

食品工場のペーパーレス化に対する課題と解決策

ペーパーレス化は、生産性の向上やコスト削減の一環として注目されている取り組みです。さまざまな業界で導入が進む一方で、製造現場では長年の慣習として紙の使用が根付いており、スムーズに移行できていないのが現状です。本記事では食品工場に焦点を当て、ペーパーレス化の現状を確認し、課題と対策について紹介します。
食品工場におけるペーパーレス化の現状
富士電機は2022年、全国の食品工場で働く従業員を対象に、工場におけるペーパーレス化に関する調査を実施しました。
ペーパーレス化への取り組み状況は、次のとおりです。
取り組みが進んでいる:10.5%
取り組んでおり、ある程度進んでいる:21.4%
取り組んでいるが、あまり進んでいない:40.0%
取り組んでいない:23.6%
わからない:4.4%
全体の3割程度はペーパーレス化が進んでいる一方、6割以上の工場では紙が使われ続けている現状が明らかになっています。
また、従業員数が多い工場ほどペーパーレス化が進み、従業員数が少ない、とくに従業員数100人未満の工場では「取り組んでいない」という回答が多い傾向が見られました。これは、従業員数が少ない工場は予算や人材の確保が難しいことに加え、業務プロセスが比較的シンプルで紙の運用でも問題がなく、ペーパーレス化の必要性を感じにくいためと考えられます。
しかし、紙の使用に限界を感じている工場も多いようです。ペーパーレス化に取り組む目的として「紙・書類の保管スペースの削減」(57.1%)が挙げられ、長年蓄積された書類が工場のスペースを圧迫していることが分かりました。
また、「データの活用・見える化」(44.1%)、「生産性の向上」(41.6%)といった回答も多く、人手不足などの課題を解決するため、ペーパーレス化により業務効率の改善を目指している工場が多いことも分かります。なお、ペーパーレス化の目的として最も多かったのは「経費・コストの削減」(71.4%)でした。
このように、多くの食品工場が紙の使用に対して課題を感じているにもかかわらず、ペーパーレス化がスムーズに進んでいないのが現状です。
調査から判明したペーパーレス化に対する課題と対策
富士電機の調査では、ペーパーレス化に関する課題や問題について自由回答する設問がありました。この回答の中からいくつかを取り上げ、対策や解決策を紹介します。
紙・手書きで記録を残す必要がある
法律で紙による記録保存が義務付けられていたり、取引先や監査機関から書類の提出を求められたりと、紙を使わざるを得ないケースもあります。しかし、工場で使用しているすべての書類を紙で管理する必要はないはずです。
食品工場では、作業や清掃の点検表、原材料の受け入れ検査や製品検査の記録、原材料の入出庫記録、食品の調理時の温度や時間の記録などに、多くの書類が使用されています。まずは、その中のひとつからペーパーレス化を進めてみましょう。
とくに、工場や冷蔵庫、冷凍庫の温度や湿度を自動で測定し、電子データとして蓄積できるIoTシステムを導入すると、ペーパーレス化だけでなく業務の自動化による労力の削減にもつながります。また、デジタル化により記録の正確性が高まり、取引先や監査機関から信頼を得やすくなるメリットもあります。
このように、業務効率の改善や記録の精度向上につながる書類から、優先的にペーパーレス化を進めるとよいでしょう。
ペーパーレス化すると確認しにくい書類・図面がある
作業手順のフローチャート、工場内の機械配置や電気設備の図面、図解マニュアルなどは、デジタル画面で確認すると全体の把握が難しくなることがあります。
この問題の解決策として、図面を確認しやすい大型ディスプレイやタッチパネルを設置する方法があります。また、拡大縮小などの操作がスムーズに行える、専用の画像ビューアを導入するのも有効です。
さらに、図面などをデジタルで管理することで、検索やフィルタリング機能により、必要な書類をすばやく見つけ出せるようになります。紙の図面は使用を重ねると傷んでしまいますが、デジタルの図面は劣化の心配がないことも大きなメリットです。
すぐに確認が必要なデータはペーパーレス化しにくい
