2020.11.26.Thu

HACCPに欠かせない温度計の校正

HACCPでは温度管理・記録が重要な項目としてあげられています。しかし、肝心の温度計が狂っていては、どれだけ記録を徹底しても正しい衛生管理が行えません。そこで今回は、温度計・温度センサの校正の概要や具体的な手順についてご紹介します。

温度計など、測定機器に対して使う“校正”とは、数値(精度)が正しく調整されているかどうかを確認する作業を指します。
測定機器は長期間の使用により劣化などが生じ、測定値にズレが生じてくる可能性があります。そのため、定期的に校正を行い、標準温度計との器差を確認しなくてはなりません。

● 校正をしていないとどうなる

温度計が狂った状態で使うと、正しい温度の測定・記録が行えません。その結果、製品の不具合発生や食品事故などが起これば大問題です。さらに言えば、事故が起こらなくても事態は深刻です。温度計の数値に狂いがあったことが判明した場合、その期間で製造された商品すべてが適切な温度管理の下になかったと見なされます。状況次第では、すべての商品が回収や廃棄になるリスクさえあるのです。

● 校正をすべきタイミングは?

それでは、温度計の校正はどの程度の頻度で行うのがよいのでしょうか? そのタイミングは、機器の特性や使用頻度、環境次第で大きく異なります。たとえば使用頻度の多い温度計であれば、経年劣化のスピードも早くなるので、短期間での校正が必要になるでしょう。また、扱う商品が食品や薬剤など、精度を重視するものであれば、1カ月ごとに校正を行うケースもあります。
一方、機器によっては1~2年に1度で十分なものも。それぞれの見極めは容易ではないので、基本的にはメーカーに相談をするのがおすすめです。

HACCPでも必須になる中心温度計の校正

HACCPでは、温度記録・管理を衛星管理の必須行程としています。そのため、温度計の校正についても重要視されています。
公益社団法人日本食品衛生協会による「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)」には、中心温度計の校正方法が紹介されています。以下では、より具体的な手順をご紹介します。

STEP1. 氷温校正|温度計0℃の確認
まずは水と氷を用意します。氷をアイスピックなどで砕き、水と混ぜてシャーベット状にします。しばらく静置をしておくと、中心温度が0℃になります。
ここに、校正をしたい中心温度計を差し込んでください。計測値が0℃であれば問題ありません。なお、プラスマイナス1℃のズレであれば精度内と見なされます。これは、センサの挿れ方や周りの気温などに影響を受けるからです。

STEP2. 沸騰水校正|温度計100℃の確認
氷温校正の後は、100℃の確認(沸騰水校正)も行います。ここでは電気ケトルを使います(やかんはNG)。沸騰したお湯に中心温度計を静置して、100℃になれば合格です。なお、氷温校正のときと同じく、プラスマイナス1℃のズレについては精度です。

●冷蔵庫・冷凍庫で使用する温度センサの校正

HACCPにおける記録・管理すべき温度には、冷蔵庫・冷凍庫なども含まれます。そのため、庫内温度を測定している温度センサについても校正が必要です。以下は、その具体的な手順です。

STEP1.校正済み温度センサを用意する
まずは校正が確認された温度センサを用意します。できれば校正付きのものがあるとベストです。

STEP2. 校正済み温度センサの設置
校正済みの温度センサを冷蔵庫・冷凍庫に設置します。この際、既設の温度センサと同じ場所の温度を測定できるようにぴったりくっつけるような形で設置してください。

STEP3.温度差の確認・記録
温度センサ設置後は、扉が長時間にわたって開かれないタイミング(夜間など)を狙い、温度差の確認・記録を行います。校正済みの温度センサと既設の温度センサとの温度差が基準以内なければ、校正完了です。因みにタイムマシーン社の温度管理システム「ACALA MESH(アカラメッシュ)」で利用している無線通信型の温度センサであれば、校正中の温度は翌日以降でも遡って確認ができますので、庫内の温度が安定している夜間のある時点を校正点とすることも容易ですね。

● より厳密な校正ならタイムマシーンまで

当社では、上記でご紹介した事業者様自身による温度センサの校正よりも、より厳密な恒温槽制御システムを利用して行う温度校正をサービスとしてご提供しております。たとえば、医療現場などで求められるレベルの精度まで追求することも可能。この場合は、校正証書の発行まで含めて請け負っております。
なお、食品関連の場合はここまで厳密な校正が求められるケースは少ないと言えます。費用も高額となるため、現実的ではありません。こうしたお客様に対しては、校正証書付きの温度センサを1~2個貸し出すといった対応も可能です。この校正証書付きの温度センサを使って事業者様側で簡易的な校正を行っていただければ、コストを大きく抑えられます。

まとめ

温度管理・記録はHACCPのなかでも基本的な項目です。しかし、基本だからこそ間違いがあってはなりません。今回ご紹介したとおり、簡易的な方法であれば温度計・温度センサの校正は比較的容易に実施できます。正しい温度管理・記録のために、定期的な実施がおすすめです。

→HACCP義務化に対応!時短でリーズナブルなユーザ温度校正サービスの提供を開始