2024.10.30.Wed

検食の目的と取り方、保存時の温度管理について

給食施設で実施が義務化されている検食。毎日大量の食事を提供する事業者にとって、検食は万が一の備えになる重要なものです。しかし、日々のさまざまな業務の中で検食をきちんと採取し、適切な温度管理のもと保存できているでしょうか。検食の目的や採取・保存方法を今一度確認しましょう。

検食とは?

食の安全性を確保するために実施されている検食は、実は2種類あることを知っているでしょうか?

まずは2つの検食について説明し、検食を行う目的を解説します。

検食は2種類ある

検食には、「学校給食法で定められた検食」と「検査用保存食としての検食」の2種類があります。

学校給食法で定められた検食とは、施設で提供する食事を責任者が試食し、問題がないかを確認するものです。これは、学校給食法が定める「学校給食衛生管理基準」に基づいて実施されています。

学校給食法で定められた検食で確認すべき項目は、以下の通りです。

 

  • 異物の混入がないか
  • 調理時の加熱、冷却が適切に行われているか
  • 異味、異臭などの異常がないか
  • 一食分として量が適当か
  • 味付け、香り、色彩、形態などが適切か
  • 児童生徒の嗜好は配慮されているか

 

検食は食事開始30分前までに行い、検食の実施時間や検食した者の意見などを記録に残さなければなりません。また、この検食は学校給食法で定められているものですが、学校施設以外に、病院や介護施設などの給食施設でも実施されています。

一方で、検査用保存食としての検食は、原材料や調理済みの食品の採取と保存を意味するものです。この検食は厚生労働省による「大量調理施設衛生管理マニュアル」に規定されており、学校施設だけではなく、より広範な施設・事業者を対象としています。

検食の目的とは

学校給食法で定められた検食の目的は、児童生徒が安心して給食を食べられるよう、提供前に食の安全性を確かめて、問題を未然に防ぐことです。一方で、検査用保存食としての検食の目的は、食中毒などの問題が発生した際に、スムーズに原因を追求できるよう備えることといえます。

学校給食法で定められた検食では、万が一検食で異常が発見された場合は、責任者の判断で給食を中止できます。さらに、共同調理場の受配校で異常が発覚した場合、速やかに共同調理場に連絡しなければなりません。

検査用保存食としての検食は、食中毒などの異常が発生した際の原因究明に利用されます。そのため、異常が起きた際は検食を直ちに保健所へ提出する必要があります。

検食を保存していなければ、異常が発生しても原因を突き止めるまでに時間がかかり、その間に被害が拡大するかもしれません。しかし、原材料や調理済み食品が保存されていれば、早期に異常発生の原因が明らかになり、再発防止策を考案できるでしょう。

学校給食法で定められた検食の対象は学校施設がメインですが、検査用保存食としての検食はより多くの調理施設が対象とされています。そのため本記事では、検査用保存食としての検食について解説を進めます。

検食の取り方と保存

 

検査用保存食としての検食の取り方と保存方法は、「大量調理施設衛生管理マニュアル」に規定されています。ポイントは以下の通りです。

 

  • 原材料と調理済み食品を、食品ごとに約50gずつ清潔な容器やビニール袋などに入れて密封する
  • 原材料は洗浄や殺菌などを行っていない、購入した状態で保存する
  • 調理済み食品は二次汚染を防ぐため、配膳後の状態で保存する
  • 採取した検食は-20℃以下で2週間以上保存する

 

野菜はヘタや皮などの破棄する箇所ではなく、可食部分を保存します。スープやデザート、納豆、飲み物として提供する牛乳、おやつなどもすべて検食として保存しましょう。ごまや青のりなど、検食を50g分確保できない食品については、管轄の保健所に相談してください。

容器やビニール袋に入れたら、いつの検食か分かるように日時(例:◯月◯日昼食)を明記して、適切に温度管理された冷凍庫で保存します。保存期間の2週間を過ぎれば破棄してかまいませんが、破棄した日付も記録に残して管理するようにしましょう。

保存期間が2週間以上と規定されている理由は、喫食から10日以上経過して食中毒が発症した例があるためです。食中毒には潜伏期間があり、感染してから発症するまでに時間がかかります。食中毒が発生した際にさかのぼって検査できるよう、規定されている2週間以上は検食を確保しておきましょう。

また、せっかく採取した検食も、常温で放置していれば細菌が繁殖して検食の意味がなくなってしまいます。検食は放置せず、専用の冷凍庫へ素早く移すことが大切です。

検食の保存温度は-20℃以下と規定されています。一般的な食品の冷凍保存温度は-15℃以下であるため、検食用冷凍庫の温度は食品用冷凍庫よりも低く設定しなければなりません。検食を適切に保存するためには、検食用冷凍庫の温度管理が必須です。

検食を実施すべき業態は限られている

検査用保存食としての検食は、食品製造に関わるすべての事業者に実施が求められるわけではありません。次からは検食を実施すべき業態を解説するので、自身の事業所で検食の対応が必要か検討しましょう。

検食の実施が義務付けられている業態とは

検査用保存食としての検食の実施が必要な業態は、「大量調理施設衛生管理マニュアル」に規定されている、同一メニューを1回300食以上または1日750食以上を提供する調理施設です。学校施設や病院、介護施設のほか、提供数が多い社員食堂や飲食店、旅館、ホテルなどが該当するでしょう。

しかし、検査用保存食としての検食の目的は、問題発生時に速やかに原因究明できるよう備えることです。この目的から考えると、「大量調理施設衛生管理マニュアル」の規定に満たない小規模事業者でも、できる限り検食の実施に努めるべきでしょう。

HACCPに検食は必要か

食品の安全を確保する衛生管理手法であるHACCPにおいて、検査用保存食としての検食は管理項目に含まれていません。

HACCPは、2021年6月からすべての食品関連事業者に義務化された衛生管理手法です。HACCPの目的は、食中毒や異物混入などのリスクがある危害要因を分析し、リスク低減に関わる重要管理点のモニタリングにより食品の安全を守ることです。

検査用保存食としての検食では、原材料や調理済み食品の一部を抜き取って検査に使用します。そのため、抜き取っていない食品で健康被害が起こる可能性もゼロではありません。

一方で、HACCPでは重要な製造工程を監視・記録することで、製造するすべての食品の安全性を確保します。したがって、一部の食品しか検査できない検食よりも、HACCPのほうが食の安全を担保できるといえるでしょう。

しかし、検食は「大量調理施設衛生管理マニュアル」により多くの事業所で実施が義務付けられています。検食とHACCPをどちらも実施すれば、製造する食品の安全性が高まり、万が一の事態が発生しても素早い対処が可能です。HACCPと検食は別物であるため、対象となっている事業者は検食を実施するようにしてください。

まとめ

のために毎日正しく検食を採取し、保存することが大切です。そのため、食品を保存する冷蔵庫や冷凍庫と同様に、検食用冷凍庫も適切な温度管理が求められます。

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検査用保存食としての検食を実施する事業者は、検食の保存まで十分に管理して、食の安全を確保しましょう。