2025.09.17.Wed

温度管理をペーパーレス化!メリットと注意点、導入方法を紹介

HACCPの完全義務化に伴い、食品を扱う現場において温度管理と記録は、企業の信頼において必要不可欠です。 しかし、昨今は人手不足が大きな問題となっており、限られた人材リソースを有効活用するためには、ペーパーレス化の推進が重要になってきます。 本記事では、紙媒体での温度管理が抱える問題の解決策となる「ペーパーレス化」によるメリットと注意点、自社に合った導入方法を解説します。 現代の現場が抱える問題解決の一環として、ぜひご一読ください。

温度管理のペーパーレス化とは?紙管理の3つの限界

温度管理のペーパーレス化が求められていますが、まずは多くの現場が抱える「紙管理」の具体的な課題を深掘りしていきましょう。

本章では、HACCP対応やヒューマンエラー、業務の属人化という3つの視点から、現状の温度管理体制に潜む限界とリスクを明らかにします。

1.HACCP対応による記録用紙と保管コストの増加

紙での温度管理は、HACCP対応で求められる記録の保管義務により、コストと手間を増やします。

HACCPの考え方に沿った衛生管理では、温度のような重要管理点に関する記録の一定期間保管が義務付けられています。記録用紙は日々増え続け、ファイリングの手間や保管スペースの確保などをしなければなりません。

また、監査などで急に過去のデータを参照する必要が出た際、膨大なファイルの中から探し出すのは困難です。

HACCPを遵守しようとすればするほど、紙管理では物理的なコストと管理の手間が増え続けるという事態に陥ります。

2.ヒューマンエラーのリスク

手書きによる温度記録は、どんなに注意してもヒューマンエラーのリスクを完全に排除するのは難しいです。

人が介在する作業である以上、記録漏れや温度の数値の書き間違えといったミスは起こり得ます。また、悪意がなくとも、あとからまとめて記録することで記憶違いが生じたり、意図せず改ざんを疑われたりする可能性もあるでしょう。

このように、人の手による記録作業には、常に信頼性を揺るがすヒューマンエラーのリスクがつきまとうのが懸念点です。

3.属人化とリアルタイム性の欠如による機会損失

紙での管理は、業務の属人化とリアルタイム性の欠如を招き、大きな機会損失に繋がります。

温度チェックが特定の正社員やベテランスタッフの役割になっていると、担当者が不在の際に管理が手薄になる「属人化」が起こります。また、記録はあくまで過去のデータであり、夜間や休日に温度異常が発生しても、翌朝出勤するまで誰も気づくことができません。

本来であれば品質改善やスタッフ教育といった付加価値の高い業務に使えるはずの時間が毎日単調な記録・チェック作業に奪われることにより、結果として企業の成長機会を逃す原因となるのです。

温度管理をペーパーレス化する3つのメリットと注意点

 

紙の管理が抱える課題解決に有効な「ペーパーレス化」ですが、本章では導入によって得られるメリットを「業務効率化」「データ信頼性」「リスク管理」の3つの観点から詳しく解説します。

導入を検討する上で知っておくべき注意点を把握し、後悔しないシステム選びに役立ててください。

メリット1.圧倒的な業務効率化と人件費・コストの削減

温度管理をペーパーレス化するメリットのひとつが業務効率化とそれに伴うコスト削減です。

システムが自動で温度を計測・記録するため、これまでスタッフが毎日行っていた記録作業や、紙の帳票をPCに入力し直すといった手間が一切不要になります。

工数削減により、その時間を他の業務に充てることができ、記録用紙やペン、ファイルを保管するキャビネットなどの備品コストも削減可能です。

ペーパーレス化は日々の作業負担を軽減し、人件費や備品コストの直接的な削減に繋がります。

メリット2.データ信頼性の向上とHACCP対応の強化

ペーパーレス化は、記録データの信頼性を向上させ、HACCP対応も強化できます。

システムによる自動記録は、人の手を介さないため、記入ミスや記録漏れといったヒューマンエラーをなくすことが可能です。記録されたデータは改ざんが困難であり、客観的な証拠として高い信頼性を持ちます。

行政による監査や取引先からの査察が入った際にも、ボタン一つで正確な温度記録データを迅速に提出することが可能です。さらにHACCPで求められる「監視・記録・保管」の要件を、より高いレベルで満たすことができます。

メリット3.リアルタイム監視による迅速なリスク管理

ペーパーレス化により、リアルタイムでの温度監視が可能になり、リスク管理体制が向上します。

多くのペーパーレスシステムでは、インターネットを通じてスマートフォンやPCから、いつでもどこでも現場の温度状況を確認することが可能です。設定した温度の閾値を超えた場合には、即座にアラートで知らせる機能も備わっています。

