2021.08.02.Mon

HACCP対応の温度管理を効率的に実現するために必要なこととは?

2021年6月からすべての食品等事業者に対して、HACCP(ハサップ)に沿った衛生管理が義務付けられました。特に食品の製造・調理・加工の過程で、より厳格な温度管理が求められています。本記事ではHACCPに対応した温度管理の方法について考察します。

HACCPとは法律で定められた食品衛生管理手法

HACCP(ハサップ)とは食品の安全性を確保することを目的として法律で定められた衛生管理の手法です。英語の正式名称は「Hazard Analysis and Critical Control Point」で、それぞれの単語の頭の文字をとって、HACCPと呼ばれています。

英語名を直訳すると、「危害要因分析重要管理点」となります。原料を入荷してから出荷するまで、すべての工程において、危害要因を分析するとともに万全の対策を講じ、管理基準を定めて測定・記録することが求められるのです。

なおこのHACCPは 国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関となる食品規格 (コーデックス) 委員会が定めて、各国に推奨している手法で、国際的にも認められています。

なおこのHACCPは 国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関となる食品規格 (コーデックス) 委員会が定めて、各国に推奨している手法で、国際的にも認められています。

HACCPと従来の管理方法の違い

HACCPと従来の管理方法の大きな違いは「全工程での記録・管理」と「抜き取り検査」という検査のあり方に表れています。

従来の管理方法では抜き取り検査を行い、基準を満たさない場合には全製品が破棄されていました。どの工程にどんな問題があったかが把握できないからです。

HACCPでは全工程において危険を予測して、その危険を防止するための管理・測定・記録を行っているために、問題が発生した場合には出荷を未然に防げるだけでなく、その問題の分析や追求が容易になるのです。HACCPは安全かつ効率的な手法と言えるでしょう。

HACCPの「7原則12手順」とは?

HACCPには、「7原則12手順」が定められています。HACCPを導入する際には、この12の手順を踏むことが求められるのです。その手順とは下記です。手順の6~12は重要な7原則となります。

1.HACCPチームの編成
2.製品名・原材料・消費期限・賞味期限などを記載した製品説明書の作成
3.用途と対象となる消費者の設定
4.原材料の受け入れから消費までの工程の一覧図の作成
5.一覧図の現場での確認

以下、7原則

6.食中毒や異物混入などの危害要因の分析
7.重要管理点(CCP)の決定
8.温度・時間・PHなどの管理基準の設定
9.モニタリング基準の設定
10.改善措置の設定
11.プランに則っているか、有効に機能しているかの検証法の設定
12.記録と保存方法の設定

6から12の7原則はHACCPの実務における重要事項となります。なお、HACCPのチームの編成はHACCPの専門家と各部門の担当者によって構成されるのが基本です。

HACCPにおける温度管理と温度記録

HACCPで必要な温度記録

HACCPで特に重視されているのが温度管理と温度記録です。7原則の「重要管理点の決定」において細かく設定されおり、管理・測定・記録が求められます。

例えば加熱食品の場合であれば、表面温度90℃以上を10分間キープし、真空冷却機で60分以内に表面温度を5℃以下にするなどの基準が設定されて、温度がモニタリングされます。温度管理と温度記録の重要性についてくわしく解説しましょう。

温度管理は食中毒防止の観点で最重要項目

温度管理は食中毒の防止や食品の安全という観点から特に重要な項目になっています。製造工程のさまざまな段階での危険の防止が必要であり、食中毒の原因となる菌の増殖の抑制、細菌の殺菌など、目的に応じた温度のコントロールが不可欠です。

食品には危険温度帯と呼ばれる温度の範囲があります。10℃から60℃がその温度帯に該当します。この範囲内において、細菌が増殖しやすいため、食品の加熱や冷却などの作業がある場合には、この温度帯をいかに最短ではずれるかが温度管理のポイントになるのです。

温度管理の鍵を握っている温度記録

温度管理をする上で重要な役割を担っているのは温度記録です。食品は原材料の段階から製品になるまで、さまざまな工程があります。しかも食品によって、求められる温度や時間や条件はすべて違います。

加熱後に何分以内に中心部を何℃から何℃まで下げなければならないなど、厳密に基準が設定されています。これらの数値をすべて記録してデータ化し、管理・分析が可能な状態にすることが重要です。温度記録こそがHACCPの鍵を握っていると言ってもいいでしょう。

食品の温度管理が必要になる5つの場面

HACCPに沿った衛生管理が義務化されることによって、温度管理の重要性は増しています。もともと食中毒予防の三原則である「有害な微生物をつけない」「増やさない」「やっつける」のうちの2つ、「増やさない」「やっつける」を担っているのが温度管理です。

ここでは食品工場において温度管理が重要なポイントとなる5つの場面について解説していきます。

1.原材料の入荷時

まず原材料が工場に配送されている段階で、積み荷が適温で配送されていたかというモニタリングをしておく必要があります。そして原材料が入荷した時、つまり受け入れした時で原材料が適切な保存温度であるかどうかを確認します。

温度以外にも箱に以上がないか、異臭がしないか、変色してないかなど、五感による検収も重要です。

2.原材料の保管時

入荷の時点で問題がなければ、次は保管の確認です。材料の種類によって、それぞれ求められる温度の基準は違います。

厚生労働省の「大量調理施設衛生管理マニュアル」によると、小麦粉やデンプンなどの穀類加工品は室温、細切りした食肉を凍結して容器包装したものや冷凍食品はマイナス15℃以下、食肉は10℃以下など、細かく温度が設定されているのです。

