2020.06.30.Tue

HACCP認証とは?取得必須の資格はある?

2020年6月からスタートしたHACCP。現在は猶予期間となるため完全義務化とは言えませんが、2021年6月には全食品事業者が対応を迫られます。この際、「HACCPの認証が必要になるのでは?」とお考えの方も少なくないでしょう。今回は、HACCP認証がどのようなものか? そのほか、HACCP関連の資格などについてご紹介します。

HACCP導入に認証はいらない

まずは前提として、制度化に伴い自社にHACCPを導入する場合、認証は必ずしも必須ではありません。そもそも制度で求められているのはHACCPの基本的な考えとなる「7原則12手順と呼ばれるガイドラインに従って食品を仕入れてお客様に提供するまでの工程を監視・管理すること 」です。認証されていないから、HACCPが導入できていない、ということはありません。非認証のまま営業を続けて、法律違反になることもありません。

HACCP認証の主な種類

HACCPの認証は大きく3つに分かれます。ひとつめは厚生労働省による総合衛生管理製造過程(通称、マル総)ですが、こちらは廃止が決定しています。そのため、今後は業界団体認証HACCPと地域認定HACCPのいずれかを利用することになります。

前者は特定の企業や商品に対してHACCP認定を行います。たとえば食肉だと一般社団法人日本食肉加工協会、炊飯製品だと(公社)日本炊飯協会といった具合です。詳しくは農林水産省のホームページで確認しましょう。

後者の地域認定HACCPは、各自治体が独自基準の審査で行っているHACCP認証です。中小の食品会社でも取得しやすいのが特徴と言われています。詳しくは、各自治体に問合せをしてみてください。

HACCP認証を取得するメリットとは?

必須要素ではないHACCP認証。しかし、これを取得する企業は少なくありません。認証取得のメリットは何なのでしょうか?

ひとつは「HACCPに対する正しい知識が得られる」点にあります。HACCP認証を取得するためには、自社で担当者を決め、研修に参加させる必要があります。この際には、HACCPの考えを取り入れた衛生管理を体系立てて学べます。また、HACCPのプロフェッショナルとも言える各認証団体のスタッフに細かくチェックをしてもらえるのも大きなポイントでしょう。

そのほか、認証を受けることでもらえる認証マークを、ホームページや店舗に掲載できます。その意味で、自社の衛生管理の取り組みを対外的にアピールできるという点もメリットでしょう。

HACCP認証のデメリットと課題

メリットが多いHACCP認証ですが、デメリットは決して小さくはありません。すでにお伝えしているとおり、認証を受けるためには認証機関へ企業の担当者が研修へ行く必要があります。費用がかかるほか、研修を受けるスタッフのリソースが割かれてしまいます。また、HACCP認証団体はHACCPの導入自体をしてくれるわけではありません。導入は研修を受けた担当者主導で行われます。

HACCPの関連資格は?

HACCPにはいくつかの関連する資格があります。しかし、認証と同じく、取得は必須ではありません。さらに言えば、いずれも民間団体や学会が独自に設定したものであり、国家資格ではありません。もちろん、取得のための過程で正しい知識が身に付きますし、有資格者として対外的なアピールも行えます。主な資格の種類をご紹介します。

HACCP普及指導員

HACCPの知識を有し、HACCPの構築・検証ができる人に与えられる資格です。中小企業がHACCPを導入しようと考える際に役立つ人材と見なされます。資格取得のためには、一定要件の下で研修を受け、申請を行います。資格試験はありません。

この資格を設置しているのは公益社団法人日本食品衛生協会です。「食品衛生管理士制度」という資格が、HACCP普及指導員の前身と言われています。

HACCP管理者資格

「総合衛生管理製造過程に関する承認」(食品衛生法第13条)に必要とされるHACCPシステムについて、相当程度の知識を持っていると認められた人に与えられる資格です。取得のためには大学での単位取得や、学会主催のワークショップへの参加が必要です。なお、HACCP管理者資格は「日本食品保蔵科学会」によって設置されています。

HACCPリーダー(食品安全管理技術者)

組織におけるHACCPの構築・運営の中心になれると認められた人に対して与えられる資格です。一般財団法人日本規格協会によって設置されています。取得のためには、一定期間以上の実務経験等が必要になる点が、他の資格とは異なります。

まとめ

制度化されたHACCPへの対応に、特別な認証や資格取得は不要です。しかし、取得によるメリットも少なくはありません。とくに、自社にHACCPに詳しい人がいない場合などは、研修などに参加するのもおすすめです。