2022.08.11.Thu

ワイヤレス(無線)ではじめる温度管理・記録システム

HACCPの構築などに伴い、自動温度管理・記録システムの導入をご検討中の方は少なくありません。この際にポイントとなるのが、システムをワイヤレス(無線)化するか否か。そこで今回は、ワイヤレス(無線)式の自動温度管理・記録システムのメリットや仕組みをご紹介します。

温度管理・記録の重要性

HACCPでは、温度管理・記録が重要視されています。食品を取り扱うのであれば、温度を管理するのは基本中の基本。ハザードを取り除くのにも必須条件となります。それに加えて、しっかりと温度記録を行うことは、トラブル発生時の原因究明などに役立ちます。

リアルタイム性を重視するならワイヤレス(無線)方式

HACCPでは、モニタリングの方法を決定する際に「可能な限りリアルタイムに判断が行えること」が求められます。これは、計測のインターバルが長いと、異変発覚のタイミングが遅れてしまうためです。

しかし、USBインターフェースを用いた温度ロガー(温度記録計)の場合は、人がデータを取得しにいく必要があるためリアルタイム性が保たれません。また、有線LANなどの場合はケーブルの取り回しが煩雑になりがちで、工場レイアウトにも影響が出る可能性も。かつ、水や蒸気が発生する食品工場では、中長期的に防水面で不安が残ります。

その点、ワイヤレス(無線)方式の温度ロガーであれば、リアルタイム性を担保し、かつケーブルなどの問題もクリアできます。より詳しいメリットについては「無線ロガーで冷蔵庫の温度管理の課題を解決」をご覧ください。

Wi-Fi・Bluetoothを使った無線方式の問題点

一般に販売されているワイヤレス(無線)式の温度ロガーは、Wi-FiやBluetoothを用いたものが多い傾向にあります。お弁当屋さん程度の小さな厨房であれば、こうした無線方式であっても十分でしょう。一方、入り組んだ倉庫や広域での利用には不安が残ります。

また、WI-FIは消費電力が大きくなるため、電池消耗を抑えるためにデータ転送の間隔を長く取る仕様のモデルも見られます。測定自体は毎分であっても、これではリアルタイム監視には向きません。また、Bluetoothも含め、一般的に使われる無線方式は別の機器と干渉・混線する可能性も。実務で利用するのであれば、より信頼性の高い無線方式を利用するのが大切です。

なお、当社がご提供するACALA MESHには、高信頼性の無線通信と超省電力性を実現した「SmartMesh IP」を採用しています。詳しくは「高信頼の接続を実現するSmartMesh IPのメリット」をご覧ください。

ワイヤレス(無線)による温度管理・記録システムの流れ

ワイヤレス(無線)の温度管理・記録システムを構築した場合の流れを解説します。なお、各機器についての詳しい解説は「自動温度管理・記録システムで必要になるハードウェア・ソウトウェア」をご覧ください。

STEP1.温度ロガーの設置

まずは計測を行う場所へ温度ロガーを設置します。この際には、計測対象に合わせた温度ロガーの選定が必要です。たとえば冷蔵庫・冷凍庫の場合は、低温を得意とする温度ロガーを用意しましょう。

 

STEP2.温度ロガーによる計測・記録

温度ロガーに内蔵された(もしくは取り付けられた)センサが温度を計測します。そのデータをロガーが記録し、メモリ等に保存されます。

 

STEP3.ゲートウェイを介してサーバへデータを送信

温度ロガーは定期的にデータの送信を行います。この際の発信先は拠点に設置されたゲートウェイです。ここを介して、データがサーバへと運ばれます。

 

STEP4.サーバにデータが蓄積される

送信されたデータはサーバのデータベースに登録され、蓄積されます。

STEP5.プラットフォームでのリアルタイム監視

データベースに登録された情報を元に、プラットフォーム上で現在の温度計測箇所の監視が行われます。定期的にデータは送信されるため、リアルタイムな監視が実現します。

 

STEP6.トラブル発生時のアラート

プラットフォーム上で設定した閾値に逸脱などが発生した場合には、メールや電話、発光装置などによるアラートが発せられます。ユーザーがアラートを確認することにより、トラブルの防止につなげます。

 

STEP7.温度データの分析で改善を実施

プラットフォームにはデータを蓄積するだけでなく、過去のデータ等を用いた分析なども可能になります。トラブルの原因究明や、現場の作業改善など。温度記録・管理に特化したソフトウェアだからこその用途が期待できます。

 

ワイヤレス(無線)温度記録・管理システムの選び方

 

ワイヤレス(無線)方式の温度記録・管理システムを選ぶ際には、いくつかのポイントがあります。

イニシャルおよびランニングコスト

どのようなシステムであっても、選定の際はコストが重要なポイントになります。判断材料になるのは、開発等の必要性です。どうしても自社に最適化されたシステムを作り上げなくてはならないのであれば、高額なイニシャルコストを覚悟すべきでしょう。一方、近年ではイニシャル0でスタートできる、サブスクリプション方式のシステムも増えています。自由度は低くなるものの、温度管理・記録においては十分な機能が備わっているものが多いため、必要十分かを確認するのがおすすめです。

 

専門知識不要で設置・操作可能かどうか?

温度管理・記録システムの構築を自社で行おうとすると、知識や経験が求められます。とくに自社に専門のエンジニアが在籍していない場合は、設置やプラットフォームの操作が困難となる可能性が考えられるでしょう。そのため、システムを選定する場合には、導入時の設置が簡単で、かつ直感的にソフトウェアを操作できるかなどを確認することが大切です。

 

信頼性の高い無線ネットワークが構築できるか?

先述のとおり、ワイヤレス(無線)システムで最も重要な問題は、混線や断線によるデータの欠損です。ネットワークに不備があっては、いくら整備を整えたとしても必要なデータを記録・保存できません。そのため、システム選定時にはネットワークの信頼性に重きを置くことをおすすめします。

ロングバッテリーを実現する高い省電力性

多くのワイヤレス(無線)式温度ロガーは、バッテリーで駆動します。そのため、使用を続けると必ずバッテリー切れが起こります。この際、充電のために温度ロガーを取り外すというのは面倒。かつ、サブ機がなければその間のデータ欠損にもつながります。この状況を回避するためには、大容量のバッテリーがある、もしくは省電力性が高いシステムを選ぶことが大切です。詳しくは「ワイヤレス自動温度管理・記録システムは温度ロガーの省電力性に注目」をご覧ください。

 

さまざまな温度センサに対応しているか?

食品工場で測定すべき対象は、冷蔵庫・冷凍庫の温度や室温、食品の中心温度、オーブンの温度など、多岐にわたります。また、それぞれの計測対象には、それぞれ適した温度センサが求められます。そのため、システムを選定する際には、提供事業者が豊富な温度センサを用意し、提供してくれるかを事前に確認するようにしましょう。

 

クラウドサーバで利用できるか?

サーバがクラウド上に置かれていると、プラットフォームの操作をいつでもどこからでも行えるようになり便利です。オンプレミス環境でも実現は可能ですが、この場合、開発はもちろん保守・運用でのランニングコストが高く付く可能性も。クラウドシステムのメリットについては「複数拠点にまたがる食品工場での温度記録・管理をクラウドシステムで一括管理」もご覧ください。

 

まとめ

今回ご紹介したとおり、ワイヤレス(無線)式の自動温度記録・管理システムは有線式に比べてメリットが多く、信頼性も十分です。適切なシステムを選定できれば、食品安全性を高めるのに寄与してくれることでしょう。未導入の場合は、ぜひともご検討ください。