2026.02.06.Fri

ホテルにおける大量調理の基本|マニュアル最新版の変更点と運用ポイント

多くのお客様に食事を提供するホテルの厨房において、食中毒事故は絶対に許されない重大なリスクです。しかし、厚生労働省が定める「大量調理施設衛生管理マニュアル」は内容が細かく、最新版への対応やHACCP(ハサップ)に沿った厳格な記録管理は、現場のスタッフにとって大きな負担となっているのが現状ではないでしょうか。 そこで本記事では、大量調理施設衛生管理マニュアルでの基本から、最終改正の重要ポイント、そして現場で無理なく運用するための具体的な方法を解説します。安心・安全な厨房環境作りのヒントとして、ぜひご一読ください。

大量調理施設衛生管理マニュアルとは?

大量調理施設衛生管理マニュアルとは、集団給食施設等において食中毒予防のために厚生労働省が示した、重要管理事項をまとめた通知のことを言います。HACCPの考え方に基づき、原材料の受け入れから調理、提供に至るまでの各工程でどのような衛生管理を行うべきかが詳細に定められたものです。

ホテル業界においても、特に宴会場を持つ施設や大型ホテルでは、このマニュアルに基づいた衛生管理の実施が、事実上求められています。

まずは、自社のホテルがこのマニュアルの対象となるのか、HACCPとどのように共存させていくべきなのか、その定義と位置づけを正しく理解しましょう。

対象となるホテルの条件

原則として、大量調理施設衛生管理マニュアルは「同一メニューを1回300食以上」、または「1日750食以上」を提供する調理施設に適用されます。大型ホテルや、宴会・ブライダルで大量の食事を提供する厨房は、ほぼ例外なくこの定義に該当すると考えて良いでしょう。

一般的なレストランなど、これより小規模な施設は直接の対象外となりますが、油断は禁物です。厚生労働省は、食中毒リスクを確実に低減させるため、中小規模の施設であってもこのマニュアルの趣旨に則った衛生管理を行うよう強く推奨しています。規模に関わらず、この基準は、安全管理における一つの有効な指針と言えるでしょう。

HACCPとの違い

HACCPは食中毒予防のための「管理手法(システム)」そのものを指し、具体的な手順や統一された数値基準までは定義されていません。一方で、大量調理施設衛生マニュアルはHACCPの概念に基づき、厚生労働省が現場で守るべき具体的なルール(加熱温度や時間など)が定められています。

たとえて言うなら、HACCPが「設計図」なら、大量調理施設衛生マニュアルは「施工手順書」のような関係です。そのため、このマニュアルに記載された厳格な基準に沿って衛生管理を徹底していれば、実質的にHACCPの考え方に則った高度な食品安全マネジメントが実践できていると言えるでしょう。

大量調理施設衛生管理マニュアル(最終改正)のポイント

大量調理施設衛生マニュアルは、O157やノロウイルスなどの新たな脅威や、科学的な知見の蓄積に合わせて、度々改正が行われています。「昔覚えた知識のままで止まっている」ことは、衛生管理責任者としてリスクは大きいです。

特に「最終改正」と呼ばれる最新版では、ノロウイルス対策の強化や、記録管理の重要性がより一層高まっています。

ここでは、多忙な業務の中でも必ず押さえておくべき、最新の改正ポイントを要約して解説します。現場の運用ルールが古いままになっていないか、この機会にチェックしてみてください。

原材料の下処理段階における管理

平成29年6月の改正では、特に抵抗力の弱い高齢者や子供への配慮が厳格化されました。具体的には、野菜や果物を加熱せずに提供する場合、皮をむくケースを除き、次亜塩素酸ナトリウム等による殺菌工程を行うことが規定されました。

ホテルにおいても、高齢のゲストや小さなお子様を含む宴会やビュッフェを提供する際は、この基準に準じた対応が強く求められます。また、加熱せずにそのまま食べる食品を外部から仕入れる際は、製造業者の衛生管理体制までさかのぼって確認しなくてはなりません。

調理従事者の衛生管理

調理スタッフ個人の管理ルールも強化されました。全スタッフは作業開始前に自身の健康状態を確認・報告し、その内容を記録として残すことが求められています。

特にノロウイルスが流行する10月から3月の間は、月に1回以上の検便検査の実施に努める必要があります。また、検査で陽性反応が出た場合は、たとえ下痢や嘔吐などの自覚症状がない「無症状病原体保有者」であっても、再検査で陰性が確認されるまでは食品に直接触れる作業から外れるなど、徹底した対応が求められます。