製造ラインや保管庫の温度管理データ、原材料や製品の在庫や出荷の状況、生産設備の稼働状況などは、リアルタイムでの確認が求められるデータです。これらはデジタル化により、むしろ情報共有がスムーズになる可能性があります。
データをデジタル化してクラウドで一元管理すれば、誰でも最新情報にアクセスできるようになります。インターネット環境さえあれば、場所や時間を問わず工場の状況を確認できることもメリットです。
また、IoTシステムを活用すると、設備の温度や稼働状況などのデータを1分ごとなどの細かい単位で収集できます。これにより即時性の高いデータが蓄積されるため、生産ラインの最適化や異常発生時の迅速な対応も可能になります。
取引先からの発注がFAXで入ってくる
食品工場では、原材料や包装資材の発注のほか、納品書や請求書のやりとり、食品検査結果の受け取りなどをFAXで行っているケースが多くあります。取引先がFAXを使用しているため、FAXをやめたくてもやめられないという工場も少なくありません。
取引先と交渉し、発注や納品書などのやりとりをFAXからデジタルに移行するのが理想的です。しかし、取引先の数が多い、取引先が紙に強く依存しているなど、簡単には移行できないケースもあります。その場合に活用したいのが「クラウドFAX」です。
クラウドFAXとは、FAXの送受信をインターネット経由で行うサービスです。FAX機を使わず、パソコンやタブレット端末などで送受信します。受信したFAXは、PDFに変換されてメールで届きます。反対に、メールにPDFを添付して送信すれば、相手はFAXとして受信可能です。
クラウドFAXを導入すると電子データとして送受信できるため、ペーパーレス化を進めやすくなります。取引先と交渉してデジタル化を促す手間も省けるので、FAXを使用している食品工場は利用を検討してみましょう。
パソコンを持たない現場の作業員には浸透しにくい
食品工場の現場作業員の多くは、業務でパソコンを使用する機会がなく、自分専用のパソコンを持たないことも珍しくありません。そのため、ペーパーレス化を進める際は、タブレットやスマートフォンなどのモバイル端末を活用するのが有効です。
総務省の「令和6年版 情報通信白書」によると、2023年の世帯所有率はパソコンが65.3%である一方、スマートフォンは90.6%と高く、多くの人が日常的にスマートフォンを使用していることがわかります。そのため、パソコンよりもむしろスマートフォンの方が、従業員に抵抗感なく受け入れられる可能性があります。
また、食品工場では紙の使用による異物混入のリスクも無視できません。しかし、紙の代わりにモバイル端末を導入すれば、食品事故のリスクが低減し、食の安全性も向上します。
参考:総務省「令和6年版 情報通信白書の概要 第Ⅱ部 情報通信分野の現状と課題」
詳細な変更履歴が残りにくい
温度管理や衛生管理の記録、製品の製造手順や配合などに変更があった場合に、いつ、どのような理由で変更したか記録を残す必要があります。自動的に変更履歴が記録されるシステムやデジタルツールを導入すれば、この課題も解決できるでしょう。
むしろ、記録をデジタル化することで、変更履歴の管理が容易になる可能性があります。ペーパーレス化を進めて、より正確で信頼性の高いデータの管理体制を構築しましょう。
まとめ
食品工場のペーパーレス化にはさまざまな課題がありますが、技術的に解決できるケースも多くあります。技術面以外では、デジタル化に対する抵抗感や新しいツールを導入する負担、コストの懸念が課題とされています。したがって、低コストで、IT知識がなくても簡単に導入できるものからペーパーレス化を始めるのがおすすめです。
「ACALA」はペーパーレス化のスタートに最適な、温度・湿度の自動管理システムです。「ACALA」を導入すると、温度や湿度が電子データとしてクラウドサーバに保管されます。専門知識が求められる初期設定やネットワークの構築などは不要で、機器を設置すればすぐに利用を開始できます。さらに、機器はレンタルなので、高額な初期費用もかかりません。
まずは「ACALA」を導入し、温度・湿度管理からペーパーレス化を進めてはいかがでしょうか?

