2026.02.24.Tue

食品衛生の基準とは?食品の規格基準について徹底解説

食品工場の品質管理において、改正される法律や厳格化する基準への対応が急務となっています。特に、万が一の回収事故(リコール)を防ぐためには、曖昧な知識ではなく、公的な根拠に基づいた正確な理解が不可欠です。 本記事では、厚生労働省から消費者庁へ移管された新しい行政体制下での「食品衛生基準」の定義と目的、主要な食品カテゴリーごとの規格について解説します。 また、法令遵守(コンプライアンス)の枠を超え、企業の信頼性を高める国際規格「コーデックス」や日本発の「JFS規格」についても触れます。盤石な衛生管理体制を構築するための手引きとしてご活用ください。

食品衛生の規格基準とは?目的や定義

私たちが安全な食品を製造・販売できるのは、法律によって明確なルールが定められているからです。食品規格とは、食品衛生法に基づき、飲食による衛生上の危害発生を防止するために国が定めた「最低限守らなければならないライン」を指します。

この章では、食品衛生基準の消費者庁への移管後における各機関の役割分担と、食品衛生における3つの規格基準について解説します。

2024年4月|行政の厚生労働省から消費者庁への移管

2024年4月より、食品衛生基準に関する行政業務は厚生労働省から消費者庁へと移管されました。これまで厚生労働省が一元的に担っていた業務のうち、「規格基準の策定」に関する権限が消費者庁へ移りました。

具体的な役割分担は以下の通りです。

機関 役割 主な業務内容
消費者庁(食品衛生基準審査課) 基準策定 品添加物の指定、農薬の残留基準設定、規格基準の企画立案
厚生労働省 監視指導 食中毒対策、HACCPの指導、輸入食品の監視、検疫所の運営
食品安全委員会 リスク評価 科学的知見に基づく健康への影響評価

 

実務上、日々の衛生監視や保健所の立ち入り検査は引き続き厚生労働省(および自治体)の管轄ですが、食品衛生基準の最新情報や改正通知は、消費者庁の「食品衛生基準行政」のページを確認する必要があります。

食品衛生における3つの規格基準

食品衛生法第11条に基づき設定されている規格基準は、大きく3つに分類されます。

これらは推奨事項ではなく法的義務であり、違反した場合は食品衛生法違反として回収命令や営業停止処分の対象となります。

食品衛生における3つの規格基準は以下の通りです。

 

  1. 成分規格|食品に含まれる物質の基準
    • 細菌数(一般生菌数、大腸菌群など)、食品添加物の使用量、残留農薬、抗生物質の残留量などの限度値。
    • 清涼飲料水におけるヒ素や鉛の検出限界など。
  1. 製造基準|製造・加工プロセスの基準
    • 加熱殺菌の温度と時間、使用する器具の材質、殺菌方法などの規定。
    • 食肉製品における「中心温度63℃で30分間加熱」など。
  1. 保存基準|保管・流通時の基準
    • 保存温度(10℃以下など)、保存方法(遮光、密閉など)、容器包装の要件。
    • ゆでがにの保存温度(10℃以下)、生食用カキの保存基準など。

 

これらの基準は、食品規格基準一覧として「食品、添加物等の規格基準(昭和34年厚生省告示第370号)」にまとめられています。特に「製造基準」と「保存基準」は、現場での温度管理記録が遵守の証明書となります。

食品衛生基準|規格が定められている食品の具体例一覧

 

「食品衛生基準」は、すべての食品に一律の数値が設定されているわけではありません。食品の特性や食中毒リスクの高さに応じて、品目ごとに細かく「食品規格基準 一覧」として定められています。

特に水分活性が高い食品や非加熱で摂取する食品については、食品衛生法に基づく微生物基準が厳格に設定されており、わずかな逸脱も許されません。

この章では、実務で特に注意が必要な「乳製品」「食肉製品」「魚介類」などを中心に、それぞれの規格基準の具体例を紹介します。

乳製品・乳加工品の規格基準

牛乳や乳製品は栄養価が高く細菌が繁殖しやすいため、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」に基づき、厳格な基準が設けられています。

過去に大規模な食中毒事件が発生した経緯もありました。そのため、原料乳の受け入れから製品の出荷に至るまで、詳細な微生物基準と製造基準が定められています。

製品分類ごとの規格基準例は以下の通りです。

 

