2025.05.30.Fri

飲食店で食品ロスが起こる原因は?具体的な対策も紹介

「食品ロス」は食品業界で注目されている課題のひとつであり、飲食店でもその削減に向けた対策が求められています。しかし、食品ロスを削減する具体的な対策が分からない方も多いのではないでしょうか? 本記事では、飲食店で食品ロスが発生する主な原因を解説し、飲食店で取り組める具体的な対策を紹介します。

飲食店で食品ロスが発生する原因

2022年に国内で発生した食品ロスは472万トンであり、その50%(236万トン)が食品関連事業者に由来するものでした。事業系食品ロスの半数は食品製造業で発生していますが、外食産業はその次に多い25%(60万トン)を占めています。

このように、食品ロスにおける外食産業の占める割合は決して小さくなく、飲食店も食品ロス削減に向けた対策が求められています。

飲食店で発生する食品ロスの主な原因は、次のとおりです。

 

  • 来店客の食べ残し
  • 過剰な仕入れや仕込み
  • 調理やオーダーでのミス
  • 不適切な食品管理

 

とくに、来店客の食べ残しは飲食店で発生する食品ロスの大部分を占めています。食べ残された食品は再利用できず、廃棄するしかないため、来店客が食べ切れるような工夫が重要です。

不適切な食品管理とは、消費期限・賞味期限切れや温度管理ミスによる食品の廃棄を指します。これらは管理の徹底により改善の余地があるため、在庫管理や温度管理の見直しが必要です。

参考:消費者庁 消費者教育推進課 食品ロス削減推進室「食品ロス削減関係参考資料」

食品ロス削減によるメリット

食品ロスを減らすことは、飲食店にとってコスト削減になり、地球環境の保護にも貢献できます。これらのメリットについて詳しく解説します。

コスト削減

食べられるはずの食品が廃棄されると、仕入れにかかった食材費、食品の保存や調理に利用される光熱費、仕入れや調理に関わった従業員の人件費が無駄になります。さらに、食品の廃棄にも費用負担が伴うため、食品ロスが増えるほど廃棄コストも増大します。

食品ロスを減らせばこれらのコストが低減され、経営が安定するでしょう。また、これまで廃棄していた食品を活用できるメニューを考案すれば、売上アップにつながる可能性もあります。

地球環境の保護

ゴミの運搬や焼却時にはCO2(二酸化炭素)が生じます。また、ゴミを埋め立てると微生物により有機物が分解され、CO2に加えてメタンも発生します。CO2やメタンは、地球温暖化の原因となる温室効果ガスのひとつです。さらに、食品ロスでは、食品の生産に利用される大量の水資源が無駄になることも問題視されています。

食品ロスの削減は、温室効果ガスの発生や水資源の浪費を抑制し、地球環境への貢献につながります。

飲食店でできる食品ロス対策

 

ここからは、飲食店で取り組める具体的な食品ロス対策を紹介します。

食べ残しを持ち帰ってもらう

飲食店で食べ切れなかった料理を来店客に持ち帰ってもらうことは、食品ロス削減に効果的な手段です。ただし、提供してから時間が経過した料理は、食中毒のリスクが高まることに注意しなければなりません。

飲食店は次の点に配慮しましょう。

 

  • 持ち帰りを希望する客には、食中毒のリスクや衛生的な取り扱いについて十分に説明する
  • 持ち帰りには加熱調理された料理のみを提供する
  • 清潔な持ち帰り容器を使用し、清潔な箸などで詰める
  • 夏場など気温が高い時期は持ち帰りを控えるか、保冷剤を用意する

 

生ものや火が通りきっていない料理は食中毒のリスクが高いため、客の希望があっても持ち帰りに応じないようにしましょう。また、持ち帰りの際、容器に製造日時を記したシールを貼ったり、料理の取り扱い方を説明した紙を添えたりするのもおすすめです。

食べる量を調整できるようにする

食べ残しが発生しないよう、食べ切れる量を提供する工夫も必要です。具体的な取り組みには次のようなものがあります。

 

