2023.03.31.Fri

食品製造における製造工程管理

食品製造の場面では、工程ごとに異なる管理が求められます。具体的には、以下のような工程のことです。

 

  1. 原材料・仕掛品の保存管理
  2. 成型・充填工程管理
  3. 加熱工程管理
  4. 冷却工程管理
  5. 冷凍工程管理
  6. 包装工程管理

今回は、保存から包装までの一連の流れのなかで注意したいポイント等を解説します。

原材料・仕掛品の保存管理

原材料・仕掛品の保管では、温度が微生物の増殖にどう影響するかを知り、意識的に適切な保存となっているかを確認することが大切です。以下は、一般的な微生物の増殖と温度について簡単にまとめた票です。

65℃以上 一部を除く微生物は死滅するケースが多い
※死滅までには相応の時間が必要
10~60℃ 微生物が増殖する
※30~40℃がもっとも活発に増殖
5℃以下 増殖しやすくはなるが、死滅はしない
-5℃以下 冷凍され冬眠状態となり、死滅はしない

たとえば冷蔵庫や冷凍庫の温度は、上記の関係性を踏まえた設定が大切です。具体的には、冷凍庫は-15℃~-18℃以下、冷蔵庫は10℃以下、食肉・魚介類は5℃以下で保管するのが適切と言えるでしょう。

加えて、冷蔵・冷凍庫が効率良く稼働するために、以下のポイントを意識してください。

  • 冷蔵庫内には物を詰めすぎないようにする
  • 壁から最低でも15cm以上離し、熱がこもらないようにする
  • 庫内温度を示す温度計や表示盤は外から確認できるよう外側に設置する
  • 温度センサーは冷風の吹き出し口やドア付近を避け、庫内中央部に設置
  • 冷蔵・冷凍庫のドアを開けたらできる限り早く閉じる
  • 庫内温度を定期的に測定・記録する

成型・充填工程管理

成型・充填工程における問題は、製品重量のバラツキです。たとえば通常より大きいものは中心部に熱が通りにくくなり、加熱不足などの問題が起こる可能性があります。

これを回避するには、重量モニタリングが重要です。この際、一度に多量のサンプルを測定するにはヒストグラムの使用が便利です。重量のバラツキの状況が分かりやすく把握できるため、迅速かつ適切な修正措置につながります。

加熱工程管理

加熱工程だけでは微生物を完全に死滅させることはできません。

多くの有害微生物は75℃で1分間の加熱を行うと死滅するとされます。しかし、芽胞菌をはじめとした熱に強い菌も存在しており、100℃で加熱をしたとしても死滅しません。このように、加熱処理による殺菌は、それぞれの特性に合わせた対応が必要です。なお、以下の表は代表的な有害微生物の最低殺菌温度条件です。ただし、こちらはあくまでも目安となるため、正確な条件は文献資料などをご確認ください。

微生物 最低殺菌温度条件
腸管出血性大腸菌 60℃
サルモネラ 60℃
黄色ブドウ球菌 60℃
腸炎ビブリオ 60℃
ボツリヌス菌(芽胞 121℃
カンピロバクター 60℃
ウエルシュ菌(芽胞) 100℃
セレウス菌(芽胞) 85℃

※出典:HACCP基盤強化のための衛生・品質管理実践マニュアル|一般財団法人 食品産業センター

温度測定のポイント

加熱調理を行った際には、しっかりと熱が通っているかを確認するための芯温測定が必要です。しかし、一口に温度計と言ってもさまざまな種類があるため、温度計の特性を理解した上での使い分けが必要です。

まずは加熱後の芯温測定。ここではサーミスタ温度計やバイメタル温度計が主に用いられます。サーミストア温度計を使う際には、センサー部を加熱した食材の中心部まで差し込みます。これは、中心部がもっとも熱が通りにくいからです。

なお、加熱釜などで食材を煮ている場合は、釜内部の温度のバラツキが発生します。そのため、中心部だけでなく左右も測定しましょう。

サーミスタ温度計やバイメタル温度計が使えないような製品(ショーケースの製品コンベアで運ばれている製品など)については、赤外線放射温度計が有効です。製品に接触せずに利用できるため、用途の幅が広がります。

ただし、赤外線放射温度計は対象物の表面温度しか測定できません。そのため、中心温度との温度差を事前に確認しておく必要があります。

加熱工程ではモニタリングが重要

加熱工程では、測定温度のモニタリングが求められます。これは、加熱によって殺菌を行っている場合、重要管理点(CCP)になるからです。また、最終製品の安全性を担保する目的もあります。

なお、万が一基準逸脱があった場合には、事前に決めた方法に従い対処します。あわせて、その処理を記録してください

冷却工程管理

加熱後の食品は、そのまま放置すると微生物が繁殖しやすい温度にまで冷めていきます。すぐに食さないのであれば、速やかに微生物が繁殖しにくい温度帯へと冷却しなくてはなりません。

なお、冷却にはいくつかの方法があります。

 

風による冷却 室内および放冷室で製品に扇風機などの風を当て冷却する方法です。
シンプルでコストもかからないのが魅力。
ただし、効果としては粗熱を取る程度となるため、より冷やしたい場合は別の方法を選ぶ必要があります。
また、表面の乾燥や、二次感染の可能性などに注意しなくてはなりません。
冷水による冷却 野菜などをブランチング処理した後は、冷水を使った急冷が必要です。
使用する水は5℃以下が望ましいと言われています。
ちなみに、冷水が用意できない場合は、流水や頻繁な換水を行ってください。
真空状態で冷却 惣菜や冷凍食品は、製造工程で真空冷却機を使用します。
冷却器は製品の劣化を最小限に抑えられるのが魅力。
ただし、適切な時間設定と庫内の洗浄を忘れないように注意しましょう。

 

冷凍工程管理

食品の冷凍工程でもっとも良くないとされているのが緩慢凍結です。これは、凍結のために温度を徐々に下げると-2℃~-5℃の温度帯で食品に含まれる水分が結晶になり、細胞壁を破壊してしまうからです。これによって、本来の風味やテクスチャーが失われ、品質が低下するおそれがあります。

解決策としては急速冷凍が最適です。食品中の水分が氷結する温度帯を短時間で通過できるため、細胞壁の破壊を最小限に留められます。ただし、急速冷凍のためには、その前に食品の温度をできるだけ下げておくことが必要です。そのために、前項でご紹介した真空状態での冷却などを併用します。

包装工程管理

最後は包装工程です。金属検出機やX線異物検出機の管理、期限表示の管理などが主なポイントになります。とくに期限表示ではケアレスミスも起こりやすいため、教育や正しい手順の掲示、放送フィルムの確認・記録といった工夫が必要です。

たとえば、包装ラインに当日の賞味期限やロットナンバーなどを掲示し、実際の包装フィルムなどを切り取って確認の上、記録しておくといった方法が有効です。

まとめ

このように、食品製造においてはさまざまな工程で異なる管理が必要になります。それぞれを適切に実施することが食品の安全性につながるため、いずれも疎かにはできません。

当社では、こうした製造工程をサポートするためのソリューションとして、自動温度管理システム「ACALA」シリーズをご提供しています。上記で解説したとおり、食品製造工程においては温度管理が重要な役割を担います。手作業の測定・記録は正確性に欠け、手間もかかるでしょう。また、データをデジタルで取り扱うことで、管理内容の分析なども行えます。システム化によるメリットは非常に大きいため、ぜひこの機会にご検討ください。