

「自動化」で実現する食品工場の労務軽減

食品工場は、人手不足が課題となっている現場のひとつです。労務環境が厳しいイメージが根強く、労働人口が減少するなかでの人材確保が一層難しくなっています。食品工場の労務環境を改善し、人手不足を解消するには、業務の自動化がポイントです。本記事では、食品工場における業務の自動化について解説します。
食品工場の現状と課題
食品工場が抱える課題のひとつが「人手不足」です。日本では少子高齢化が進み、労働人口が年々減少しています。多くの業界が人手不足の問題に悩まされていますが、とくに深刻な状況にあるのが食品工場です。
農林水産省の「食品産業の経営課題等に関する意識・意向調査結果」によると、「今後、特に重点的に取り組むもの」という項目において、「人材の確保や育成」と回答した割合が最も多いのは食品製造業でした。
さらに「人材の確保・育成に取り組む際の課題」について、新規雇用者や外国人材の確保と回答した割合が最も多いのも食品製造業でした。パート・アルバイトの確保は外食産業が最も多いものの、食品製造業はそれに次いで高い割合を示しています。
これらの結果からも、食品工場が人手不足を大きな課題であると感じており、現場で働く人材を強く求めていることがわかります。
一方で、食の安全に対する消費者の関心は高まっているのが現状です。食品への異物混入や食中毒など食の安全を脅かす事故が発生すると、メディアは大きく取り上げ、消費者の注目も集まります。消費者の安全を守り、企業イメージの悪化を防ぐために、食品工場は高いレベルの衛生管理を維持しなければなりません。
また政府も、食の安全の確保に向けて、食品表示法の改正やHACCPの義務化などの取り組みを進めています。これに伴い、食品製造の現場ではアレルゲンや異物の混入、食中毒の発生を防ぐためのさまざまな対策が求められています。食品工場において衛生管理は重要な取り組みですが、厳しい衛生管理が従業員の業務負担を増大させる要因となっていることも事実です。
食品工場における人手不足の解消は「業務の自動化」が鍵となります。業務の自動化とは、人の手で行っていた仕事を、ロボットやAIなどを活用して自動的に進めることです。
業務を自動化すると、人の手が必要となる仕事が減り、従業員の労務負担が軽減されて労働環境の改善にもつながります。加えて、人為的ミスによる異物混入や食中毒を防げることも、業務を自動化するメリットのひとつです。
しかし、食品工場における業務の自動化はスムーズに進んでおらず、従業員の労務軽減や労働環境の改善は多くの現場で実現できていません。
食品工場の自動化が進みにくい理由とは
食品工場で業務の自動化が進まない理由として、次のような課題があります。
- ロボット特有の異物混入リスク
- 形が定まっていない食材の取り扱いが困難
- プログラミング修正や部品交換の手間
- 水濡れや高温に耐える設計の必要性
食品工場で業務の自動化を進める場合、ロボットが活用されるケースがほとんどです。これまで人が行っていた作業をロボットが担うようになると、従業員の負担が軽減されるだけでなく、人毛や手指に付着した細菌の混入を防げるメリットがあります。一方で、ロボットでは塗装のはがれや潤滑油、部品などが食品に混入するリスクが生じます。
人が作業する場合、長年の経験から異物混入を防ぐ効果的な対策が確立されており、ある程度のリスク低減が可能です。しかし、近年注目され始めたロボットは対策が十分に把握されておらず、導入がスムーズに進まない一因となっています。
また、食品工場はほかの製造現場と異なり、野菜や果物、魚介類など、同一品種でも形や大きさ、やわらかさが異なる原材料を扱います。そのため、対象物を正確に認識し、適切に取り扱う高度な技術が必要です。
さらに、製造する食品が頻繁に変わることも食品工場の特徴です。同じ商品でも味のバリエーションや細かなリニューアルにより、原材料や製造工程が変更されることがあります。そのうえ、ハロウィンやクリスマスなどの季節商品や期間限定の商品も多く取り扱います。
製造する商品が変わるときは、ロボットのプログラミング修正や部品の交換が必要です。しかし、そのたびに生産ラインを停止していると、かえって製造効率が低下する可能性があります。
加えて、食品製造現場はロボットにとって厳しい環境です。加熱調理を伴う工程では、現場が高温になったり水蒸気が発生したりする場合があります。水産加工を行う現場では、塩水の影響でロボットの劣化が早まることも懸念されます。したがって、食品工場に設置するロボットには高い耐久性が求められますが、その分コストが上昇するため、導入があまり進んでいません。
このように、食品工場にロボットを導入するには数々のハードルがあります。しかし、近年は高性能で比較的安価なロボットも登場しており、技術の進歩により、食品工場が抱える課題が解決に近づくことが期待されています。
食品工場の労務軽減は業務の自動化で実現できる
食品工場で業務の自動化を進めるのは簡単ではありません。しかし、人手不足が深刻化し、今後も状況が改善される見込みが立たないのであれば、自動化に向けて少しずつでも取り組みを始めるべきです。
食品の加工以外にも自動化できる工程は数多くあります。たとえば、これまで目視で行われていた検品作業にAIを導入すると、人の感覚に頼らない高精度な判定が可能になります。従業員は目を酷使したり、長時間同じ姿勢で作業を続けたりする負担から解放されるでしょう。
従業員の体に負荷をかける重い荷物の運搬には、搬送ロボットが役立ちます。単純作業を繰り返す包装や箱詰め、ラベル貼りもロボットが活躍できる工程です。
さらに、食品工場にはIoTの活用もおすすめです。IoTは「Internet of Things(モノのインターネット)」の略で、モノをインターネットに接続し、離れた場所にあるモノの制御や監視を行う技術を指します。
すでに、生産ラインの稼働状況の把握や温度管理、在庫管理などにIoTを導入している食品工場もあります。食品工場ではHACCPへの対応が義務化されていますが、温度のモニタリングや記録作業に負担を感じている現場も少なくありません。しかし、IoTの活用によりHACCPへの対応も効率化が可能であり、従業員の労務軽減にもつながります。
製造工程の自動化を進めると、食品工場の「スマートファクトリー」化も実現できるでしょう。スマートファクトリーとは、AIやIoTを駆使して工場内のあらゆるデータを収集・分析し、業務改善や品質向上に活かす工場を指します。
食品工場がスマートファクトリー化されると生産ラインは自動制御され、人手を必要とする工程が減少するため、労働力不足が解消されます。収集したデータをもとに生産計画や製造工程を改善することで、業務効率も向上するでしょう。その結果、時間外労働が削減され、従業員の労務も軽減されます。
スマートファクトリー化をいきなり目指すのは困難でも、まずはひとつの作業から自動化を始めてみましょう。業務の自動化は、少しずつ進めることで着実な成果が得られます。食品工場の未来を見据えて、できることから取り組んでいきましょう。
まとめ
業務の自動化を進めると少ない人員でも仕事を回せるようになり、従業員の労務も軽減されます。食品工場は人手不足という課題を抱えていますが、今後、労働力の増加はあまり期待できません。人手不足を解消するためには、業務の自動化を進めるべきです。
とはいえ、ロボットの導入はまとまった予算や、技術とスキルがある人材が必要です。まずは、簡単に導入できる温度の自動監視システム「ACALA」から始めてみましょう。
「ACALA」はセンサーにより温度を自動的に計測し、さまざまなデバイスでデータを確認できるシステムです。食品工場に必須である温度管理の手間が省けるうえに、計測データは保存されるためHACCPにも対応できます。温度管理の自動化を実現し、従業員の労務軽減につながる「ACALA」の導入をぜひご検討ください。

