2019.04.25.Thu

HACCPの旧基準A・Bの違いは?飲食店や食品工場で異なる要件について

食品製造に関わる衛生管理手法であるHACCPには、2種類の異なる基準があります。こちらでは、この基準の内容や、適用予定の事業者についてご紹介します。合わせて、それぞれの基準に共通する要求事項についても解説を行っておりますので、ぜひご覧ください。

HACCPには2種類の基準がある

HACCPは事業規模等に応じて2つの基準が設けられています。
たとえば大規模な食品工場と個人経営の飲食店とで、同一の衛生管理手法を実施するのは現実的ではありません。とくに小規模の事業者にとっては、HACCP導入が大きな負担となる可能性も高いでしょう。こうした背景から、“事業規模に合わせて、どこまで要求事項を実施すべきか”を示したレベル分けが行われました。
当初、この基準は「基準A」「基準B」と呼ばれていました。前者はHACCPに基づく衛生管理を厳格に行うもの。後者は、弾力性を持たせたものとされています。
しかし、HACCP制度化に向けた審議のなかで、「内容が分かりにくい」という指摘がなされました。結果、前者は「HACCPに基づく衛生管理」、後者は「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」という呼称に変更されました(内容についての変更はなし)。

今回は、読みやすさに配慮し以下の表記で話を進めていきます。
 
・ HACCPに基づく衛生管理=旧基準A
・ HACCPの考え方を取り入れた衛生管理=旧基準B

● 大規模な食品工場は旧基準A

2019年5月現在、旧基準Aに分類される事業規模の条件は決定していません。ただし、従業員の多い大企業や大規模な食品工場において、旧基準Aが適用される見込みとされています。なお、求められる事項はHACCPの7 原則を要件とする以下の衛生管理です。
 
【旧基準Aにおける衛生管理計画方法と要求事項】
旧基準Aでは事業者に衛生管理計画立案の方法として、「HACCPプランの作成」を求めています。加えて、以下にある事項のすべてを実施するよう要求しています。
 

  • 危害要因分析
  • 重要管理点の決定
  • 管理基準の設定
  • モニタリング方法の設定
  • 改善措置の設定
  • 検証方法の設定
  • 記録と保存方法の設定

● HACCPの考え方を取り入れた衛生管理=旧基準B

旧基準A同様、旧基準Bについても明確な適用条件は示されていません。予定としては、以下のような事業者が旧基準Bの適用を受けるとされています。
 
  ◉ 従業員の少ない小規模事業者
  ◉ 店舗で小売販売のみを行う製造・加工・調理事業者
  ◉ 提供食品が多岐にわたり、変更頻度の多い業種
  ◉ 一般衛生管理の管理で対応が可能な業種
 
イメージとしては、個人経営の飲食店やスーパーなどには、旧基準Bが適用されると考えられます。なお、旧基準Aとは異なり、HACCPの衛生管理方法を踏襲しつつ、基本的には一般衛生管理のみで問題ないというのが旧基準Bの主な内容です。

 
【旧基準Bにおける衛生管理計画方法と要求事項】
旧基準Bでは、HACCPの考えに基づく衛生管理計画の作成が求められます。加えて、以下の3点が要求事項に挙げられています。
 

  • 危害要因分析
  • モニタリング頻度決定
  • 記録作成・保管の弾力化の検討

旧基準A・Bで共通する内容

旧基準Bで挙げられた要求事項は、旧基準Aと重複しています。以下から、それぞれの内容を簡単にご紹介します。

● 危害要因分析

まずは食中毒事故につながる可能性を持った危害要因を分析。その後、資料として取りまとめます。なお、旧基準Aにはここで分析表の提出が求められますが、旧基準Bについては不要となるケースも。ただし、リスク回避のためには積極的な実施が推奨されます。

● モニタリング頻度決定

危害要因を取り除くための管理基準を設定。加えて、それが適切に管理されているかをモニタリングします。なお、旧基準Bについてはオペレーション上モニタリングが困難なケースも想定されており、この場合は頻度を減らすことが認められています。

● 記録作成・保管の弾力化の検討

HACCPでは、モニタリングの結果を基にPDCAサイクルを回し、改善を行うのが基本です。そのためには、適切な記録の作成・保管および弾力化が必要になります。しかし、旧基準Bに該当する事業者にとって負担が大きいようであれば、簡易的なものへの変更が認められました。ただし、負担軽減のための措置などを取り、可能な限り対応をすることも大切であると言えるでしょう。

旧基準A・Bで共通する自動温度記録・管理の重要性

旧基準A・B、いずれにも適用されているモニタリングと記録作成・保管は、食品事業者が衛生管理を行ううえで非常に大切です。しかし、とくに小規模事業者にとっては負担増の関係から、頻度低減や簡易的な実施を選択せざるを得ない状況もあるでしょう。

こうした際に役立つのが、自動温度記録・管理ソリューションです。当社の温湿度の統合監視記録ソリューション「ACALA」であれば、連続データの確実な取得と、クラウドプラットフォームを用いたリアルタイム監視が可能。さらに、蓄積されたデータの分析も容易です。

人的リソースを使わずに、短時間・低労力でHACCPに対応できる点は大きなメリット。適用基準にかかわらず、導入をおすすめします。

まとめ

HACCPに紐付く旧基準A・Bは、小規模事業者の労力低減が目的です。しかし、食品を扱う以上はできる限りの衛生管理を実施するのが重要と言えるでしょう。当社のACALAは、こうした想いを持つすべての食品事業者様をサポートいたします。