【温度計の測り方】食品衛生の基本!正確な温度計測の重要性
食品の安全管理において、温度計の正しい測り方は非常に重要です。特にHACCP制度の導入により、食品の中心温度の正確な把握が義務付けられています。 しかし、「正しい測り方がわからない」「どの温度計を選べば良いかわからない」といった悩みを持つ方も多いでしょう。 本記事では、食品衛生における温度計の正しい測り方、種類ごとの特徴、校正の重要性について詳しく解説します。安心・安全な食品管理のためにも、ぜひご一読ください。
正しい温度計の測り方が重要な理由
食品の安全を守る上で、温度管理は欠かせない要素です。食品の温度が不適切だと、細菌の増殖を招き、食中毒の原因となる可能性があります。
特に加熱・冷却工程においては、中心温度が微生物の制御に直結します。また、HACCP制度の導入が進む現代において、温度計を用いた正確な計測と記録は、食品事業者に課せられた義務です。
ここでは、温度計の正しい測り方が重要な理由について詳しく解説します。
食品の安全性を確保するため
食品の安全性を確保するには、正確な温度計測が不可欠です。
食中毒菌の多くは、特定の温度帯で急速に増殖します。サルモネラ菌やO-157などの病原性大腸菌が活発になるとされる「危険温度帯」は、約10℃〜60℃です。危険温度帯を避けて適切に加熱・冷却・保管することが、食品の安全性を保つ上で最も重要です。
加熱調理では食品の中心部が75℃で1分間以上加熱されているかを確認することで、菌を死滅できます。また、冷蔵・冷凍保存では、適切な低温を維持することで菌の増殖を抑制することが可能です。
正確な温度計で適切な温度管理を行うことが、消費者に安全な食品を提供し、食中毒のリスクを低減する直接的な手段となります。
HACCP制度への対応
HACCP制度への対応にも、温度計の正しい測り方が必須です。HACCPは、食品の安全性を確保するための国際的な衛生管理手法であり、日本でも2020年6月から全ての食品事業者に導入が義務化されました。
HACCPでは、危害要因分析に基づき、重要管理点(CCP)を設定し、連続的に監視・記録することが求められます。食品の温度管理は、CCPにおける重要な要素のひとつです。
温度を監視する場合、設定された基準値が達成されているか、定期的に温度計で計測し、記録する必要があります。この記録が不正確であれば、HACCPの要件を満たせず、行政指導や営業停止処分などのリスクに繋がりかねません。
そのため、HACCP制度を遵守し、食品の安全性を客観的に証明するためには、温度計を正しく使用し、正確なデータを記録することが重要になります。
食品ロス削減への貢献
正しい温度管理は、食品ロスの削減にも有効です。不適切な温度管理は、食品の品質劣化を早め、消費期限前であっても廃棄せざるを得ない状況を生み出します。
特に、生鮮食品の保管において、設定温度よりも数℃高い環境で管理された場合、品質の劣化が早まり、通常の賞味期限よりも早く廃棄される可能性が高いです。
正確な温度計で常に最適な温度を維持することで、食品の鮮度を長く保ち、廃棄量を減らせます。
温度計による厳密な温度管理は、食品の品質保持期間を最大化し、無駄な廃棄を減らすことで、経済的な損失を防ぎ、持続可能な食品生産・流通に貢献するのです。
温度計の種類と特徴

現在市場には様々な種類の温度計が出回っており、それぞれに異なる特徴と用途があります。そのため、測定原理や適した使用シーンに合わせて最適なものを選び、正しく測定することが大切です。
ここでは、主な温度計の種類とそれぞれのメリット・デメリット、用途に合わせた適切な選び方のポイントについてご紹介します。
棒状温度計(中心温度計)の基本と実践的な使い方
棒状温度計、特に中心温度計は、食品の内部温度を正確に測る上で基本となるツールです。
棒状温度計は、センサー部を測定対象に直接差し込むことで、その点の温度を直接計測します。これにより、食品の表面温度だけでなく、調理や保管における品質管理上最も重要な「中心温度」を確実に把握できます。
HACCPにおいては食品の中心温度の確認が必須となるため、棒状温度計は不可欠です。
棒状温度計は構造がシンプルで扱いやすく、比較的安価なものも多いため、多くの食品現場で活用されていますが、正しい差し込み方と衛生管理が重要です。
放射温度計(非接触型)の利点と測定時の注意点
放射温度計は、物体が放射する赤外線エネルギーを検知して温度に換算する仕組みの温度計です。非接触測定の特性により、食品に直接触れることによる汚染リスクを回避できるだけでなく、高温の物体や動きのある物体の温度も安全かつ迅速に測定できます。
例えば、ベルトコンベアで流れる調理済み食品の表面温度を連続的にチェックしたりする際に便利です。
ただし、表面温度しか測定できないため、食品の中心温度の測定には適していません。また、測定距離や対象物の材質によって測定値に誤差が生じる可能性があるため、取扱説明書を確認し、適切に使用する必要があります。
