2022.04.25.Mon

製造工程一覧図の作成と現場確認

当社の温度管理システム「ACALA(アカラ)」は、HACCPにおいて最も重要な温度記録や監視を自動化する便利なソリューションですが、システムの導入を検討する前に、どこの温度をどう記録・監視するのか、といった運用ルールの設計を行う必要があります。HACCPの実運用に向けた準備は多岐にわたり、製造工程一覧図の作成と確認も、そのうちのひとつです。ただし、準備ではありますが、これまで行ってきた作業の振り返りでもあり、かつ作業の可視化にもつながる点には、大きな意義があると言えるでしょう。HACCP導入序盤の、大切な工程であると認識してください。 そこでこちらでは、HACCP導入で必要となる製造工程一覧図の作成に関わる具体的な手順やポイント、作成後の現場確認について解説します。

製造工程一覧図とは?

製造工程一覧図(製造工程図)とは、HACCPの「7原則12手順」に含まれる「(手順4)製造工程一覧図の作成」と「(手順5)製造工程図をもとにした現場確認」で登場する資料です。「フローダイアグラム」と呼ばれることもあります。

製造工程一覧図には、製品の製造における一連の製造・加工工程の流れ・作業内容がすべて記載されます。具体的には、原材料の受入から出荷までです。主な目的は、製造における工程の可視化です。製造工程一覧図を見れば、その製品を作るのにどの原材料が必要で、どのような作業を行うのかが一目で分かります。

製造工程一覧図は、この後の危害要因分析の際の基準にもなります。そのため、万が一ミスがあると正しい分析ができないだけでなく、事故・トラブル発生時の原因究明が困難になるので、正確に記載しなくてはなりません。また、現場に足を運び、実際の作業を見たり、担当者への聞き取りを行ったりする必要もあります。HACCPの運用における基盤とも言える工程となるため、間違いのないように取り組みましょう。

製造工程一覧図の作成手順

次に、具体的な製造工程一覧図の作成手順について見ていきましょう。

1.原材料・添加物・包材資材の列挙

まずは主な原材料をすべて書き出します。原材料の多い製品の場合は、グループにまとめてしまっても構いません。ただし、特性や入荷、保管の管理が異なるような場合は個別に記載するよう注意しましょう。そのほか、泡剤や資材についても食材に直接触れるのか触れないのかで分別してください。

2.作業工程の列挙

原材料の受入から、製品を最終的に出荷するまでの工程をすべて列挙します。
なお、一般的な工程には以下のものがあります。
● 受入:納入された原材料・泡剤資材の受入。形態や温度帯、アレルゲンの有無などの確認が必要。
● 保管:原材料を保管したり、製造中に寝かせたりする工程。温度帯の確認が必要。
● 計測:水などを含ませる前の原料や副原料に関する計量。
● 調合:計量済みの原材料や副材料などを混合。
● 加熱:食材の加熱調理の工程。溶解や加温などの場合には名称を変更。
● 冷却:加熱後の食材の温度を下げる工程。粗熱を取ったり、食中毒菌の増殖温度帯を避けたりする。
● 梱包:包装用容器に製品を封入。
● 金属探知機:金属探知機で製品をチェックする工程。
● 検品:原材料の一次処理、出荷前のチェックといった確認の工程。
● 出荷:最終製品を卸先へと出荷する工程。

3.原料と作業の関連付け

原料と作業がすべて書き出せたら、それぞれを関連付けていきます。
まずは横列に原材料を並べましょう。この際の順番は、配合の順に左から書き出します。すべて書き出せたら、原材料の下に作業工程を順序どおり並べていきます。下矢印で結び、その原料がどのように処理されるのかを分かりやすくまとめてください。なお、副原料や水、添加物などを主な原料に混ぜ合わせる際には、それぞれの工程も矢印で結んでおきます。

4.原材料・工程のナンバリング

原料と作業の関連付けが完了したら、作業の順番に従ってナンバリングを行います。番号を見れば、どの順で作業をするのかが分かるようにするためです。

5.区分線の記載

最後に作業区域ごとの区分線を記載します。作業区域とは、「汚染区域」「準清浄区域」「清浄区域」の3種類です。

製造工程一覧図作成のポイント

普段の作業を見える化することが製造工程一覧図の目的です。しかし、より高度な衛生管理のためにいくつか抑えておきたいポイントがあります。

施設図面の作成

区分線を記載する際には、あらかじめ施設図面を作成しておくと便利です。その表を見ながら、作業をする場所を確認しましょう。以下は、具体的な作業区域の説明です。

  • 汚染区域:検収場、原材料の受入・保管場、下処理場、包装後の梱包場など。病原微生物に対して高い衛生管理を行う必要のある区域です。
  • 準清掃区域:原料の加工や調理、金属探知機工程を行う場所です。病原微生物の汚染をコントロールしながら作業を行います。主に調理場が該当します。
  • 清掃区域:放冷・調製場や製品の保管場など、加工後の製品を扱う場所です。病原微生物の汚染を確実に防ぐ必要があります。

危害防止基準の記載

製造工程一覧図はあくまでも原料と作業手順の関係性や順序を示す書類です。一覧性が求められるため、詳細な衛生管理上の情報については省かなくてはなりません。ただし、後の危害要因分析のことを考えると、工程ごとの衛生管理情報は必須。そこで容易しておきたいのが、危害防止基準についての書類です。

なお、分量が少ないのであれば、製造工程図に書き込んでも構いません。見た目の分かりやすさを損なわないよう注意しつつ、難しいようなら別紙にまとめましょう。

製造品目が多岐にわたる場合

製造している製品の数が多く、製造工程一覧図を作りきれない場合は、類似した製造方法の食品をまとめてしまうという方法もあります。たとえば、受入後に常温で保管できる食品については、グループ化しても構いません。ただし、原則としてはすべての品目に対して製造工程一覧図は必要であることを忘れないでおきましょう。

製造工程一覧図を基に現場を確認

製造工程一覧図を作成した後は、実際の作業と乖離がないかを確認するために、現場確認が必要です。HACCPにおいては、「(手順5)製造工程図をもとにした現場確認」として定められています。

実情との乖離について確認

まずは現場でも製造工程一覧図のとおりに作業が行われているかを確認しましょう。HACCPチームのメンバーで足を運び、原料の入荷から製品出荷までの流れを確認してください。今後の危害分析を考えると、この工程は非常に重要です。必ず従業員が実際に手を動かしている時間帯に実施し、実情と照らし合わせながら確認を進めてください。

異なる内容があれば図を修正する

記入漏れや手順変更にともなう乖離が見つかった場合には、はじめに正しい手順が何であるかを再度確認します。その結果、製造工程一覧図との違いがあると判明したら、図の修正を行ってください。

また、将来的に工程へ変更が加わることは珍しくありません。製造工程一覧図が一度完成したからと言っても、アップデートを行わなければ形骸化してしまいます。定期的な確認を行い、常に正確な図を保ちましょう。

まとめ

HACCPにおいて温度記録や温度監視は重要ですが、どのように温度を管理するべきかの設計において、必要な工程が製造工程一覧図(フローダイヤグラム)の作成です。製造工程一覧図は、これまでの作業を可視化し、今後の食品衛生管理の軸になり得る資料です。また、その後に行われる危害分析等の作業に大きく影響します。分析の軸になるため、HACCPチーム一丸となり取り組んでください。また、現場確認は非常に貴重な機会にもなり得ます。実際に足を運び、目で見て作業内容を確認することは、今後のHACCP運用や衛生管理に必ず役立つでしょう。