員にとって快適な労働環境を確保し、製品品質を守るためには温度と湿度の適切なコントロールが欠かせません。本記事では、工場における温度・湿度管理の重要性とその具体的な方法、適正な管理により得られるメリットを解説します。
工場の温度・湿度を管理する必要性
工場の温度と湿度は、従業員の健康や製品の品質に関わります。まずは、工場の温度と湿度を管理する重要性について解説します。
労働安全衛生規則により定められている
工場が温度と湿度の管理を行う理由のひとつは、「労働安全衛生規則」において定められているためです。労働安全衛生規則は、労働者の安全と健康を守り、衛生的な作業環境を確保することを目的に厚生労働省が定めた法令です。
この規則では、さまざまな業種や職種で共通して守るべき事項を定めています。とくに作業場の温度と湿度については、第606条に次のように記されています。
事業者は、暑熱、寒冷又は多湿の屋内作業場で、有害のおそれがあるものについては、冷房、暖房、通風等適当な温湿度調節の措置を講じなければならない。
さらに第607条では、半月に1回を目安に、作業場の気温や湿度を定期的に測定することと定めています。この規則に違反した場合は罰則が科される可能性もあり、適切な温度と湿度が保たれた作業環境は、労働者が快適に働くための重要な条件のひとつといえます。
具体的な温度と湿度の目安は、事務所衛生基準規則を参考にするとよいでしょう。この規則では、温度は18〜28℃、湿度は40〜70％を保つよう努めることが定められています。
ただし、これはエアコンなどの空調設備を設けている事務所環境を前提としているため、工場では難しい場合もあります。これらの数値はあくまで目安として、工場の実情に応じて温度と湿度の管理に努めることが大切です。
製品の品質を保持する
工場で生産される製品の不良品率は、温度と湿度が影響する場合があります。
たとえば、温度と湿度の管理が不十分な食品工場で懸念されるのは、食中毒のリスクです。印刷工場では、紙が湿気を吸収して波打ったり、乾燥して紙が反り返ったりすると、印刷が困難になります。乾燥により発生する静電気も、スムーズな印刷を妨げる原因のひとつです。
繊維工場において糸の強度と弾力性を保ち、高品質な製品を作り出すためには、湿度管理が不可欠です。したがって、乾燥しやすい冬場に加湿器を使用する工場も少なくありません。精密機器を扱う工場では、湿度が高いと原料にサビが発生し、乾燥すると静電気により電子回路が破損するリスクがあります。
このように、温度と湿度は製品の品質に大きく影響します。温度と湿度を管理することで、製品品質の均一化を目指しましょう。
工場の温度・湿度を管理する方法
ここからは、工場の温度と湿度を管理する具体的な方法を紹介します。
断熱材を利用する
工場の温度を適切に保つためには、熱の移動を妨げる断熱材の利用がおすすめです。断熱材を使うと外気温が工場内に伝わりにくくなり、空調による温度調節の効率が向上します。
ただし、屋根や外壁に断熱材を入れる場合は手間とコストがかかります。より手軽に対策するなら、屋根や外壁に断熱効果のある塗料を使用するとよいでしょう。窓ガラスを断熱効果が高い複層ガラスに変える方法もあります。
さらに、天井や壁に遮熱シートを貼る方法も効果的です。遮熱シートは熱を反射して工場内の温度上昇を抑えるため、高温になりやすい機器を覆う使い方もあります。低コストで設置できることも遮熱シートのメリットです。
ただし、遮熱シートは冬の寒さ対策として外気温を遮断するには不十分な場合があります。このような特性や、設置やメンテナンスにかかる手間、予算などを考慮して対策を検討してみましょう。
空調設備を整える
工場内の温度はエアコンなどの空調設備で管理できますが、空間が広すぎてエアコンの効きが弱いと感じることもあるでしょう。
熱が発生する機器の近くで作業する際は、ピンポイントで冷気を送れるスポットクーラーを利用する方法があります。スポットクーラーは移動可能なため、作業場所に合わせて自由に配置できることもメリットです。
また、作業着にファンが付いた空調服を利用するのもおすすめです。空調服を着用すると、ファンで取り込まれた外気により汗が蒸発し、涼しさを感じやすくなります。
