2019.11.19.Tue

温度管理システムとは

温度管理システムとは、対象物の温度を自動で計測し、そのデータを蓄積して監視や分析に利用するために構成された仕組みと、それを構成する機器全般のことです。室内・室外の温度はもちろん、冷蔵庫などの機器の管理にも用いられます。こちらでは、食品工場などで用いられる温度管理システムについてご紹介します。

温度管理の必要性

食材や薬品など、温度変化によって品質に変化が起こる製品や材料を取り扱う事業者にとって、温度管理は欠かせない業務です。万が一適切な温度で管理がされなかった場合、その製品や材料は安全面から廃棄を余儀なくされます。事業者にとって、こうしたロスは大きなダメージになるでしょう。温度管理を行うことは、製品の安全性を保持すると共に、事業のリスクを低減する目的もあります。

● 温度管理が必要となる業界

温度管理はさまざまな業界で必要とされています。食品の製造・調理現場はもちろん、小売や物流、さらには医療業界においても適切な管理が求められています。

  • 飲食店業界:厨房に設置した冷蔵庫・冷凍庫、食材を保管する倉庫など
  • 食品製造業界:食材を保管する冷蔵庫・冷凍庫、倉庫など
  • 小売業界:商品の陳列棚、在庫を保管する倉庫など
  • 物流・倉庫業界:食材を保管する倉庫や、製品等を運搬するトラックなど
  • 医療業界:薬を保管する冷蔵庫など

 

● HACCPと温度管理

約15年ぶりに改正された新たな食品衛生法では、HACCPの制度化が大きな柱として設けられました。これに伴い、すべての食品等事業者には、全行程における記録が必要になります。なお、この記録には何らかの作業だけでなく、保管時の温度記録も含まれています。つまり、それぞれのタイミングで食材などがどのように管理されていたかを記録しなくてはなりません。

温度管理システム導入のメリット

自動温度管理・記録システムを導入することで得られるメリットは多岐に渡ります。以下では、その代表例をご紹介します。

● 労働負荷の軽減

手作業による温度管理は、単純でありながらも煩雑な作業と言えます。冷蔵庫や冷凍庫に設置された温度計を確認するためには、その場所まで移動しなくてはなりません。また、定時のチェックが必要とされるため、その都度作業を中断する必要があります。食品工場や飲食店において、こうした人力の作業は極力省きたいもの。自動温度管理・記録システムを導入することは、この一連の作業をオートメーション化できるため、スタッフの労働負荷を軽減することにつながります。

● 計測精度の向上

人が目で見て手で書くという作業にはミスがつきものです。しかし、温度管理で漏れや誤記は本来許されません。疑わしいデータが含まれている状態では、正しい分析が行えなくなり、最終的な集計でもその信憑性が失われてしまうからです。一方、自動温度管理・記録システムであれば、常に正確な計測結果が漏れなく記録されます。また、人がチェックするよりも高頻度で計測・記録がなされるため、信頼性の高い連続データが取得できるのです

● リアルタイム監視・管理の実現

自動温度管理・記録システムは一定かつ細かな間隔で計測・記録が実行されます。こうした環境は、万が一のトラブルの際にも役立ちます。たとえば、冷蔵庫の扉がきちんと閉められないまま放置されているようなケースです。プラットフォーム次第ではありますが、閾値を超える温度の上昇をシステムが感知すると、アラートがメールなどで自動発報されます。また、クラウド環境にプラットフォームがあれば、現在の設備の温度をいつでもどこでもリアルタイムに確認できるのもメリットです。

温度管理システムに求められるもの

自動温度管理・記録システムには、安定した稼働やメンテナンス性、高い計測精度が求められます。具体的な内容について、以下で解説します。

● 安定稼働

自動温度管理・記録システムには、安定した稼働が求められます。通信が途切れてしまったり、ロガーのバッテリー(ワイヤレスシステムの場合)が尽きてしまったりすると、計測・記録が行われません。自動温度管理・記録システムのメリットである“連続データの蓄積”が行えなくなってしまいます。

