チラー水の温度管理について
チラーおよびチラー水は、食品工場はもちろん、さまざまな産業で活躍する機器です。こちらでは、そんなチラーとチラー水について、概要から分類、重要性に加え、温度管理に関わる注意点をご紹介します。
チラー水とは?
チラー水とは、産業機械の冷却や温度調整に用いられる液体のことです。チラー水を循環させる機器を冷却水循環装置といいます。チラーユニット、チリングユニット、チラーと呼ばれることもあります。
チラー水の役割をイメージしやすいのは高温時です。熱された鉄に冷たい水をかければ温度が下がるのと同様の仕組みで、チラー水が用いられます。一方、冷却だけがチラー水の役割ではありません。
今度は氷をイメージしてみてください。そのままの状態と、水に浸けた状態とでは、溶けるスピードは後者のほうが早くなります。この場合、水は“冷やす”ではなく、ある意味で温めるような機能と言えるでしょう。
チラー水も同様で、冷やすだけでなく、温めたり、保温したりといった用途が可能です。まとめると、産業用機械の温度調整を行う際に使用されるのがチラー水、ということです。
チラーの分類
チラー水を循環させるチラーには、構造や仕組みによる分類があります。以下では、排熱方法と循環方法による分け方について解説します。
排熱方法:空冷式・水冷式
冷却用チラーの例で解説します。機器等から熱を奪ったチラー水は温度が高くなります。そのままだと再度冷却を行えませんので、熱交換器によってチラー水を冷却しなくてはなりません。これは言い換えるなら、チラー水から熱を奪うのと同じです。そのため、プロセスは排熱と呼ばれます。
排熱の処理は大きく「空冷式」と「水冷式」の2種類があります。前者は外気との熱交換によるもの。つまり、チラー水を空気によって冷ますといった方法です。一方水冷式は、チラー水とは別に冷却水を用意し、熱交換をすることで冷却を行います。
どちらが優れているというよりは、環境によってどちらを選択すべきか変わる、というのが実情です。たとえば、空冷式は排熱が発生してしまいます。そのため、屋内で利用すると室温を高める可能性があります。この場合は、水冷式を選ぶのがベターです。
一方、水冷式は冷却水が必要になるため、設置できる場所が限られます。水道が引けないような場所では利用自体できません。そのほか、チラーを移設する可能性があるといった、運用上の事情で選択肢から外れる場合もあるでしょう。
なお、チラーは屋内タイプと屋外タイプに分類されることもあります。冷却対象の機器の近くにチラーを設置したい、配管をできるだけ短くしたい、といった場合には、屋内タイプが選ばれるケースが多い傾向にあります。
循環方式:密閉系循環式・開放系循環式
チラーには、「密閉系循環式」と「開放系循環式」という冷却方法があります。これは、冷却する対象物をどのように冷やすかによる分類です。両者の違いを解説します。
密閉系循環式には、ホース等で直結された熱交換器等を使った密閉回路が用いられます。装置内部に設けられた水槽は密閉されているため、チラー水がポンプで外に送り出されると、真空状態が生まれます。そのため、送り込んだチラー水が再度水槽へと吸い込まれ、循環が発生するというのが仕組みです。
一方、開放系循環式は、上面が開かれた水槽等を使った開放回路が用いられます。風呂桶のように開放された水槽からチラー水を吸い上げる必仕組みのため、自給式ポンプが必要です。
ここでのポイントは、密閉系循環式と開放系循環式の互換性です。循環経路は工場の環境によって異なります。チラー導入時には、必ず密閉系回路と開放系回路のどちらなのかを確認しましょう。なお、密閉系循環式は錆、開放系循環式は腐食といった注意点があります。
冷却水との違い
チラー水と冷却水は、同じ意味で捉えられるケースが少なくありません。確かに、冷却のためにチラー水を使っている場合は、チラー水を冷却水と呼んでも差し支えないでしょう。しかし前述のとおり、チラー水は温度の調整い用いられるのが前提です。もしも機器の温度を高めることを目的にしている場合は、冷却水とは呼べません。
また、チラー水はチラーによって循環することも特徴です。冷却水は必ずしも循環が求められるわけではないので、この点にも相違があります。まとめると、以下のように定義ができます。
- チラー水は、チラーに用いられる温度調整のための液体
- 冷却水は、対象物の冷却のために使われる水
ちなみに、チラー水は水道水だけでなく、さまざまな液体が用いられます。目的や用途によって、必要な液体を替えられるという点も特徴と言えるでしょう。
チラー水の必要性
すでにご紹介したとおり、チラー水は“機器を冷やす”のではなく、“機器の温度を調整する”という点が、大きなメリットです。
単に機器を冷却するだけであれば、水道水やクーリングタワーの水をかけるだけでも構いません。しかし、産業用機器のなかには、温度を一定に保つ必要があるものも存在します。こうした際、温度管理がなされているチラー水が役に立つのです。
たとえば季節による違いで考えてみましょう。夏場と冬場とでは、室内温度にも大きな差があります。単に水をかけて機器を冷やすやり方だと、室温による影響で機器温度に大きな差が生まれるでしょう。一方、チラー水の場合には、その機器自体の温度に合わせた調整が行えます。季節を問わず、常に同じ温度が保てるため、製品の品質コントロールに大きく寄与するでしょう。
チラー水は食品工場でも活躍
次に、食品工場におけるチラー水の重要性についても見ていきましょう。分かりやすい例が、食品加工時に使われる“水”です。
野菜や魚の洗浄、生地などの材料など。食品加工において水は欠かせません。豆腐などの場合は、冷水を大量に用意する必要もあります。こうした用途で水を使う場合には、正確な温度調整が求められます。万が一、温度管理を疎かにすると、品質のバラツキや歩留まりの悪化が発生することも。最悪の場合、微生物の繁殖による食品事故も考えられるでしょう。
チラーを導入すれば、一定の水量における水の温度を最適に保てます。結果、製品の品質維持や、食の安全性確保にもつながるのです。
チラー水の温度管理
チラーによる温度調整を適切に行うためには、内部のチラー水の温度管理徹底が重要になります。その理由は、チラー水の温度がチラーの冷却能力に大きく影響するからです。
とくに注意したいのが、設定温度とチラー水の種類です。どのくらいの温度にチラー水を保つのかは、しっかりと精査してください。また、水道水以外の液体についても、効率等を踏まえた検討が必要です。チラーの温度調整が適切に行えるよう、性能を最大限に引き出せる設定を考えましょう。
チラーの故障を発見するのにもACALAは役立ちます
チラーの温度管理は、本体に搭載された温度計等で行われます。チラー水が設定した温度になるよう、自動で処理がなされます。もしも何らかの原因でチラー水が設定温度にならないという場合は、チラーのアラート機能などが役立ちます。ただし、温度計機能やアラート機能が故障していたり、そもそもアラート機能自体が付いていなかったりする場合には、異常に気づけない可能性もあるでしょう。
こうした際に役立つのが、当社がご提供する自動温度管理システム「ACALA MESH」です。水温測定用センサで冷却水や加熱消毒槽の温度を常時計測・監視しておけば、チラーに故障が起こった際も安心です。
また、計測したデータを基にチラーの温度設定を見直す、といった使い方もおすすめです。
まとめ
食品工場などでも欠かせないチラー。その品質維持のためには、温度管理システムの導入がおすすめです。すでにチラーを導入しているけれども、温度管理に悩んでいたという方は、ぜひ当社のACALA MESHをご検討ください。