

温度計の校正は必須!頻度とタイミング、校正方法を紹介

温度計の精度は時間とともに低下してくるため、温度計の校正が重要になります。校正を怠れば、品質管理や安全面に問題が生じる可能性があるため、注意が必要です。 本記事では、温度計の校正の必要性、頻度とタイミング、怠った場合のリスク、校正方法について解説します。併せて正確な温度計を利用できる当社のサービスもご紹介しますので、ぜひご一読ください。
温度計の校正の必要性・頻度とタイミング
食品の安全管理(HACCP)、医薬品の品質保持(GMP)、工業製品の製造プロセスなど、さまざまな分野において温度管理は重要な要素です。
わずかな温度のズレが、製品の品質低下や安全性の問題、法規制の違反、経済的な損失に繋がる可能性があります。それゆえ、適切な頻度とタイミングで温度計の校正を行う必要があります。
温度計の校正が必要な理由
温度計の校正は、製品の安全や品質維持、法的要件遵守や企業信頼性向上という事業継続に不可欠な4つの理由から必要です。
温度計の校正の頻度とタイミング
温度計の校正頻度に正解はありませんが、一般的に年1回以上が推奨されています。最適な頻度とタイミングは、温度計の種類、使用環境、使用頻度、メーカー推奨、社内規定や法的要求によって異なります。
温度計の精度は時間とともに変化するため、定期的なチェックと調整が不可欠です。また、特定のイベント発生時には都度校正することで継続的な信頼性を確保できます。
一般的には「年に1回」が基準ですが、より厳しい管理が求められる場合や過酷な環境では、半年に1回や四半期に1回など短い間隔が望ましいこともあります。
≪具体的に校正を検討すべきタイミング≫
- 新規導入時:使用開始前に校正
- メーカー推奨期間経過時:メーカー指示に従う
- 重要な測定・工程の前:クリティカルな管理ポイント(CCP)に関わる測定前など
- 測定値に疑問を感じた時:「いつもと違う」「他の温度計と明らかに異なる」場合
- 修理・調整後:必ず校正し、正常機能を確認
- 落下・衝撃を与えた後:精度が狂っている可能性あり
- 長期間使用していなかった場合:再使用前に校正
自社の状況や関連法規制を考慮し、適切な校正頻度やタイミングを定めた社内ルールを策定し、実行しましょう。
温度計の校正を怠った場合のリスク
温度計は、センサーの経年劣化、使用環境、内部部品の消耗など、さまざまな要因で測定値にズレが生じてきます。このズレを放置すること、つまり校正を怠ることで、次のようなリスクが生じるため、注意が必要です。
校正を怠ると起こること
温度計の校正を怠ると、正しい温度測定や記録ができないだけではありません。食中毒事故や製品の品質劣化、最悪の場合は大規模な製品回収や信用失墜といった、事業の根幹を揺るがす事態に繋がる可能性があります。
校正されていない温度計は、実際の温度と表示温度にズレが生じている可能性があります。このズレを認識せず温度管理を行うと、不適切な温度環境で製品が扱われ、問題を引き起こす可能性が高まります。
・正しい温度の測定や記録ができない
表示温度が真の値からどれだけズレているか分かりません。温度計が示す温度を適正温度だと誤認した場合、不適切な記録を残し続けます。これは品質管理システムそのものの機能不全です。
・食品事故に繋がる恐れがある
不正確な温度管理は食中毒菌増殖の原因です。加熱殺菌温度が低すぎれば菌は死滅せず、冷却温度が高すぎれば菌が増殖します。たとえばO-157やサルモネラ菌などは、わずかな菌数でも重篤な食中毒を引き起こす可能性があり、校正されていない温度計が引き金となり得ます。
・食品トラブルによる回収リスクがある
製品品質問題や食中毒発生時、温度管理記録が検証されます。使用温度計が未校正だったり校正記録に不備があったりすると、企業側の管理体制不備を問われます。最悪の場合、製品回収、企業ブランドイメージダウン、多額の損害賠償に発展する可能性も否定できません。
これらのリスクは他人事ではありません。「少しくらい大丈夫」という油断が取り返しのつかない事態を招く可能性があることを肝に銘じ、定期的な校正を徹底しましょう。