● メンテナンス性

自動温度管理・記録システムを構成する端末等は、メンテナンス性に優れている必要があります。たとえば食品工場の場合、端末に水が跳ねたり汚れがついたりする可能性があります。そのまま工場内に端末を置いて置くのは衛生上好ましくありませんので、清掃が必要です。また、ロガーなどに何らかの不具合が発生した場合には、早急な修理対応が求められます。そのため、回収が容易にできなくてはなりません。

● 計測精度

温度の計測には高い精度が求められます。これを実現するためには、自動温度管理・記録システムで用いる温度計を、対象物に合わせて選定する必要があります。そのため、さまざまな種類の温度計に対応していることも求められる要件のひとつと言えるでしょう。また、設置が簡単であり、場所を選ばないということも計測精度を高める上では重要です。

温度管理システムの構成

自動温度管理・記録システムを構築する際には、以下のようなハードウェア・ソフトウェアが必要です。それぞれの概要や特長、種類を解説します。

● 温度計

対象物の温度を測定するための装置です。計測された温度はデータへと変換され、ロガーへと送られます。

    • 必要となる種類

冷蔵庫・冷凍庫だけでなく、食品そのものなど、温度測定の対象物にはさまざまなものがあります。それに合わせて、温度計にも多岐に渡る種類があります。自動温度管理・記録システムを構築する上では、この温度計選定も重要です。

 

● ロガー

温度計が測定したデータを蓄積するためのハードウェアです。温度計と一体型のものも多く、取り回しの面で優れています。なお、ロガーには有線型と無線型の2種類があるほか、無線型には通信規格に違いがあります。また、温度計もロガーも工場内に設置することが多いため、メンテナンスを考えて防水加工タイプを選ぶのがおすすめです。

● ネットワーク機器

ネットワーク機器にはルーターやスイッチなど、さまざまなものがありますが、なかでも重要なのがゲートウェイです。これは各ロガーと接続し、サーバへ計測データを送受信する役割があります。ネットワークの拠点になるという意味で、ベースステーションとも呼ばれます。
また、ネットワーク機器には有線型と無線型、もしくは有線・無線混合型があります。設置場所やシステムに合わせて適切な構成が求められます。

    • 有線の場合

有線型のネットワーク機器を使ってシステムを構築する場合は、サーバや各ロガーがゲートウェイと比較的近距離にある必要があります。これは、各デバイスをLANケーブルなどで直接接続する必要があるからです。なお、配線に伴って室内のレイアウトを変更しなくてはならない場合もあります。

    • 無線の場合

無線型のネットワーク機器を用いた場合、各デバイスの設置場所の自由度が生まれます。また、比較的規模の大きい工場の場合は、有線接続が物理的に難しいこともあり、ワイヤレスの利用が必須となるケースも。ただし、無線は有線に比べて安定性の面で劣る傾向にあります。そのため、どのような通信規格や技術を使うかを慎重に決めなくてはなりません。

● サーバー

ゲートウェイから送信された計測データを受け取り、蓄積するための機器です。なお、データの送受信を行うためには必要なソフトウェアをインストールする必要があります。

    • オンプレミスとクラウド

サーバには大きく分けて「オンプレミス」と「クラウド」というタイプがあります。前者は食品工場などに直接設置するもの。基本的に自社で購入し、保守・運用を行う必要があります。
一方、クラウドサーバは、ベンダが提供するサーバの一部を間借りして利用する仕組みのことです。保守・運用をベンダに任せられるほか、導入スピードやセキュリティ面でオンプレミスより優れます。

 

● プラットフォーム

サーバにインストールされるソフトウェアです。サーバに蓄積されたデータを解析したり、異常を検知した際にアラートを発報したりできます。

    • 専用プラットフォームの重要性

自動温度管理・記録システムを導入する際には、温度管理業務に最適化されたプラットフォームを用意しなくてはなりません。そのため、自社に必要な機能などを盛り込んだプラットフォームを開発するケースも少なくありません。ただし、開発には多くの労力と費用がかかります。一方で、自動温度管理・記録システムをワンストップで提供しているサービスの場合は、はじめから温度管理業務を前提とした専用プラットフォームが附帯しているケースもあります。

 