3.加熱や冷却の工程がある調理時

HACCPでは3つのグループに分けて、温度管理の指針を提示しています。

1つ目のグループは「加熱しない料理」です。加熱処理をしないので、食材につく可能性のある有害な微生物の殺菌ができません。汚染されていない食材を使うように注意を配り、付着した場合でも増殖しないように冷蔵庫や冷凍庫で低温保管します。

2つ目のグループは「加熱して提供する料理」です。特に食肉は十分な加熱が必要となります。ほとんどの有害な微生物は75℃で1分間以上の加熱で死滅するので、肉の中心部でも75℃をキープすることが求められます。

3つ目のグループは「加熱調理後に冷却して再加熱、もしくは加熱後冷却する料理」です。加熱後に長時間、室温においておくと、微生物が増殖する可能性があり、できるだけ危険温度帯に保持しないことが重要です。

4.食品の保管時

食品を加熱して調理した後に保管する場合には、すばやくしっかり冷却することがポイントになります。加熱調理してから30分以内に食品の中心温度を20℃まで下げるか、60分以内に中心温度を10℃まで下げるか、そのどちらかの条件を満たす必要があります。

食品の表面温度ではなくて、中心温度を計らなければならないので、注意が必要です。

温度管理は高温から低温までさまざまな条件がある

温度管理は入荷した時点から出荷するまでのさまざまな工程で必要となると同時に、多様な条件下で行わなければならないものです。冷蔵庫や冷凍庫の中はもちろんのこと、料理を加工している最中のボイル槽や冷却槽の温度も測定・記録しなければなりません。

高温のお湯、対流する冷却水、超低温などなど。ここでは温度を計る環境について、解説しましょう。加熱、冷却などのHACCP温度管理

ボイル槽や冷却槽、チラーの水温管理

温度管理においては水温の測定も重要な要素となります。加熱や冷却などの調理作業がお湯や冷水の中で行われることもあるからです。食品の加熱殺菌の役割を果たすボイル槽の中の湯水や冷却槽の中の冷水の温度を測定する必要のあるケースも出てきます。

またチラー(冷却水循環装置)の水温の確認が必要になる場合もあります。つまり防水対応の温度測定器が必要になるのです。

冷凍庫内の超低温の温度管理

冷蔵庫の他に業務用の冷凍庫での温度管理も必要になります。HACCPに対応した温度管理をする上ではマイナス15℃以下で保管しなければならない食品もあるからです。冷凍庫内での温度の測定とともに重要なのは定期的な記録です。

温度を確認するたびに開け閉めをしてしまうと、温度が上昇してしまう可能性があるので、開けなくても確認できる仕組みが必要になります。IoTシステムによる自動監視がのぞましいと言えるでしょう。

工場や作業現場での室温管理

水温や冷蔵庫・冷凍庫以外にも、工場や作業現場の室温の管理も必要になります。厚生労働省の大量調理施設衛生管理マニュアルによると、室温25℃以下、湿度80%以下という指標が定められています。しかし食品工場ではさらに低く、15℃から20℃くらいが一般的です。

室温は加熱温度や冷却時の温度にも関係を及ぼすので、しつかり温度管理することが必要になります。

温度管理でシステムの導入をおすすめする4つの理由

HACCPに対応した温度管理をするためには、さまざまな工程での多様な温度測定があるため、簡単ではありません。しかも測定するだけでなく、一定の間隔で定期的に記録することが必要になるため、手動では限界があります。

ここではIoTセンサによる温度の自動記録・遠隔監視システムの導入をおすすめする4つの理由を解説していきましょう。

1.労務を軽減し効率化を図れる

温度の自動記録・遠隔監視システムを導入する最大のメリットは従業員の労務を軽減し、業務の効率化を図れることでしょう。一定の時間ごとに温度管理表へ手書きで温度を書き込む作業はかなりの労力が必要です。

この作業がゼロになることで、現場の負担が一気に軽減されます。社会全体で人手不足が深刻化していることを考えても、システム導入のメリットは大きいのです。

2.品質管理レベルが向上する

温度管理を自動的に行うことによって、抜けや漏れがゼロになることが期待できます。人為的なミスがなくなるだけでなく、冷蔵庫や冷凍庫を開閉しなくても良くなるため、より安定した温度管理が可能になり、品質管理のレベルが向上するのです。

自動記録・遠隔監視システムの時刻同期機能を利用することで、正確な時間での記録となるため、記録の精度も高くなります。

3.温度管理表やデータの集約が容易になる

温度の自動記録・遠隔監視システムを使うことによって、さまざまな場所に設置された温度センサのデータを一元的に管理することが可能になります。

これまで手作業で行っていた温度管理の日報や月報の作成作業も不要となり、データの集約が容易になります。つまり温度管理とともに温度データの分析能力も飛躍的に向上するのです。

まとめ

HACCPに沿った衛生管理が義務付けられることによって、より厳格な取り組みが求められるようになりました。この手法の導入によって、食品のさらなる安全化が進む一方、食品事業者の負担が増大するという課題も出てきています。

課題の解消方法としておすすめなのはIoTセンサを使った温度の自動記録・遠隔監視システムを導入することです。タイムマシーン株式会社が提供しているACALA MESHならば、冷凍庫や冷蔵庫、室温の温度管理だけでなく、水温の測定・管理も可能です。

現場から離れた場所にいてもデータを一元的に管理でき、セキュリティ対策も万全なので、この機会に導入することをおすすめします。