2024.05.31.Fri

業務用冷蔵庫の霜付き対策とは

業務用冷蔵庫を運営していくなかで問題になる霜付き。見た目だけでなく、使い勝手が悪くなったり冷却効率の低下を招いたりと、デメリットは多々存在します。そこで今回は、業務用冷蔵庫の霜付き対策について解説します。

業務用冷蔵庫に霜が付く原因とは?

まずは冷蔵庫になぜ霜が付くのかの原因について見ていきましょう。

冷蔵庫の仕組み

業務用冷蔵庫に霜が付く原因について理解するためには、はじめに冷蔵庫の冷却システムの仕組みから理解する必要があります。

冷蔵庫は主に圧縮機、凝縮器、膨張弁(またはキャピラリーチューブ)、蒸発器という4つの主要部品によって構成されています。これらの部品を通じて、フロンやアンモニアなどの冷媒ガスが循環し、冷却機能が動作します。

冷媒ガスはまず圧縮機で圧縮され、高温高圧の状態になります。次に凝縮器を通ることで冷却され、液体に変化します。その後、膨張弁を通過し、圧力が低下して沸点が下がり、蒸発しやすくなります。最後に蒸発器で気化し、周囲の空気から熱を奪って冷却します。この気化熱を利用して、食品などの熱を奪い、冷却するのです。

霜が発生する原因

冷却された空気はファンによって庫内に送られ、循環します。この際、冷却器やファンの周辺、またはその他の庫内部で、温度差が発生することで、霜が発生します。特に、熱を持った空気が冷たい冷却機に触れると、空気中の水蒸気が飽和し、霜として現れる現象が起こります。これは結露と同じ原理です。

上記を踏まえ、霜が付く主な原因には、以下のような状況が考えられます

 

  • 頻繁なドアの開閉や長時間の開放:外気が冷蔵庫内に入り込み、温度差を生じさせます。
  • ドアのパッキンの不具合:パッキンが正しく機能しない場合、外気の侵入が起こりやすくなります。
  • 扉の故障:扉が適切に閉まらない場合も同様です。
  • 排水口からの外気侵入:排水口が適切に封じられていない場合、外気が侵入しやすくなります。
  • 気圧調整弁の故障・不具合:外気の侵入を防ぐための気圧調整弁に問題がある場合、冷却効率が低下します。

 

これらの問題が発生すると庫内の温度が上昇し、外気の高温多湿な空気が内部に入り込んで冷却され、結果として霜が発生します。このような状況を避けるためには、ドアのパッキンや扉、排水口、気圧調整弁などのメンテナンスが重要になります。

霜が付くことによる悪影響

霜が業務用冷蔵庫に及ぼす影響は、効率の低下、経済的負担の増加、食材の品質劣化、そして作業の増加といった多岐にわたります。これらの問題を防ぐためには、定期的なメンテナンスと適切な使用が必要です。

冷却能力の低下

冷蔵庫内の冷却器周辺に霜が付着すると、冷却能力が低下します。

霜が冷却器の通り道を狭めると、風力が落ち、冷却効率が悪化します。また、蒸発器が霜で覆われると、空気が直接蒸発器に触れることができず、冷却作業が効率的に行われなくなります。結果として、庫内の温度維持が難しくなり、冷却能力が著しく低下することになります。

電気代の増加

冷却能力の低下は、日々のランニングコスト上昇につながります。さらに、霜が付着すると、デフロスト運転(霜取り作業)が必要になります。

霜取り中は庫内温度が上昇し、その後、再び温度を下げる必要があります。温度を下げるには、運転よりも多くの電力を消費します。頻繁なデフロスト運転は、電力消費の増大につながり、結果的に電気代の増加を招きます。

庫内環境の悪化

霜が庫内に付着すると、食材に対して悪影響を及ぼします。食材の包装を損傷したり、霜が大きくなったりすることで庫内空間が狭くなり、食材の保存環境が悪化を招く可能性があります。霜がない清潔な状態を保つことが、食材の品質維持には重要です。