デジタル温度計のメリットと校正の重要性
デジタル温度計は、精度の高い測定値と読み取りやすさで、現代の食品現場で広く普及しています。
温度センサーで検知した電気信号をデジタル表示するデジタル温度計は、アナログ式に比べて目盛りの読み間違いが少なく、迅速かつ正確な温度確認が可能です。多くの製品が防水機能を備え、アラーム機能やデータ記録機能を搭載しているものもあり、より高度な温度管理をサポートします。
調理中の油の温度管理や、冷蔵庫・冷凍庫の庫内温度監視、食品の中心温度計測など、活用の幅は広いです。
精密機器であるデジタル温度計も、使用頻度や経年劣化によって測定値に誤差が生じることがあります。そのため、定期的な「校正」を行い、常に正確な測定ができる状態を維持することが重要です。
用途別の選び方のポイント
温度計を選ぶ際には、使用目的と測定対象に合わせた適切な種類を選ぶことが大切です。 異なる食品や環境での温度測定には、最適な温度計があります。
例えば、食品の中心温度を測る必要がある場合と、庫内や表面温度を測る場合では、選ぶべき温度計の種類が異なります。不適切な温度計を使用すると、正確な測定ができないばかりか、衛生面や作業効率にも悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。
生肉や調理済み食品の中心温度を測るなら、プローブが細く、素早く測定できる「デジタル中心温度計」が適しています。一方、コンベア上の食品の表面温度を瞬時に確認したい場合や、液体の温度を非接触で測りたい場合は「放射温度計」が最適です。
温度計校正の方法・頻度とタイミング
温度計は精密機器であるため、使い続けるうちに測定値に誤差が生じることがあります。正確な温度管理を維持するためには、定期的な「校正」が必要です。
ここでは、温度計の校正方法、許容される誤差の範囲、適切な校正を行う頻度、校正が必要となるタイミングについて解説します。
許容される温度の誤差範囲
温度計の測定値には、許容される誤差範囲が存在します。どんなに精密な温度計であっても、わずかな測定誤差は避けられません。
しかし、この誤差が許容範囲を超えてしまうと、食品の安全管理に大きな影響を与えかねません。HACCPシステムでは、重要管理点(CCP)における監視項目とその許容限界が定められており、温度計の誤差もこの限界に影響を及ぼします。
食品の加熱工程で中心温度75℃以上が基準とされている場合、温度計が実際よりも高く表示される誤差があったとすると、基準を満たさない温度で加熱を終えてしまい、食中毒のリスクが高まります。
自社のHACCPプランや関連法規に基づき、測定ポイントで許容される誤差範囲を明確に定義しておきましょう。
温度計校正を行う頻度とタイミング
温度計の校正は、定期的に行うだけでなく、特定のタイミングでも実施する必要があります。
温度計の精度は、使用頻度、保管環境、衝撃の有無などによって変動するためです。一定期間ごとの定期的な校正に加え、異常が疑われる際や重要な使用前に都度校正を行うことで、常に高い測定精度を維持できます。
一般的な目安として、HACCPの運用ガイドラインでは、校正は年1回程度行うことが推奨されています。しかし、以下のような場合には、推奨頻度に関わらず校正を実施すべきです。
- 温度計を落としたり強い衝撃を与えたりした場合
- 明らかに測定値にずれがあると感じた場合
- 新しい温度計を導入した直後、温度計の電池を交換した直後
- 重要な温度管理を行う前
温度計校正を怠った場合のリスク
校正されていない温度計が示す測定値は、実際の温度と異なる可能性があり、誤った食品管理に繋がります。
不正確な温度に基づいて加熱が不十分になったり、冷却が不十分になったりすれば、食中毒菌が増殖するリスクが高まり、結果として消費者の健康を脅かす事態に発展しかねません。
実際は70℃なのに温度計が75℃と表示した場合、加熱が不十分なまま工程が終了し、食中毒菌が残存する可能性があります。また、冷蔵庫の温度が実際には危険温度帯に入っているのに、温度計が正常範囲を示していれば、食品の劣化が進行しても気づくことができません。
このような状況は、食品事故に直結し、企業の信用失墜、行政からの指導・処分、最悪の場合は訴訟問題に発展する可能性もはらんでいます。
まとめ
本記事では、食品衛生における温度計の正しい測り方、種類ごとの特徴、校正の重要性について解説しました。正確な温度管理は、食中毒のリスクを低減し、食品の品質を維持し、食品ロスの削減にも不可欠です。
特にHACCP制度への対応が求められる現代において、温度計の正しい知識と運用はもはや必須と言えるでしょう。しかし、日々の業務の中で手作業での温度記録や管理は、時間と手間がかかるだけでなく、ヒューマンエラーのリスクも伴います。
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