温度計の校正方法
温度管理システムを選ぶ際、法律を遵守するのは大前提です。システムの効果を最大限に生かすためにも、自社に適したシステムを選ぶ必要があります。
熱湯や氷水を使用
熱湯や氷水は比較的安定した温度が得られるため、温度計の簡易的な精度チェック(校正)に利用できます。
水の沸点と凝固点は一定条件下で物理的に定まった温度を示すため、これらを基準に温度計の指示値と比較し、ズレを確認することが可能です。
・氷水(0℃)の場合
容器に砕いた氷と少量の水を入れ、全体が0℃に近づくのを待ちます。温度計の感温部を中央に浸し、安定後の指示値と0℃とのズレを確認しましょう。
・熱湯(約100℃)の場合
沸騰したお湯に感温部を浸し(火傷注意、対応温度確認)、安定後の指示値と100℃とのズレを確認。
水の純度や気圧で沸点や凝固点は変動します。そのため、この校正方法はあくまで簡易チェックであり、高精度な校正には不向きです。手軽な日常チェックに有効ですが、厳密な管理には他方法との併用や専門家による校正を検討しましょう。
複数の温度計を集めて相互比較
複数の温度計(3本以上推奨)を同じ環境に置き、指示値を比較することで、大きくズレている温度計がないかを確認する方法も有効です。
全ての温度計が同時に同じ方向に大きく狂う可能性は低いため、他と明らかに異なる値を示すものは精度に問題がある可能性が高いと推測できます。
具体的な方法は、校正したい温度計と他の信頼できる温度計を、温度変化の少ない安定した環境に近接して設置します。指示値が安定するまで待ち、各値を同時に読み取り比較しましょう。著しく異なる値を示すものは校正や故障の可能性があります。
この方法だけで厳密に校正するのは難しいため、定期的な正式校正との併用が望ましいです。
標準温度計を使用
標準温度計は国家標準等で校正された高精度温度計です。校正対象の指示値を比較し、信頼性の高い校正を行います。
標準温度計の指示値の正確さは公的に保証されているため、これを基準に校正対象のズレを正確に把握し、必要に応じて補正できます。
- 適切な標準温度計(ガラス製基準温度計、白金抵抗温度計等)を用意する
- 校正対象と標準温度計の感温部を近接させ、恒温槽等の均一で安定した温度環境に設置する
- 両方の指示値が安定後、同時に読み取り比較し、器差を記録する
- 必要なら補正値の作成や調整をする。管理温度範囲内の複数ポイントで実施すると特性を詳細に把握できる
標準温度計は高価で定期的な再校正が必要です。正確な比較校正には適切な設備や技術が求められるため、JCSS認定事業者等の専門業者へ依頼しましょう。
毎年新品に買い替え
温度計を定期的に新品に買い替えるのも、校正の手間を省き常に新しい状態で使用できるので望ましいです。
新品温度計は基本的にメーカー出荷時の精度が保証されているため、校正作業を省略できるメリットがあります。
注意点としては、毎年の購入コストが発生することです。稀に初期不良の可能性や、古い温度計の廃棄処理問題、HACCP等認証で「新品買い替え」だけでは校正記録として不十分な場合があります。
安価な温度計なら毎年新品買い替えも選択肢ですが、コストや廃棄物、認証要求を総合的に考慮すべきです。
まとめ
正確な温度測定は、製品の品質や安全性、企業の信頼を守る上で欠かせません。そのため、温度計の定期的な校正が重要になります。しかし、校正には手間とコストがかかるという課題があり、負担がかかるのが難点でした。
当社サービスではご契約いただいているお客様の温度計を、定期的に無償で検査済みの新しい温度計と入れ替えています。
つまりお客様は、古くなった温度計をずっと使い続けることがないので安心です。交換は、バッテリーが無くなってきたタイミングで行うことをおすすめします。目安は、2−3年に1回程度の頻度です。
また、より短い期間で温度計のチェック(校正)をしたいというお客様には標準器(校正済みの温度計)を貸し出すサービス(有償)も行っていますので、ぜひご検討ください。

