2020.01.24.Fri

ワイヤレス自動温度管理・記録システムは温度ロガーの省電力性に注目

ワイヤレスの自動温度管理・記録システムを選ぶ際には、温度ロガーの省電力性を確認しましょう。単にバッテリー容量が大きいだけではなく、省電力実現のためにどのような技術が用いられているのかなどもポイントです。今回は、ワイヤレス自動温度管理・記録システムにおけるバッテリー問題について解説します。

ワイヤレスな自動温度管理・記録システムのメリット

自動温度管理・記録システムを採用する際には、無線式の温度ロガーを用いたワイヤレスシステムがおすすめです。配線がないため増設を含む設置が容易であり、工場や厨房のレイアウト変更なども不要。現状のまま即設置できるので、初期コストの削減にもつながります。また、回収や交換も簡単なので、メンテナンス性にも優れています。
一方、無線技術を用いることから、混線を避けたり、安定したネットワーク構築に高い専門性を要するといった問題がないとは言い切れません。また、単純ながら頭を悩ませるのがバッテリーの問題です。

● ワイヤレスシステムで起こりえるバッテリー問題

無線式の温度ロガーは、稼働のために内蔵のバッテリーを用います。とくに、通信にWi-Fiを用いるモデルは消費電力が高く、電池寿命が短くなります。そして、実際にバッテリー切れが起こると以下のような弊害が生まれます。
 

  • バッテリーが切れている最中は温度が記録されないため、記録に穴が空く
  • バッテリー充電のためにロガーの回収&再設置が必要
  • 電池式のものは交換が煩雑で、かつビスなどが異物混入の原因になる
  • 休日や深夜など、スタッフ不在中にバッテリーが切れると、対処までの間が空く
  • 温度ロガーの停止が不具合なのか充電切れなのかがすぐに分からず、原因を探るのに時間がかかる

 
バッテリー切れは単純な問題ながら、定時運転が前提となる自動温度管理・記録システムにとって無視できない懸念点です。ワイヤレスシステムを採用する際には、必ずチェックしなくてはならない項目と言えるでしょう。

無線温度ロガーのバッテリーを長持ちさせるには?

ワイヤレスシステムにおけるバッテリー問題を解決するには、いくつかの方法が考えられます。なかでももっともシンプルなのが「大容量バッテリー」の搭載です。バッテリー容量(もしくは電池の本数)が増えれば、その分だけ稼働時間は長くなります。
しかし、バッテリーの容量を増やせば筐体の大型化が避けられなくなるのは問題です。設置の自由度が低下してしまいます。また、温度ロガー単体の単価が上がり、複数台の設置にかかるコスト増加も懸念点として考えられるでしょう。そこで必要になるのが省電力性です。なかでも、起動時間の長さが重要なポイントになります。

● 省電力実現のポイントはスリープモード

無線式の温度ロガーを常時起動すると、電力が常に必要となりますから、消費電力量が増えます。そこで、スリープモードに移行する機能を組み込み、温度計測時やデータ転送時にだけ通常モードに復帰するような仕組みを構築するのがポイントです。
このシステムを実現する方法としてもっともシンプルなのが、温度ロガーにタイマー機能を搭載することです。スリープモードと通常モードを時間によって行き来することで、大幅に消費電力を減少できます。
しかし、タイマー機能を持たせるということは機器の構造を複雑化することにもなり、機器の不具合につながる可能性が高くなります。また、端末の単価上昇にもつながるでしょう。そこで注目したいのがSmartMesh IPという無線技術です。

● 時計の概念を持つSmartMesh IPが問題を解決

SmartMesh IPは複数台接続に優れており、かつ省電力性の高い通信規格のひとつです。
似た特徴を持つ通信規格としては、工場はもちろん、家庭用リモコンなどでも用いられているZigBeeが挙げられます。しかしZigBeeにはノードに“時計の概念”がなく、各ノードが非同期になるというデメリットがあります。一方、SmartMesh IPの各ノードは正確な時計を持つため、常に共通の時刻を共有できるのがポイントです。
つまり、SmartMesh IPであれば「すべての温度ロガーが同時刻にスリープモードから通常モードへ復帰する」という動作を実現できます。結果として、温度ロガーの構造はシンプルなまま、ロングバッテリーが実現できるのです。
SmartMesh IPについて、詳しくはこちら

SmartMesh IPを採用した「ACALA MESH」

当社がご提供するクラウド型統合温湿度監視記録ソリューション「ACALA MESH」では、温度ロガーとの通信にSmartMesh IPを採用しています。最新テクノロジーを活用してはいるものの、初期コストは0円。月額料金のみで利用できる点が大きなメリットです。
また、温度ロガーはシンプルな構造となっているため不具合が起こりにくく、サイズもコンパクトなので設置も容易。「電池寿命5年」を実現しているので、バッテリー問題に困ることはありません。
なお、専門的な技術を用いてはいますが、お客様にご面倒な設定をお願いすることもありません。設置すればすぐに測定が開始され、発信されたデータを蓄積・分析する専用プラットフォームもクラウドにてご提供しています。基本的には、キットが到着したその日から運用が可能です。

まとめ

自動温度管理・記録システムを導入する際には、実際の運用を想定した検討が必要です。この際、バッテリー問題は非常に大きなファクターとも言えるでしょう。省電力性についてどれだけ配慮がなされているシステムかをよく吟味した上で、自社に最適な自動温度管理・記録システムを選定してください。