■牛乳

  • 成分規格:比重028~1.034、酸度0.18%以下、細菌数5万/ml以下、大腸菌群 陰性。
  • 製造基準:保持式殺菌(63℃・30分間)または高温短時間殺菌(72℃以上・15秒以上)

 

■アイスクリーム類

  • 成分規格:細菌数10万/g以下(アイスクリーム)、大腸菌群 陰性。
  • 製造基準:殺菌後の冷却温度などの規定あり。

 

乳製品において「大腸菌群 陰性」は絶対条件です。これを担保するためには、加熱殺菌工程(CCP)における温度と時間の正確な管理・記録が欠かせません。

食肉製品・食肉加工品の規格基準

ハム、ソーセージ、ベーコンなどの食肉製品は、ボツリヌス菌やサルモネラ属菌、リステリアなどの食中毒リスクが高いため、製品タイプごとに詳細な食品衛生法 微生物基準が定められています。

食肉は獣畜由来の微生物汚染のリスクが避けられず、特に非加熱や低温加熱の製品では、微生物制御の失敗が致命的な事故につながるため、注意が必要です。

製品分類ごとの規格基準例は以下の通りです。

 

■特定加熱食肉製品(ローストビーフなど)

  • 製造基準:中心部の温度を63℃で30分間加熱するか、これと同等以上の効力を有する方法で加熱殺菌すること。
  • 微生物基準:大腸菌群 陰性、クロストリジウム属菌 1,000/g以下など。

 

■乾燥食肉製品(ビーフジャーキーなど)

  • 水分活性:87未満であること。

 

特定加熱食肉製品における「中心温度63℃で30分間」の条件は、HACCPプランにおける管理基準(CL)そのものです。この温度帯を維持できたことを証明するためには、温度ロガーなどの連続的な温度モニタリングシステムの活用が推奨されます。

魚介類・魚介類加工品の規格基準

魚介類は鮮度低下が早く、ヒスタミン生成や腸炎ビブリオ増殖のリスクがあるため、刺身などの生食用と加熱用で明確に異なる基準が適用されます。

特に生食用鮮魚介類は、加熱殺菌工程を経ずに消費者の口に入るため、流通過程での温度管理が安全性の生命線です。

製品分類ごとの基準例は以下の通りです。

 

■生食用鮮魚介類

  • 成分規格:腸炎ビブリオ 最確数100/g以下。
  • 保存基準:10℃以下(生食用冷凍鮮魚介類にあってはマイナス15℃以下)で保存。

 

■生食用かき

  • 成分規格:細菌数 50,000/g以下、coli 最確数 230/100g以下。
  • 加工基準:殺菌海水等で浄化されたもの等。

 

魚介類の場合、市場から工場、出荷までの「温度管理」が途切れないことが重要です。一度でも基準温度を逸脱すると、菌数が爆発的に増加する恐れがあります。

その他の規格基準対象食品

乳・肉・魚以外にも、清涼飲料水、冷凍食品、即席めん、弁当・惣菜など、多くの加工食品に個別の規格基準があります。

加工形態や喫食方法によってリスク要因が異なります。

以下は、規格基準対象の食品の例です。

 

■清涼飲料水

成分規格としてヒ素、鉛、カドミウム、スズなどの重金属基準に加え、大腸菌群陰性が求められます。また、pH4.0未満か以上かによって殺菌温度基準(85℃30分や65℃10分など)が異なります。

 

■冷凍食品

凍結させる直前に加熱されたものは「細菌数10万/g以下」、加熱されていないものは「細菌数300万/g以下」など、区分によって許容値が異なります。

詳細は、最新の厚生労働省の「食品、添加物等の規格基準」で確認してください。特に新商品を開発する際は、どのカテゴリーに分類されるかで必要な設備や工程が変わるため、事前の調査が不可欠です。

法令遵守のその先へ|国際規格「コーデックス」と日本発「JFS規格」

国内の食品衛生基準をクリアすることは、食品事業者としての最低条件です。グローバル化が進む現代においては、より高いレベルの衛生管理能力を証明することが、企業の競争力やブランド価値に直結します。