衛生管理体制の確立

現場責任者(衛生管理者)には、スタッフの健康状態を確実に把握・管理する仕組みづくりが求められます。単に報告を待つのではなく、毎日作業前に一人ひとりの体調を確認し、その記録を保存しなければなりません。

冬季のノロウイルス定期検査の実施はもちろん、検査で陽性者が出た際の対応フローも重要です。無症状であっても現場に入れないという厳しい判断や、その際の代替要員の確保など、組織全体としてウイルスを持ち込ませない強固なマネジメント体制の構築が不可欠となっています。

大量調理施設衛生管理マニュアルの運用ポイント

 

マニュアルの内容を理解したとしても、忙しい実際の厨房で、100%実行し続けることは容易ではありません。

「理想はわかるが、現実は厳しい」という声も多いですが、マニュアルの規定を日々のオペレーションにどう落とし込むかが重要です。

特に重要となるのが、食中毒の発生リスクが最も高い「原材料の受け入れ」「温度管理」「二次汚染防止」の3点です。ここでは、大量調理施設衛生管理マニュアルにおける具体的な運用ポイントを見ていきましょう。

原材料の受け入れ・下処理段階における管理

ホテルに届く多種多様な食材は、消費期限や保存状態がそれぞれ異なります。まず徹底すべきは「検収時の温度確認」です。

特に冷蔵品(概ね10℃以下)や冷凍品(-15℃以下を目安)は、配送トラックの温度計だけでなく、食材そのものの表面温度を放射温度計などで確認し、基準を逸脱している場合は受け取りを拒否することも必要です。

温度管理

食中毒菌の多くは、適切な温度管理によってその増殖を阻止、あるいは死滅させることができます。そのため、大量調理の現場において、温度管理は必須です。

厨房では食材の搬入から下処理、加熱、冷却、提供に至るまで、温度帯が刻々と変化し続けます。マニュアルではあらゆる工程での温度記録が求められていますが、ここでは特に食中毒発生リスクに直結する、「2つの重要なタイミング」を挙げます。

■原材料の受け入れ時

納品された食材は、常温で放置される時間が長くなるほど菌が増殖します。検収後は「直ちに」所定の冷蔵庫・冷凍庫へ移動させるフローを確立してください。大量入荷時などは一時保管場所が常温になりがちですが、食材の中心温度が上がる前に収納することが鉄則です。

■加熱調理中

「美味しさ」と「安全性」の両立は重要ですが、安全性の基準は絶対です。中心温度計を使用し、3点(最も火が通りにくい場所など)を測定します。基準である「75℃1分以上(ノロウイルス対策時は85〜90℃を90秒以上)」をクリアしていることを確認し、その数値を必ず記録に残してください。この記録が、万が一の際の証明となります。

保管時の交差汚染・二次汚染の防止

冷蔵庫内は「上から下へ」汚染物質が落下することを前提に配置を決めます。最上段にはそのまま提供するサラダや調理済み食品を、最下段にはドリップが出る可能性のある生肉や鮮魚を配置します。

また、調理器具(包丁・まな板・ふきん)の「色分け管理」は有効です。用途別(肉用=赤、魚用=青、野菜用=緑など)に使い分けることで、忙しいピーク時でも視覚的にミスを防ぎ、交差汚染のリスクを物理的に遮断できます。

原材料及び調理済み食品の温度管理

加熱調理後の「冷却」では、菌が最も増殖しやすい20℃〜50℃の温度帯をいかに早く通過させるかがポイントです。

調理後30分以内に20℃近くまで中心温度を下げる(または60分以内に10℃付近まで下げる)急速冷却を行い、その開始・終了時刻を記録します。また、調理済み食品を保管する際は、10℃以下または、65℃以上をキープし、菌が増える隙を与えない管理を徹底しましょう。

調理従事者の衛生管理

実際に発生している食中毒事故の原因を分析すると、その多くが調理スタッフの手指を介した汚染や、自覚症状のない保菌者からのウイルス持ち込みに起因するケースが多いです。