ワイヤレスによるシステム構築の必要性とメリット

前項では、システムにおける有線と無線に関する違いを簡単にご紹介しました。しかし、よほど小規模でもない限り、自動温度管理・記録システムはワイヤレスで構築するのがおすすめです。以下で、ワイヤレスシステムの必要性とメリットをご紹介します。

● 増設を含む設置が容易

ワイヤレスは場所を選ばず、設置も容易である点が大きなメリットです。増設の際にも配線の必要がないので、工場内のレイアウト変更も不要。手軽に場所を変えたり、台数を増やしたりできます。

● メンテナンス性が高い

ワイヤレスタイプの端末には通信ケーブルや電源ケーブルが不要なため、回収も容易です。万が一端末に何らかのトラブルが発生した際には予備機との交換も簡単で、かつメンテナンス性にも優れます。

● 初期コスト削減

有線でシステムを構築した場合、もっとも大きな問題となるのが配線です。場合によっては、工場や厨房で大幅なレイアウトの変更・施工が必要になることもあるでしょう。一方、ワイヤレススステムには配線が一切不要。そのため、現状のまま即時設置ができます。結果として、イニシャルコストも安くあがるでしょう。

【注意】安定稼働に関わる要件

有線によるシステムの構築には配線といった煩わしさがある反面、通信の安定というメリットがあります。言い換えるのであれば、ワイヤレスには通信途絶などのリスクが懸念されるということです。そのため、自動温度管理・記録システムを選ぶ際には、以下の要件を満たしている必要があります。

    • 堅牢なワイヤレスネットワーク

一口にワイヤレスといっても、通信規格や技術にはさまざまな種類があります。どのような仕組みで堅牢性を維持しているのか?実際に“途切れない”ワイヤレスなのか?といった部分は、各システムによって異なるため、事前に十分確認をしておきましょう。

    • ロングバッテリー(低電力)

無線ロガーの場合は、バッテリーの稼働時間が非常に重要です。月に1回の充電・交換が必要といった仕様だと、その手間がネックになるでしょう。そのため、いかに低電力でありロングバッテリーを実現しているかを確認しておく必要があります。理想を言うのであれば、ほとんどバッテリーの充電・交換が不要なものを選びましょう。

    • ベンダーサポート

ワイヤレスネットワークの構築には高い技術力が必要です。そのため、問題解決のために専門的な知識が必要となる場面もないとは言えません。こうしたケースに備え、ベンダーがどこまでサポートを行っているかは事前に確認すべきです。

 

ACALA MESHの紹介

これから自動温度管理・記録システムを導入したいとお考えの方には、当社がご提供するクラウド型統合温湿度監視記録ソリューション「ACALA MESH」がおすすめです。以下で、サービスの特徴をお伝えします。

● 高信頼なワイヤレスネットワークを構築

ACALA MESHには、「メッシュネットワーク」「精密時刻同期」「周波数ホッピング」という最新のテクノロジーが搭載されています。これにより、高い信頼性の無線ネットワークを実現。たとえ通信障害が起こったとしても、自己修復が行われて確実に連続データの取得を行います。また、非常に低電力な仕組みが採用されていることもあり、「電池寿命5年」というロングバッテリーも実現しました。

● 初期設定・工事は一切不要

ACALA MESHは、導入・設置の手軽さに定評があります。構築の方法は、無線センサを計測場所に設置して電源を入れるだけ。自動的にネットワークが構成され、温度測定が開始されます。もちろん、ワイヤレスなのでレイアウト変更や工事も一切不要です。また、当社がご提供するクラウドサーバに専用のプラットフォームもご用意しているため、機器が到着したその日より、すぐに自動温度管理・記録システムの運用が可能です。

● 初期費用は0円

ACALA MESHは月額料金制を採用しています。機器はすべてレンタルとなるため、購入の必要はありません。また、上記でも触れたとおり、設置工事なども不要なので、初期費用は0円です。手軽に自動温度管理・記録システムを導入したいとお考えの方は、ぜひご検討ください。

まとめ

食品業界はもちろん、温度が品質に関係する事業において、温度管理システムは必要不可欠な存在です。自社に導入する場合には、どのような要件が求められるのか、最適な仕様について検討しましょう。なお、当社にご相談いただければ、各事業者様に合わせた最適なご提案も差し上げます。まずは一度、お気軽にご相談ください。

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