さらに、エアコンの効果を高めるために、天井にシーリングファンを設置するのも方法のひとつです。ファンが回ることで空気が循環して、暖気や冷気が工場内に行き渡りやすくなります。これらの設備を活用して空調効率を向上させ、作業環境を整えましょう。
IoT機器を導入する
IoT機器を活用した工場内の温度と湿度の継続的なモニタリングは、労働環境の改善に役立ちます。IoTとは、さまざまなモノをインターネットに接続し、データの処理や分析、連携を可能にする技術のことです。
従来、温度と湿度の記録は人の手により行われてきました。しかし、定期的に作業を中断して温度と湿度をチェックする必要があり、作業効率の低下や記録の抜け漏れが発生していました。
IoT機器を導入すると温度・湿度管理が自動化され、抜け漏れのない正確なデータの収集が可能となります。遠隔でデータを確認できたり、異常値を検知した際にアラートで通知したりする機能を備えた機器も登場しています。IoT機器による記録の自動化は作業効率の向上だけでなく、人員不足の解消やペーパーレス化などにも役立つでしょう。
工場の適正な温度・湿度管理により得られるメリット
ここでは、工場の適正な温度・湿度管理により得られる3つのメリットを紹介します。
人件費が削減される
適切な温度・湿度管理により労働環境が整い、業務の生産性が向上すると、人件費削減につながります。
過酷な温度と湿度にさらされる労働環境では、体調を崩す従業員も少なくありません。それにより従業員満足度が低下し、離職者が現れる可能性もあります。欠勤や欠員を補うために新たな従業員を雇用していると、人件費の負担も増すでしょう。
一方で、労働環境が快適であれば従業員も体調管理がしやすくなり、欠勤を減らせます。従業員満足度が高まるため、離職率も低減するでしょう。
また、快適な労働環境では業務の生産性向上が見込めます。残業が減ると、時間外労働にかかる人件費も抑えられます。IoT機器を導入して温度・湿度管理を自動化すればさらに生産性が高まり、人件費削減に貢献できるでしょう。
従業員の健康が守られる
適切な温度・湿度管理は、工場で働く従業員の健康を守るために欠かせない要素です。
高温多湿の環境下で長時間働いていると、熱中症のリスクが高まります。とくに、安全のために長袖の作業着やマスクなどの保護具を着用しなければならない現場では、温度や湿度を適切にコントロールすることが求められます。
一方で、寒すぎる環境も体調を崩すリスクがあるため、注意が必要です。体温が下がって免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなったり、血管が収縮して血圧が上昇したりする可能性があります。肩こりや腰痛、むくみも冷えに起因する症状です。
体調を崩すまではいかないにしても、暑い、寒い環境では集中力やモチベーションが低下します。温度と湿度を適切に管理して快適な労働環境を提供し、従業員の健康を守りましょう。
製造機械のトラブルを防止できる
温度と湿度が影響を与えるのは、製品だけではありません。製造機械も影響を受けて稼働率が低下したり、製品に不備が起きたりする可能性があります。
摩擦やモーターの熱で高温になると、機械部品が変形したり、潤滑油の成分が分解されて機械が動作不良を起こしたりすることがあります。低温の環境下では、液体を通すパイプが凍結して破損することもあるでしょう。湿度が高ければ、機械内部にカビが発生するおそれもあります。
温度や湿度の影響を受けて製造機械にトラブルが生じると、製造ラインがストップして稼働率が低下する場合があります。さらに、機械トラブルが原因で製品の不良品率が増加することも少なくありません。
温度と湿度の適切な管理により製造機械のトラブルを防止できれば、稼働率の向上や不良品率の改善につながります。
まとめ
従業員の労働環境を整え、製品の品質を守るために、工場では適切な温度・湿度管理が求められます。断熱材や空調設備を活用すると大きな効果が期待できますが、手間やコストがかかることから導入が難しいケースもあります。しかし「ACALA MESH」であれば、コストを抑えた迅速な導入が可能です。
「ACALA MESH」は、温度と湿度を自動で計測できるIoT機器であり、業務の生産性向上や人件費削減が期待できます。工場における適正な温度・湿度管理を実施するために、「ACALA MESH」の導入をぜひご検討ください。