数百人、数千人のゲストに食事を提供するホテルの厨房において、スタッフ一人ひとりの衛生意識の欠如は、そのままホテルの存続に関わる重大なリスクとなります。

ここでは、物理的にウイルスや菌を洗い流す「正しい手洗い」や、組織としてウイルスを厨房内に持ち込ませないための「体調管理」が重要です。

■正しい手洗い

手洗いは「2度洗い」が推奨されています。石鹸で洗い流した後、再度石鹸で洗うことでウイルス除去効果が高まります。作業開始前、トイレの後、生肉を触った後は必ず実施し、手洗いマニュアルを流し台の目の前に掲示して手順を遵守させましょう。

■体調管理

スタッフ本人はもちろん、同居家族の健康状態もリスク要因です。家族が胃腸炎の場合、本人が無症状でもウイルスを保有している可能性があります。出勤前の報告を義務化し、少しでも懸念がある場合は調理業務から外す、あるいは出勤停止にする判断基準を明確にしておくことが、クラスター発生を防ぐ手段です。

従来の温度管理の課題と対策

ここまで解説してきた通り、大量調理施設衛生管理マニュアルを遵守するための要は「徹底した温度管理と記録」にあります。

しかし、多くの現場では未だに「温度計を目視し、紙の帳票に手書きする」というアナログな手法が主流です。人手不足が深刻化するホテル業界において、この従来手法はスタッフの負担になるだけでなく、記録ミスや改ざんといった重大なリスクをはらんでいます。

ここでは、手動管理が抱える構造的な限界を整理した上で、それらを一挙に解決する最新のIoT技術(温度管理システム)についてご紹介します。

【課題】手動による管理の限界

紙媒体を中心とした従来のアナログな記録・管理手法は、生産性を下げる最大の要因であり、同時に新たな衛生リスクさえも生み出します。具体的な弊害について、現場の実態に即して見ていきましょう。

■異常時の対応に時間がかかる

手動管理の弊害は、トラブル発生時の「初動の遅れ」に顕著に表れます。

万が一温度異常や食中毒の疑いが生じた際、膨大な紙のファイルから該当する日時の記録を探し出すのは困難を極めます。また、夜間など責任者が厨房に不在の場合、紙の台帳では正確な状況を電話等で伝えることが難しく、的確な指示が出せません。

この判断の遅れが、食材の大量廃棄ロスを招き、対応の遅れによるお客様からの信頼低下に直結します。

■記録ミスや抜け漏れが生じる

手書きによる記入漏れや、癖字で判読できないといったデータ不備だけが問題ではありません。実は「紙とペン」そのものが、衛生管理上の新たなリスク要因となるのです。

水や油が飛び交う厨房で、汚れた帳票を触った手で再び調理に戻れば、交差汚染の原因になります。さらに、濡れて破れた紙片や、ボールペンのキャップなどが料理に混入する事故の可能性も否定できません。

【対策】タイムマシーン株式会社の温度管理システムのメリットと導入効果

当社の温度管理システム「ACALA(アカラ)」は、通信機能を持った温度計とスマホ/タブレット/パソコンなどの活用により、これらの課題を根本から解決します。

温度データは自動でクラウドに送信されるため、人が記録する手間がゼロになり、他の業務を圧迫しません。異常値が出れば即座にアラートで通知されるため、損失を最小限に食い止めることが可能です。

また、完全ペーパーレス化により、紙やペンの持ち込み自体が不要となるため、異物混入リスクも軽減できます。現場の負担を減らし、安全と効率化を同時に実現する「ACALA」は、DX時代の新しい衛生管理のスタンダードです。

まとめ

ホテルにおける大量調理は、多くのお客様に喜びを提供する場であると同時に、徹底した衛生管理が求められる現場でもあります。大量調理施設衛生管理マニュアルの遵守は必須ですが、すべてを人の手で行おうとすれば、現場は疲弊し、ミスが生まれるリスクも高まります。

重要なのは、「人の判断が必要な工程(検収や調理)」に注力し、「単純な記録・監視」はシステムに任せるという切り分けです。HACCPの義務化やマニュアルの厳格化は、裏を返せば「管理体制を見直す絶好の機会」でもあります。

現場の負担を減らしながら、食中毒リスクを限りなくゼロにするためにも、ぜひ一度、当社の温度管理システムの導入をご検討ください。まずは資料請求で、その効率化の仕組みをご確認いただければ幸いです。