これまで気づけなかった夜間や休日の冷凍庫の故障といったトラブルも、発生直後に検知し、迅速な対応が可能です。製品の廃棄といった最悪の事態を未然に防ぎ、被害を最小限に食い止めることができます。

注意点:導入時の初期費用と現場への定着

ペーパーレス化を進める上では、導入コストと現場への定着という2つの点に注意が必要です。

新たな機器やシステムを導入するには、当然ながら初期費用や月額のランニングコストが発生します。また、これまで紙での作業に慣れてきたスタッフにとって、新しいツールの導入は心理的な抵抗感や操作への戸惑いを生む可能性があるでしょう。

導入前には、削減できる人件費やコスト、回避できるリスクなどを算出し、投資に見合う効果が得られるかを十分に検討することが重要です。

また、導入時には、操作がシンプルで直感的に使えるシステムを選んだり、説明会を開いたりするなど、現場スタッフがスムーズに移行できるようサポートする工夫が求められます。

温度管理をペーパーレス化する方法

本章では、具体的なペーパーレス化の方法について、導入のハードルが低い「データロガー」・高機能な「ペーパーレス記録計」・利便性に優れた「クラウド型システム」の代表的な3つの方法を紹介します。

それぞれの特徴と、メリットやデメリットを比較し、自社に最適な方法を検討しましょう。

安価で手軽に始める「データロガー」

手軽にペーパーレス化を試したい場合、データロガーの活用は有効な選択肢です。

データロガーは、温度や湿度を自動で記録する小型の装置で、比較的安価で入手できます。特定の冷蔵庫や部屋にピンポイントで設置するだけで良いため、大がかりな工事も不要です。

まずは特に重要な箇所だけをペーパーレス化したいといったニーズに適しています。ただし、定期的にデータを回収する手間がかかる点や、リアルタイムでの遠隔監視には対応していない製品が多い点には注意が必要です。

データロガーは導入ハードルの低さが魅力ですが、機能や運用面の制約も理解した上で選びましょう。

多点計測・集中管理が得意な「ペーパーレス記録計」

工場内の複数箇所の温度を一元的に、かつ高精度で管理したい場合は、ペーパーレス記録計が適しています。

ペーパーレス記録計は、複数のセンサーからの情報を本体に集約し、データを記録・表示する据え置き型の装置です。 高機能で信頼性が高く、大規模な施設の温度管理に向いています。

ペーパーレス記録型のメリットは、工場内の複数の生産ラインや冷蔵・冷凍倉庫の温度を一括して監視・管理する運用が可能なことです。一方で、データロガーに比べて導入コストが高額になる傾向があり、設置には専門的な工事が必要になる場合もあります。

ペーパーレス記録計は、初期投資をかけてでも高精度で集中的な管理体制を構築したい場合に最適な方法です。

拡張性と利便性に優れた「クラウド型システム」

ペーパーレス化に最もおすすめなのが、拡張性と利便性を両立したクラウド型の温度管理システムです。

クラウド型システムは、各所に設置した無線センサーが計測した温度データをインターネット経由でクラウドサーバーに自動で保存する仕組みです。これにより、スマートフォンやPCがあれば、時間や場所を問わずにリアルタイムで状況を確認できます。

出張中の管理者が現場の温度異常をスマホのアラートで知り、すぐに指示を出すといった迅速な対応が可能です。

また、最初は数カ所から始め、後からセンサーを追加して管理範囲を広げるといった拡張も容易に行えます。月額制のサービスが多いため、初期費用を抑えて導入できる点も魅力です。

まとめ

本記事では、紙による温度管理の限界、ペーパーレス化によって得られるメリット、導入方法を解説しました。

手書きによる温度管理は、コストやヒューマンエラーのリスクを抱えるだけでなく、貴重な人材を単純作業に費やしてしまうという大きな機会損失を生んでいます。

温度管理のペーパーレス化は、現代の人手不足などの課題を根本から解決し、業務効率化とHACCP対応強化を同時に実現する「必須」の取り組みと言えるでしょう。

特にスマートフォンやPCでどこからでも状況を確認でき、初期費用を抑えて導入できる「クラウド型システム」は、多くの企業にとって有力な選択肢となります。

システム導入で迷っている場合は、当社のクラウド型温度管理システム「ACALA」がおすすめです。面倒な記録作業から解放され、より高度で信頼性の高い品質管理体制を構築するために役立ちます。ぜひ導入をご検討ください。