  • メニューや卓上POPに写真を載せたり、食品サンプルを用意したりして、提供量が分かるようにする
  • 通常メニューよりも提供量が少ない小盛りメニューを用意する
  • 子どもや女性、高齢の方には盛り付ける量を少なめにする
  • 大皿料理は一人分に取り分けてから提供する
  • 客の人数に対して注文した量が明らかに多い場合は、減らすように声をかける

 

パーティーや宴会の場合、あらかじめ参加者の年齢層や男女比、料理の好みなどの情報を聞き取り、提供するメニューや量を主催者と打ち合わせておくのもよいでしょう。

料理を提供するタイミングを調整する

温かい料理はできたてが最もおいしいものです。冷めるとおいしさが失われ、食べ残される可能性が高まります。また、テーブルにたくさんの料理が並ぶと、視覚的に満腹感を覚えて食べ切れなくなることもあります。

そのため、一度に複数の料理の注文を受けた場合は、一気にすべて提供するのではなく、タイミングを計りながら料理を提供しましょう。おいしい状態で食べてもらえると、食べ残しが減るうえに、客の満足度が向上して店に対する評価が高まることも期待できます。

インセンティブを用意する

料理を食べ切ることでお得になるサービスを提供する方法もあります。具体的には次のようなサービスがあります。

 

  • 料理を食べ切った客に割引クーポンを配布したり、ポイントを付与したりする
  • 小盛りメニューは通常メニューよりも価格を安くする
  • 閉店時間前に価格の割引を行う
  • 食べ切れなかった料理の持ち帰りに再利用可能な容器を使い、容器の返却時に割引クーポンなどを提供する

 

静岡県では「食べきりやったね!キャンペーン」と称した、食品ロス削減につながるポイント付与サービスに取り組んでいます。これは、協力店で料理を食べ切り、店舗にあるQRコードを読み込むことでポイントを獲得できるというサービスです。

また、閉店時間前の値引きはスーパーなどの小売店では一般的に行われていますが、セルフサービス型のカフェや、チェーン展開している飲食店でも実施された事例があります。

データを分析して来店予測を立てる

過剰な食材の仕入れや料理の仕込みを減らすために、来店予測の精度を高めましょう。来店予測は人の感覚に頼るのではなく、データに基づいて行うことが重要です。

まずは曜日や時間帯、天気、イベント、来店客数などを細かく記録します。あわせて、食材や料理の廃棄量も記録するとよいでしょう。蓄積したデータを分析して仕入れや仕込みの量を調整すれば、廃棄量の削減につながります。

データの収集や分析を効率化するなら、「POSシステム」の導入がおすすめです。POSシステムとは、客の購買データを記録し、集計するシステムです。タブレット端末を活用した個人店でも導入しやすいPOSシステムも提供されているので、来店予測の精度を高めるために利用を検討してみましょう。

食品の管理を徹底する

消費期限や賞味期限の把握、冷蔵庫や冷凍庫の温度管理を徹底し、食材の廃棄を防ぎましょう。

先に仕入れたものから使用する「先入れ先出し」は在庫管理の基本です。また、定期的な棚卸しを実施して、期限が迫っている食材がないかチェックすることも大切です。

さらに、冷蔵庫や冷凍庫の温度管理をこまめに行い、食材に適した温度が保たれているか、設備に異常がないか確認しましょう。老朽化により、冷蔵庫や冷凍庫の冷却効率が低下している場合もあります。最新の設備では高い省エネ性能と冷却機能を兼ね備えたものもあるので、古い冷蔵庫や冷凍庫は更新してもよいでしょう。

まとめ

飲食店における食品ロスを削減するためには、来店客が料理を食べ切れるように配慮することが重要です。また、食品を適切に管理し、食べられるはずのものを廃棄しなければならない状況を防ぐことも求められます。

冷蔵庫や冷凍庫の温度管理は「ACALA MESH」で効率化できます。「ACALA MESH」は温度管理を自動化するIoTシステムです。冷蔵庫や冷凍庫に設置したセンサーが1分ごとに温度を自動測定し、無線ネットワークを利用してデータを収集します。

さらに、異常な温度変化を検知すると、ブザーやメール、電話で通知される機能も備わっており、トラブルへの迅速な対応も可能です。「ACALA MESH」を導入して食品の温度管理を徹底し、食品ロスの削減を目指しましょう。