霜取り作業の手間

霜取り機能を使っても霜が取りきれない場合、手作業での霜取りが必要になります。

とはいえ、手作業での霜取りは容易ではありません。固くこびりついた霜を除去する際に、機械を破損させたり、作業者が怪我をしたりするリスクが伴います。特に大型の冷凍設備では、手作業で水を使用して霜を溶かす必要があり、より多くの労力を必要とします。

業務用冷蔵庫の霜取り方法

 

次に、具体的な業務用冷蔵庫の霜取り方法について解説します。

電源を切る方法

庫内の食材を全て取り出し、別の場所で保管した後、冷蔵庫の電源をオフにします。庫内の温度が徐々に上昇し、室温になることで霜が溶ければ作業完了です。

業務用冷蔵庫のマニュアルにも記載されている方法なので、もっとも確実な方法です。しかし、事業の内容によっては冷蔵庫の電源を長時間切ることができない場合も多いでしょう。また、古い機種では電源を切った後に何かしらの問題が発生するリスクもあるため注意が必要です。

スクレーパーを使用する方法

機器を稼働させたまま、スクレーパー(氷を削るためのヘラ)を使用して霜を削り取る方法です。霜が薄い場合は、スクレーパーを温めてから使用することで、効率よく霜取りができます。冷蔵庫の電源を切る必要がないため手軽ではありますが、厚く硬い霜には適していません。

ハンマーを使う方法

霜が非常に厚く、スクレーパーでは対応できない場合、木製ハンマーやショックレスハンマーを使用して、庫内に付着した霜を叩き割る方法があります。

霜が固くこびりついている場合の最終手段として考えられますが、庫内へのダメージや作業者の安全面には注意が必要です。

注意点

上記の作業を行う際には、いくつか注意しておきたい点があります。

まずは繰り返しになりますが、庫内へのダメージに関するリスクです。スクレーバーやハンマーを使用する際には、壁面などに傷を付けないよう気をつけましょう。合わせて、作業者がケガをしないよう注意も必要です。

次に、霜取り作業中の食材管理です。冷蔵庫から出している食材は、適切な温度で保管しなくてはなりません。それを踏まえると、霜取りの時間管理も重要になります。なお、電源を切る方法を採用する場合、霜が完全に解けるまでに時間がかかるため、より計画的に作業を行う必要があります。

業務用冷蔵庫の霜付き予防と対策

次に、霜の発生を防止するための対策についてもご紹介します。

冷蔵庫内の食品の保存方法を工夫する

まずは庫内の食品の配置を工夫しましょう。空気が効率よく循環できるよう、詰めすぎは避けてください。また、熱い物を庫内に入れる前に十分に冷まし、温度差を最小限に抑えるなど、基本的な使い方も見直しましょう。

外気の侵入を防ぐ

庫内への外気侵入を防ぐためには、ドアの開閉回数を必要最小限に抑える必要があります。また、ドアのパッキンや故障箇所がないかも定期的にチェックしてください。

冷蔵庫の設置場所を考慮する

適切な環境選びは霜を予防します。湿気が少なく、温度が安定している場所がのぞましく、温度変化が激しい屋外や湿度の高い場所は避けましょう。

定期的な霜取り作業を行う

霜が小さいうちに、定期的な霜取りを行うのが効果的です。自動の霜取り機能に任せきるのではなく、季節や冷蔵庫の運用方法によって、霜取りの階数やタイミングを見直してみましょう。

冷蔵庫内の温度管理ならACALA

庫内の温度は冷蔵庫の健康状態を示すバロメーターです。適正な温度が保たれているかを確認することで、不具合などにいち早く気づけます。

一方で、霜の発生はデメリットも多数あり、発生を未然に防ぐことも重要です。そこでおすすめしたいのが、当社がご提供する自動温度管理システム「ACALA」です。

庫内温度をリアルタイムで監視し、専用のクラウド型プラットフォームによるアラートで異常を検知。霜が発生する原因である庫内の温度上昇にいち早く気づけるため、確実な霜付き対策になります。

まとめ

業務用冷蔵庫の霜付きは、食品製造事業に対し、大きな悪影響を与えます。その仕組みを知り、適切な対策を行うことは、コストダウンや業務負荷低減にもつながります。今回ご紹介した対策や、当社のACALA活用などを通じ、適切な霜付き予防に取り組みましょう。