

食品衛生とは?簡単に取り組める5原則、HACCP義務化とメリットを解説

食品衛生は、企業の信頼を揺るがす重要な要素です。食品衛生法改正やHACCP導入などに伴い、食品衛生における確かな知識と実践的な対策が必要不可欠になっています。 この記事では、食品衛生の基本の5原則、HACCPの義務化とそのメリット、食品衛生を取り巻く社会情勢と課題について解説します。 企業のブランドを守り、消費者の信頼を得るために、ぜひご一読ください。
食品衛生とは?基本の5原則
食品衛生の基本となる5原則があります。それぞれ5つの頭文字をとって5Sと呼ばれており、HACCPの基盤となる活動且つHACCP導入に不可欠な取り組みです。食品衛生の基本の5原則は、以下の内容になっています。
- 整理:不要物の廃棄
- 整頓:ものの適切な配置と片付け
- 清掃:各所掃除をしながら点検すること
- 清潔:きれいな状態を保つこと
- 習慣:手順などを遵守し習慣化すること
5Sに取り組むことで、異物混入のリスクの低減により食品の安全性向上、タイムロスの削減による作業効率の改善、清潔な衛生環境の維持に繋がります。
食品衛生法改正に伴うHACCPの義務化
2018年6月、食品衛生法が改正され、2020年6月より食品事業者に対してHACCPに準じた衛生管理の義務化がスタートしました。 2020年の法律施行から1年間の猶予期間ののち、2021年6月より、HACCPの導入と運用が完全義務化されています。
食品業界もグローバル化が進む中で、HACCPに即した食品衛生管理が求められます。高齢化社会の進展にともない、より食品に対する安全意識の向上の必要性もHACCP制度化を後押ししました。
HACCP義務化の背景と目的
HACCP(ハサップ)の義務化は、食品の安全性を確保し、消費者の信頼を高めることを目的としています。また、日本の食品産業のグローバル化と競争力強化にも寄与することが期待されています。
HACCPの義務化には、以下の背景があります。
- 食品業界の国際化:アメリカなどの諸外国では、国際基準に基づいたHACCPによる衛生管理が実施されている。
- 食中毒の発生状況:日本国内では毎年一定の数の食中毒が発生しており、衛生管理の必要性が求められている。
- 食品衛生法違反食品の製造の防止:従来の画一的な衛生管理の基準を見直す必要がある。
また、HACCP義務化の目的としては、以下のことが挙げられます。
- 食中毒の発生防止、食品衛生法違反食品の製造の防止
- 国際基準との整合化
- 中小企業への衛生管理の徹底
- 食品の安全性の向上、品質の向上
- クレームの低減
消費者が安心安全な食品を届けられるよう、食品の製造や加工、販売に至るまで規制を設けることが食品衛生の主たる目的です。
食品衛生法改正のポイントと企業への影響
食品衛生法の改正では、食品の安全・衛生に関する管理体制が強化され、企業にはより多くの対応が求められるようになりました。
食品衛生法改正のポイントは以下の通りです。
- 大規模な食中毒への対策を強化
- HACCPに沿った衛生管理を制度化
- 特定の食品による健康被害情報の届出を義務化
- 食品用器具や容器包装にポジティブリスト制度を導入
- 営業許可制度の見直しと営業届出制度の創設
- 食品等の自主回収情報は行政への報告を義務化
- 輸出入食品の安全証明の充実
これまでよりも、食品の安全性や衛生面に対する消費者の目が厳しくなっており、法律を理解し、十分な衛生管理を行うことが重要です。
HACCPの考え方に基づいた衛生管理とは
HACCPは国際的に認められており、衛生管理の国際標準となっています。
HACCPの考え方に基づいた衛生管理のポイントは以下の通りです。
- 危害要因(ハザード)を把握する
- 危害要因を除去または低減させるために特に重要な工程を管理する
- 衛生管理計画や手順書を作成し、従業員に周知する
- 衛生管理の実施状況を記録する
- 記録を定期的に振り返り、必要に応じて衛生管理計画や手順書を見直す
HACCPに基づいた衛生管理では、厚生労働省により定められている2つの基準である「一般の衛生管理」と「HACCPに準じた衛生管理」を満たさなくてはなりません。
特にHACCPに沿った衛生管理が重要になります。小規模事業者を含む事業所はHACCP導入における「7原則12手順」を遵守し、HACCPの理念に従った衛生管理体制の構築が求められます。
食品衛生管理の強化が企業にもたらすメリット
HACCPの導入におけるメリットとして最も大きいのが、企業全体の衛生意識の向上です。お客様のクレームの減少や食品事故、食品事故後の原因究明における迅速化なども期待できます。
- ブランドイメージ向上:企業価値が高まり、取引先の信頼や評価が高まる
- 顧客満足度向上:クレームや事故の減少
- 従業員の意識向上:食品事故発生リスクを下げることに繋がる
- 法的リスクの低減:危険因子をあらかじめ分析することで対策できる
HACCP導入は自社の衛生管理や企業価値の向上に繋がっていきます。HACCP認証を受けることで、海外市場への展開もスムーズに進めることが可能です。
HACCP導入は障壁ではなく、むしろ新たなビジネスのきっかけになるといえるでしょう。
食品衛生を取り巻く社会情勢と課題
改正食品衛生法が本格施行され、原則すべての事業者はHACCPに基づいた衛生管理に取り組むことが義務化されました。
HACCPに基づいた衛生管理の制度化や、情報発信により食情報の拡充、食品ロスへの取り組みも進んでいます。
HACCPに基づいた衛生管理の制度化
食品の流通や提供形態は多様化しているため、食品の特性を踏まえて衛生的な取り扱いができるよう、食品衛生に関わる認識を深めることが大切です。
消費者に安心安全な食品が届けられるよう、食品の製造や加工、販売に至るまでの食品衛生管理の規制が設けられています。これにより、 食品の安全性や衛生面が担保され、健康被害や食中毒のリスクを抑えられているのです。
情報発信により食情報の拡充
情報過多の中、食に関する情報は難易度が高いといった懸念点があります。そのため、受け手に合った最適な情報媒体でニーズに応じて情報を取捨選択できる環境を整えることも大切です。
衛生管理の定着や消費者自身の判断により適切な食品を選択するためには、情報を容易に入手できるよう、情報発信を拡充していくことが求められます。
今後は、食の情報バリアフリーを広く推進していく必要があるでしょう。
食品ロスへの取り組み
食品ロスの現状と社会的影響は大きく、対策を実施している企業も増えています。企業の社会的責任(CSR)の観点から、食品ロス削減は重要な取り組みです。
持続可能な社会の実現に向けて、企業が果たすべき役割は大きく、食品ロス対策はその具体的な行動のひとつとなるでしょう。
まとめ
食品衛生は人々の健康と安全を守る上で、重要な役割を担っています。最新の情報をキャッチアップし、リスク管理を徹底することで、食中毒事故を未然に防ぎ、企業の信頼を守ることが可能です。
また、事業者はHACCPに準じた衛生管理に取り組むことで、衛生管理方法の可視化が可能になりました。今後、食品衛生に対する意識の定着を図ることで、取り組みについての理解が進み、食の安全性を高めることにも繋がります。この記事を参考に、安心・安全な食品を消費者に届けるためにも、自社の衛生管理体制をより強化しましょう。