この章では、世界の食品貿易の基準となる国際規格「コーデックス」と、HACCPの制度化に対応し日本発の食品安全マネジメント規格「JFS規格」について解説します。

コーデックス|WHO・FAOが定める国際食品規格

コーデックスは、WHO(世界保健機関)とFAO(国連食糧農業機関)が合同で設立した委員会が作成する国際食品規格です。

1963年の設立以来、日本を含めた189ヶ国とEUが加盟しており、国際社会で共有される食品規格として世界的に認められています。まずは国際的な「安全のベースライン」を知ることが第一歩です。

ここでは、コーデックスの役割とその影響について解説します。

■コーデックスの役割

コーデックスには、以下の2つの重要な目的があります。

 

  • 消費者の健康保護
  • 食品取引での公正性の確保

 

食の安全を追求することはもちろんですが、世界中で生産された食品を効率よく流通させるためには、共通言語としての公正な基準が必要です。

国連が目指した自由貿易の実現において、食品規格の違いが貿易の障壁にならないよう、コーデックスは「世界共通のものさし」としての役割を担っています。

■コーデックスによる影響

「推奨規格に過ぎない」と思われがちですが、現在の国際貿易においてコーデックスは無視できない強力な効力を持っています。

1995年のWTO(世界貿易機関)発足以降、コーデックス規格は貿易紛争解決における「科学的根拠」として採用されるようになりました。

そのため、日本が国内ルールで輸入食品を拒否した場合、正当性が証明できなければ、WTO協定違反として提訴されるリスクがあります。輸出を行う際は、相手国の独自規制だけでなくコーデックス基準を満たしているかが問われます。

残留農薬基準や添加物の使用基準などは、今後ますます国際整合性が求められます。海外展開を視野に入れている企業は、常に最新のコーデックス動向をチェックする体制が必要です。

JFS規格|日本発の食品安全認証制度

JFS規格は、日本食品安全マネジメント協会が策定した、日本発の食品安全マネジメント規格です。HACCPの制度化に対応しつつ、さらに組織的な管理体制を構築したい企業に適しています。

国際的な食品安全の枠組み(GFSI)と整合性を持ちつつ、日本の食品業界の特性に合わせて、段階的にステップアップできる仕組みになっているため、中小規模の工場でも取り組みやすいのが特徴です。

■JFS規格の3つの構成要素

JFS規格は、組織全体で安全を守るための3つの要素で構成されており、これらが相互に作用して機能します。

JFS規格の3つの構成要素は以下の通りです。

 

  1. FSM(食品安全マネジメント):組織としての管理責任、資源の管理など。
  2. HACCP(ハサップ):危害要因分析と重要管理点の監視。
  3. GAP(適正農業管理/適正製造規範):一般的衛生管理プログラム(手洗い、清掃、温度管理など)。

 

特にFSM(マネジメント)が含まれる点が重要です。現場任せにせず、経営トップが責任を持って資源(人・モノ・金)を配分することが求められます。

■JFS規格A・B・Cの違い

JFS規格は、企業の規模や目標に合わせて「A・B・C」の3段階から選択でき、ステップアップが可能です。認証取得は、取引先からの信頼獲得や販路拡大に直結します。

規格の違いと適用範囲は以下の通りです。

 

  • JFS-A:小規模事業者向け。HACCPの考え方を取り入れた衛生管理。
  • JFS-B:中規模・国内取引向け。HACCP制度化に完全対応しており、多くの製造業がここを目指す。
  • JFS-C:大規模・輸出向け。GFSI承認の国際水準(FSSC22000相当)。

 

JFS-B以上の認証取得において、審査員が最も厳しくチェックするのが「記録の正確性」です。「温度記録が手書きで読みにくい」「まとめて書いた形跡がある(改ざんの疑い)」といった状態は、マネジメントシステムとして不適合となります。

まとめ

本記事では、行政移管後の「食品衛生基準」から、3つの規格基準と食品事例、コーデックスやJFS規格などについて解説しました。

知識として「基準」を理解したあとの課題は、「いかにして現場でその基準を守り続けるか」という実行フェーズです。

特に、食中毒菌の増殖を防ぎ、規格基準をクリアするためには「温度管理」が重要になります。そこで、確実な基準遵守と、現場担当者の負担軽減を両立させるためにおすすめしたいのが「タイムマシーン株式会社」の温度管理システムです。

自動で正確なデータを記録、異常時はアラート通知の仕組みがあることで、厳格な監査も、不意のトラブルも恐れることはありません。

「食品衛生基準」を確実に守る体制を構築するため、まずは現在の管理方法を見直し、信頼性の高いシステムの導入を検討してください。